高齢被災者に対する生活機能低下(廃用症候群)予防等プログラムの実施及び評価等に関する標準手法に関する研究

文献情報

文献番号
200705010A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢被災者に対する生活機能低下(廃用症候群)予防等プログラムの実施及び評価等に関する標準手法に関する研究
課題番号
H19-特別-指定-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大川 弥生(国立長寿医療センター研究所 生活機能賦活研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 南 裕子(兵庫県立大学)
  • 稲葉 英夫(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 川嶋 みどり(日本赤十字看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 重要性は認識されつつあるものの、まだ具体的な対応は緒についたばかりといえる、災害時の生活機能低下予防、特に生活不活発病(廃用症候群)予防の必要性と具体的方策を明らかにする。
研究方法
○災害時の高齢者の生活機能調査:災害時の生活不活発病チェックリスト及びICFにもとづく生活機能調査を行った(対象:1)能登半島地震:輪島市門前町の避難所生活者176名、在宅生活者1,298名、2)高波被害:富山県入善町101名)。
○災害時の生活機能低下予防(特に生活不活発病予防)に向けてのシステム・プログラムの標準化の検討:輪島市で生活不活発病による生活機能低下の予防のために具体的なプログラム・システムの提案や直接的介入を行い、その結果についてよりよい実行法の探求も含めて検討した。その他、被災地現場調査や意見聴取を被災者、専門家、ボランティア等に行った。
結果と考察
○地震後1ヶ月以内に屋外歩行、屋内歩行、身の回り行為のいずれかの自立度低下者が在宅生活者2.7%にみられ、避難所生活者では17.0%におよんだ。
○地震後生活不活発病が多発し、それが在宅者より避難所生活者に、高齢になるほど、また地震前から既になんらかの生活機能低下が起っていたものほど、著明であることが明らかになった。
○災害の種類による相違点と共通点とを考慮する必要があるが、従来大きく注目されてきた地震ではなく、比較的小規模な災害である高波においても、高齢者における生活機能低下が発生した。
○災害時における生活機能低下予防にむけたはじめてのシステマティックな早期介入で、内容的にも十分効果をあげることができた。
○「生活不活発病チェックリスト」は発生直後の混乱している状態でも活用が十分可能であった。
結論
○災害時は、生活環境・生活様式の激変の同時多発によって高齢者では急激に生活不活発病による生活機能低下が生じることが地震時の再確認だけでなく、高波でも確認され、「18年豪雪」時調査もあわせ、災害一般において重視すべきことが再確認された。
○平常時からの生活不活発病についての正しい認識のあり方が災害時の対応に大きく影響し、一方で災害時の現実の場で学んだ生活機能低下予防の認識の向上によって、平常時の生活不活発病についての認識も向上するものと考えられる。この観点から災害時の生活機能低下予防に向けての平常時からの認識向上プログラムの標準化、また研修会等も必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200705010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 重要性は認識されつつあるが、具体的な対応は緒についたばかりの災害時の生活機能低下予防、特に生活不活発病(廃用症候群)予防の必要性を明らかにすることが目的であった。
この必要性がはじめて明らかになった地震について再確認ができ、更に異なる種類の災害で、比較的小規模でもある高波被害においても高齢者における生活機能低下が確認され、その他「平成18年豪雪」時の検討も加え、災害一般において重視すべきことが確認された。今後の災害時の対策として生活機能面への対応を明確に位置づけることができた。
臨床的観点からの成果
 災害時における生活機能低下予防にむけた系統的な早期介入が可能であり、十分効果をあげうることが立証できた。実行可能な内容を明らかにできたことで、今後の災害時に適切に使用できる指標となりうる。
このような災害時の対応が可能か否かは、平常時からの生活不活発病及び生活機能についての正しい認識のあり方が大きく影響している可能性が大きい。この観点から災害時の生活機能低下予防に向けての平常時からの認識向上プログラムの標準化、また平常時からの災害時の生活不活発病予防に関する研修会等の必要性が明らかとなった。
ガイドライン等の開発
 災害時の被災直後にも使用可能な「生活不活発病チェックリスト」を作成した。このチェックリストは厚労省からの新潟県中越沖地震(19.7.16)、富山県高波被害(20.2.24)において避難所及び在宅生活者に配布され、発生直後の状態でも十分活用可能であることを確認できた。
被災直後に被災者への廃用症候群予防にむけた啓発用のチラシ及びポスターを作製した(新潟県中越沖地震で厚労省等より配布)。それをもとに災害種類、地域特性を加味した修正により、即座に活用可能であることも立証できた(富山県高波被害)。
その他行政的観点からの成果
・新潟県中越地震及び富山県高波被害において、厚労省等から本研究で作成した啓発チラシ(生活不活発病チェックリスト付)が配布されるなど、行政機関を通じた情報提供だけでなく被災者個人への直接的啓発が行われる契機になった。
・災害時の高齢者における生活不活発病予防についての厚労省の通知(及び資料)は、新潟県中越沖地震では発生当日にだされ、富山県高波被害でも4日目にポスター・チラシが送付された。災害時の生活機能予防が初めて明らかとなった新潟県中越地震以降、短期間で認知される契機ともなっている。
その他のインパクト
 災害時の廃用症候群による生活機能低下の危険性や予防の必要性については、特に新潟県中越地震、富山県高波被害に関連してテレビ、新聞等多くのメディアでとりあげられた。また平常時においても、災害時にむけて準備すべき内容や、高齢者の介護予防(災害時は介護予防必要例の同時多発発生時と位置づけられる)との関連でも、多くとりあげられた。これらは地域防災への取り組みとして複数自治体や観光協会等での取り組みの契機となっている。また災害医療やボランティア活動のあり方の再考を促すものとしてもとらえられている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-