文献情報
文献番号
200705009A
報告書区分
総括
研究課題名
国外における病腎移植の研究に関する調査
課題番号
H19-特別-指定-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高原 史郎(大阪大学大学院医学系研究科先端移植基盤医療学)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座医療政策 経営科学分野)
- 篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院角膜センター)
- 相川 厚(東邦大学医学部 腎臓学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
諸外国における病腎移植の医学的・倫理的現状を調査することで、このような実験的医療を実施するに当たり、わが国において今後クリアしなければならない問題を明らかにし研究の推進に繋げる。
研究方法
悪性腫瘍等の疾患を有する臓器移植のうち、治療を目的として摘出された腎臓をドナーとした生体腎移植(以下、病腎移植と略す)および献腎移植における悪性腫瘍等の疾患を有する臓器の移植に関する調査研究等について国外の文献を収集、分析し、研究班員や国外の移植関係者に対し聞き取り調査等を実施。その件数や生存率・生着率等の医学的調査並びにインフォームド・コンセント(IC)等の倫理的側面についても検討した。また国外の研究で報告されていない内容の研究については国内の文献を収集、分析した。
結果と考察
ドナー関連悪性腫瘍のレシピエントにおける成績に関して最も広範に調査・報告しているのはClinical Transplant Tumor Registry (CTTR)である。1965年から1997年間の統計報告によれば、悪性腫瘍をもつドナーからの移植は悪性腫瘍伝播の可能性が高いことが示されている。今回調査した英国、ヨーロッパ泌尿器科学会(EAU)、Eurotransplant International Foundation、UNOS、OPTN など各国の移植学会および泌尿器科学会においては、悪性腫瘍を有する生体及び死体ドナーからの移植を認めたところはなく、また悪性腫瘍に対して根治的治療がされたとしてもその疾患が5年以内であれば禁忌と考えられる。市立宇和島病院での病腎移植の予後調査については、悪性疾患で腎摘された腎を移植された症例の5年生存率が48.5%、5年生着率が15.3%と極めて低い生存率である。
結論
病腎移植については、今回調査した報告・臓器斡旋機関・各国の移植学会および泌尿器科学会のなかで積極的に推奨した報告・機関・学会は認めなかった。
献腎移植における悪性腫瘍等の疾患を有する臓器の移植に関する報告内容によれば、予後不良の報告が多く概ね否定的であった。
わが国で実施された病腎移植は、現在の医療水準からみた場合、標準的な医療から著しく逸脱しており、中には医学的適応と認められない症例もある。
医学的に未確立な医療を施行する場合には、科学的知見に基づき安全性及び有効性が予測されるときに臨床研究に準拠して行わなければならない。
また健康危険情報として、病腎移植レシピエントの長期観察と生体ドナーとなった病腎患者の術後経過観察を定期的に実施することが重要である。現在、生存しているこれらの患者については早急に実施する必要がある。
献腎移植における悪性腫瘍等の疾患を有する臓器の移植に関する報告内容によれば、予後不良の報告が多く概ね否定的であった。
わが国で実施された病腎移植は、現在の医療水準からみた場合、標準的な医療から著しく逸脱しており、中には医学的適応と認められない症例もある。
医学的に未確立な医療を施行する場合には、科学的知見に基づき安全性及び有効性が予測されるときに臨床研究に準拠して行わなければならない。
また健康危険情報として、病腎移植レシピエントの長期観察と生体ドナーとなった病腎患者の術後経過観察を定期的に実施することが重要である。現在、生存しているこれらの患者については早急に実施する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2008-06-30
更新日
-