新たな検疫のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200705006A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな検疫のあり方に関する研究
課題番号
H19-特別-指定-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
倉田 毅(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地球上における感染症発生、ヒト・動物・物資の移動等の状況、新たな世界保健規則(IHR2005)を軸に現状の検疫法を検証し、また世界の国々の対応も参考にして新たな検疫のあり方を検討することを目的とした。
研究方法
以下の事項を検討した。
I.新たな検疫の第一議とは何か:Entry Point として世界中でたえず発生しかつ存在している健康危機から国民を守ることと一国安全主義神話から脱却し、近年多発する国際的な感染症の危機管理の国内外の対応に即刻参画しうるシステムを新たに構築しその機能を十分に発揮させる必要がある。
II.検疫をとりまく世界状況の著しい変化と課題:新興再興感染症の絶えざる登場(特に人獸共通感染症)は地球温暖化や環境破壊とあいまってその発生地にとどまらずヒトや物資の大量高速広範移動にともない直ちに世界共通の重要な危機管理対応事象となってきた。病原体を運ぶ媒介動物の分布の変化と拡大が問題をさらに大きくしている。
結果と考察
これらの状況に対応するためには、1)感染症の危機管理機能の構築、2)IHRに基づく国際的健康危機管理への貢献が必須である。
III.感染症危機管理の実践対応に向けて:1)迅速で正確な感染症の情報の系統的収集発信組織の構築と全国をカバーするネットワークの整備、2)1)と自治体も結ぶ。さらに危機への対応可能な中央組織(検疫HQ)の設立、3)重篤疾患発生時に検疫感染症として迅速指定できるシステムの構築が必要であることが判明した。
結論
IV.今後必要な検疫のあり方(具体化へむけて):1)検疫対象疾病をⅰ)第一級検疫感染症とⅱ)第二級検疫感染症にわける。ⅰ)はその発生が国際的に深刻な影響を及ぼす可能性がある-天然痘、SARS、新型インフルエンザ等、ⅱ)は公衆衛生上深刻な影響を及ぼす、急速に国際的に拡大することが懸念される-コレラ肺ペスト、黄熱、マラリアウイルス性出血熱等、2)船舶・航空機の検疫から人の検疫へのシフトを計る。3)ブース検疫は平時危機時ともに有用であることを確認、4)そ族や蚊等の媒介動物の港湾衛生調査は重視する必要がある、5)自治体、国内保健機関との広域連携を法的に位置づけ連絡調整するシステムをつくる、6)検疫業務を全国共通レベルで運用するために、条文の”検疫 所長は。。。。”をすべて”厚生労働大臣”のもとで実施すると変えるよう提言する。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200705006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新たな検疫の基本理念、感染症危機管理対応のあり方、世界保健規則2005(IHR2005)や国内感染症法との整合性調整、検疫対象疾病の選択規定を行い、今後、「必要なあらたな検疫のあり方」等をまとめた。
また、IHR2005に基づき検疫の再構築を行ったアメリカ合衆国及び台湾の検疫システムを調査し、基礎資料としてまとめた。今回の報告をもとに組織論が検討されれば、新しい検疫(所)の具体的な姿が明確なものとなることが期待できる。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
明治以降その基本骨格が変わることなく、通知運用によりかろうじて保たれている現状の検疫行政を、根本的に改革するための審議会資料としては大いに役立つものと思われ、世界の新たな感染症の脅威に対応するために活用されるべきである。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ichinohe T, Kurata T, Hasegawa H et al.
Intranasal immunization with H5N1 vaccine plus Poly I:Poly C12U, a Toll-like receptor agonist, protects mice against homologous and heterologous virus challenge.
Microbes Infect , 9 (11) , 1333-1340  (2007)
原著論文2
Kinomoto M, Kurata T, Tokunaga K et al.
All APOBEC3 family proteins differentially inhibit LINE-1 retrotransposition.
Nucleic Acids Res , 35 (9) , 2955-2964  (2007)
原著論文3
Saijo M, Kurata T, Morikawa S et al.
Development of recombinant nucleoprotein-based diagnostic systems for Lassa fever.
Clin Vaccine Immunol , 14 (9) , 1182-1189  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-