細菌性腸管感染症の病態解析とその応用的研究

文献情報

文献番号
200704001A
報告書区分
総括
研究課題名
細菌性腸管感染症の病態解析とその応用的研究
課題番号
H19-国医-指定-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
本田 武司(大阪大学微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 治雄(国立感染症研究所)
  • 岡本敬の介(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 大澤 朗(神戸大学大学院 農学研究科)
  • 篠田 純男(岡山理科大学 理学部)
  • 神谷 茂(杏林大学 医学部)
  • 平山 壽哉(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科獣医学)
  • 吉田 真一(九州大学大学院 医学研究院)
  • 林 哲也(宮崎大学 フロンティア科学実験総合センター)
  • 西渕 光昭(京都大学 東南アジア研究所 )
  • 野田 公俊(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 倉園 久生(帯広畜産大学 畜産学部)
  • 西川 禎一(大阪市立大学大学院 )
  • 島村忠勝(昭和大学 医学部)
  • 辻 孝雄(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 山本達男(新潟大学大学院 )
  • 甲斐 明美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 江崎 孝行(岐阜大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,827,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染性下痢症による死亡は現在も発展途上国を中心に死因の大きな部分を占める疾患の1つとなっている。この状況が改善される前に、地球の温暖化による感染症流行地域の拡がりや先進国の輸入食品への依存など、下痢症の増悪の条件が整い、その対策を急がねばならない状況となっている。本研究班では、わが国の細菌性下痢症研究者集団を束ね、下痢症の制御に向けての基礎的知見を強化することを目的とする。
研究方法
 我国で問題となっている種々な下痢原因菌を取り上げ、細菌学的手法を共通基盤としながらも各研究者が持つ専門性を生かした手法や目的(たとえば、疫学、病態解析や診断法の開発など)に応じて研究を進め、発表会等を通じて情報交換して効率良く各研究を展開するよう努めた。
結果と考察
 細菌性下痢症の制御にむけて知見を深化させることが出来た。主要なものを列挙すると、①わが国で発生している集団下痢症の原因として毒素原生大腸菌が多いこと、外国での感染事例が多いこと、わが国の環境水からO1コレラ菌(非毒素産生性)が検出され、日本にもコレラ菌が定着する可能性があること、HUSを併発したStx+, LEE-のEHEC類似菌が見つかったこと、腸炎ビブリオで3型タンパク分泌装置が重要な病原因子送達装置となっていること、多種類(全11種)の下痢原因細菌を一度に鑑別検出できる分子遺伝学的手法などを開発したこと、などを挙げることができる。
結論
本研究では、診断、病態、疫学など多方面にわたり、今後下痢症制御に貢献できると思われる基盤的成果をあげることができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200704001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 細菌性腸管感染症の原因となる代表的な細菌を取り上げ、種々な角度から下痢性疾患の制御に必要な種々な基盤的研究を行い、一流の専門誌に多数発表した。例えば疫学的研究では、集団下痢症の原因として毒素原性大腸菌の重要性を再認識させ、O1コレラ菌が我国の環境中でも生息できる可能性を示唆した。病態解析では、EHECの新奇なSubABが、細胞増殖周期をG1期で停止させることなどが分かった。さらに腸炎ビブリオなどでのT3SSの重要性を示した。また多種類の病原体を同時にスクリーニングする遺伝子検査法を構築した。
臨床的観点からの成果
 我国の細菌性下痢症の集団発生事例の約60%が毒素原性大腸菌によるものであり、その重要性を再認識させた。また、この増加の理由の大きなものに海外との関連性を示唆する事例が多い点も、問診時注意しなければならない。また、HUS(溶血性尿毒症症候群)がLEE遺伝子領域を持たない(A/E病変を形成しない)腸管出血性大腸菌(O86:H-でStx2を産生する)菌株で引き起こされた事例が見い出されたことも今後、注意しなければならない。
ガイドライン等の開発
無し。
その他行政的観点からの成果
 行政施策に提案したわけではないが、日本で発生した集団下痢症の原因として毒素原性大腸菌が徐々に増え、その重要性が再認識され、その感染源として、海外での水、食品、あるいは輸入食品等の海外の影響が推察されること、また我国の環境水中でO1コレラ菌が生息している事が明らかになってきている事などは、わが国の「食の安全」確保の上からも今後注意する必要がある。
その他のインパクト
無し。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
96件
論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された6件を含む。
その他論文(和文)
47件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
233件
学会発表(国際学会等)
58件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計13件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mitobe. J., et al.
Involvement of RNA-binding protein Hfq in the post-transcriptional regulation of invE gene expression in Shigella sonnei.
J. Biol. Chem. , 283 (9) , 5738-5747  (2008)
原著論文2
Koitabashi, T., S. Cui, K. Muhammad, et al.
Isolation and Characterization of the Shiga Toxin Gene (stx)-bearing Escherichia coli O157 and Non-O157 from Retail Meats in Shandong Province, China and Characterization of the O157-derived stx2 Phages.
J. Food Prot., in press.  (2008)
原著論文3
Hajime Ikigai, Hiroshi Otsuru, Koichiro Yamamoto, Tadakatsu Shimamura
Structural requirements of cholesterol for binding to Vibrio cholerae hemolysin
Microbiology and Immunology , 50 , 751-757  (2008)
原著論文4
M. Asakura, W. Samosornsuk, A. Hinenoya, et al.
Development of a cytolethal distending toxin (cdt) gene-based species-specific multiplex PCR assay for the detection of cdt genes in Campylobacter jejuni, Campylobacter coli and Campylobacter fetus. FEMS Immunol.
Med. Microbiol., in press.  (2008)
原著論文5
W. Samosornsuk, M. Asakura, E. Yoshida, et al.
Evaluation of a cytolethal distending toxin (cdt) gene-based species-specific multiplex PCR assay for the identification of Campylobacter strains isolated from poultry in Thailand.
Microbiol. Immunol. , 51 , 909-917  (2007)
原著論文6
Okura, M., Osawa, R., Tokunaga, A., Morita, M., Arakawa, E. and Watanabe,
H. Genetic analyses of the putative O- and K-antigen gene clusters of pandemic Vibrio parahaemolyticus.
Microbiol.Immunol in press  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-