精神科入院患者の退院支援と地域生活支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200701053A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科入院患者の退院支援と地域生活支援のあり方に関する研究
課題番号
H19-政策-若手-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
沢村 香苗(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 安西信雄(国立精神・神経センター武蔵病院リハビリテーション部)
  • 瀬戸屋雄太郎(国立精神・神経センター社会復帰相談部精神保健相談研究室)
  • 中西三春(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,931,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の精神科医療においては「社会的入院」の解消が重要な課題となっている。この課題を達成するためには、患者が良好な地域生活に移行するための退院支援、また地域で生活する精神障害者ができるだけそれを継続できるような地域生活支援の体制整備が必要である。本研究は標準的退院支援ツールの作成と、地域精神医療が進んでいる諸外国における知見の収集を通して、今後の退院支援と地域生活支援のあり方を検討することを目的として行われた。
研究方法
標準的退院ツールの作成は、1)情報収集・整理の視点を探るための文献調査、2)行われた支援に関する聞き取り調査、3)行われた支援に関する記録調査の3つから構成された。1)では国内外における退院支援パスの検討を行い、2)3)では実際にある病棟に1年以上入院し、その後退院して3か月以上地域生活を継続した27名を対象として行った。1)で得られた枠組みを用いて2)3)で得られた情報を整理し、退院支援ツールの試案作成を行った。
地域精神保健医療についての海外調査は、地域精神医療が進んでいる国として米国、英国、イタリア、カナダ、オーストラリア、日本と同じような長期入院の問題に直面している韓国を調査対象国とした。調査は各国の担当省のホームページや文献検索によって行った。調査項目は、制度の名称、根拠法、財政の規模と推移、精神保健サービスの量の内容等であった。各国の状況と日本の状況との比較分析を行った。
結果と考察
退院支援パスにおいては退院後の生活に関する領域を設定し、各領域における課題を達成すれば退院後の生活や支援体制が構築されるような形式が望ましいと考えられた。また行われていた退院支援を概観すると、①状況確認と目標設定の時期、②地域資源等を探索し地域に接近する時期、および③試泊等により実際に地域に生活を移行する時期に分けられた。
海外調査の結果、我が国における入院医療の現状(入院期間の長さ、病床数の多さ、1日あたりの入院費の安さなど)や、ケアマネジメントが普及していないこと、地域の医療保健福祉の機能分化が進んでいないことなどの課題がより明確になった。
結論
退院支援パスの試案作成を通して、退院支援における役割分担や期間設定の多様性、対象者の自立度や抱えている問題の困難度によって柔軟に支援を行う必要性が明らかになった。海外調査からは我が国における地域精神保健医療の課題が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
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