生活習慣・健診結果が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
200701050A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣・健診結果が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H19-政策-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 裕子(奈良女子大学保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,895,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
喫煙・肥満・運動不足・過量飲酒などの生活習慣や高血糖・高脂血症・高血圧などの健診結果が平均余命と生涯医療費に及ぼす影響を定量的に分析して、疾病予防と健康増進が社会保障財政に及ぼす長期的な効果を解明すること。
研究方法
1)本研究で使用する大崎国保コホート研究は、宮城県大崎保健所管内に居住する40歳から79歳の国民健康保険加入者約5万人を対象に、1994年に生活習慣などのアンケート調査を実施し、1995年1月以降の医療費と死亡・異動を追跡している。2006年12月31日までの死亡者について、人口動態調査調査票の閲覧に関する承認を受けて死亡原因を調査した。
2) 生活習慣、既往歴、日常生活の状況、人生観、健診・検診受診歴が死亡リスク(総死亡・主要死因別)と医療費に及ぼす影響をCox比例ハザードモデルにより算出した。
3) 喫煙が生涯医療費に及ぼす影響に関する研究:喫煙と生涯医療費に関する文献レビューを行うとともに、本研究データを用いて喫煙者・非喫煙者における生涯医療費の算出方法の妥当性について検討した。
4)倫理上の配慮:上記の研究全てが所属施設の倫理委員会で承認されている。

結果と考察
1) 追跡期間中の死亡者7,236人のうち、循環器疾患死亡は2,426人、がん死亡が2,550人、その他の原因による死亡は2,260人であった。循環器疾患死亡のうち虚血性心疾患死亡は527人、脳血管疾患死亡は1,137人であった。
2) 喫煙・肥満・運動不足・過量飲酒などの生活習慣や高血糖・高脂血症・高血圧などの既往のある者では死亡リスクが有意に高かった。非喫煙者に比べて、現在喫煙者では医療費が7.7%高かった。この現象は、追跡期間を12年に延長して初めて観察された。喫煙と医療費との関連を適切に検討するには、これ程の長期追跡を要することが示唆された。運動習慣のない者では医療費が8.0%高かった。食事時間が不規則な者では医療費が6.4%高かった。
3) 喫煙が生涯医療費に及ぼす影響について、生命表に基づく余命計算と生涯医療費の算定を行うための解析システムを構築して、予備的な計算を行った。現時点の試算では、喫煙者の方が短命であり、単年医療費も喫煙者で高額な傾向が見られた。

結論
大崎国保加入者コホート研究は、世界的に見ても類い希な規模(対象者数・観察人年数)を有するものであり、生涯医療費算定の方法論も固まったので、来年度は各種の生活習慣と健診結果が生涯医療費に及ぼす影響を算出するものである。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
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