所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200701045A
報告書区分
総括
研究課題名
所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方に関する研究
課題番号
H19-政策-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩本 康志(東京大学大学院 経済学研究科)
  • 小塩 隆士(神戸大学大学院 経済学研究科)
  • 田近 栄治(一橋大学大学院 経済学研究科)
  • ホリオカ、チャールズ・ユウジ(大阪大学 社会経済研究所)
  • 東 修司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 米山 正敏 (国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 野口 晴子 (国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 尾澤 恵(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 酒井 正(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,887,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
所得・資産格差が問題となっている今日、社会保障の給付と負担の在り方を所得格差の諸要因と貯蓄を通じた資産格差を含めて、検討することが求められている。その際、社会保障財源には公費負担が、税財源にも控除や累進税率など再分配機能があるので、社会保険料と税を関係づけて検討する必要がある。また、社会保障負担を所得・資産・消費のいずれに求めるかは、ライフサイクルにおける負担と給付の関係も考慮する必要がある。従って、本研究では、持続可能な社会保障制度構築に資するため、所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方について、ライフサイクルの変化も視野に入れた実証分析、制度分析及び国際比較による総合的な研究を行う。
研究方法
所得・資産・消費の実態把握のため、「国民生活基礎調査」目的外使用許可を得て、所得格差やその変化に関する実証分析を行った。ライフサイクルの視点については、引退過程と健康・受診状況等の関係についてアンケート調査を実施し、2年目以降の調査と合わせてパネル・データを構築し、分析を行う。社会保険料、公費負担、控除制度、給付と負担の関係は、法制度とも関係が深く、制度分析を行った。国際比較については、OECDの所得格差比較研究に協力し、また税財源による社会保障制度のカナダ、成長著しく所得変動の大きい東アジア諸国との比較を連携させカナダ・韓国・日本の比較研究を行った。
結果と考察
日本の所得格差は、近年、ジニ係数で見るとほとんど変化していないが、世帯別では高齢者世帯、母子世帯、若年単身世帯で相対的貧困になる比率が高い。マイクロシミュレーション分析によれば、税額控除を保険料支払額までとすると、保険料負担軽減に有効であり、社会保険未加入の防止が期待されることが示された。国際比較によれば、日本の所得格差は全世帯で見るとOECD平均に近いが、無職世帯や一人親世帯では相対的貧困率が平均よりも高い。その背景には、OECDの比較は現金ベースで保育サービスなど現物給付が十分には反映されていないためと考えられ、再分配の比較ではこうした差異にも留意する必要がある。
結論
日本の所得再分配政策は、主に若年層から高齢層への所得移転に基づくため、少子高齢化の下では財政的基盤が脆弱になるだけでなく、若年者や子育て世帯などへの効果的な救済も難しくなる。社会保障と税による再分配は、同一世代内の再分配と世代間の公平性を図ること及び給付と負担と税制の連携に着目して進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-11-17
更新日
-