精神保健医療における診療報酬の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200701020A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療における診療報酬の在り方に関する研究
課題番号
H18-政策-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部・医療経済学)
  • 萱間 真美(聖路加看護大学・精神看護学)
  • 末安 民生(慶應義塾大学看護医療学部・精神看護学)
  • 佐藤 忠彦(社会福祉法人桜ヶ丘社会事業協会)
  • 野田 寿恵(国立精神・神経センター 精神保健研究所 社会精神保健部)
  • 伊藤 弘人(国立精神・神経センター 精神保健研究所 社会精神保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,188,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(平成16年9月)に盛り込まれた「長期入院患者の段階的・計画的な地域生活への移行」と「新規入院患者の早期退院」を具体化するために,(1)「退院支援」,(2)「地域ケア」,および(3)「急性期医療」の質向上を促進する支払い方式の在り方を,医療経済学のアプローチを盛り込みながら検討することである.
研究方法
(1)「退院支援」では,地域連携・退院支援のためのクリニカルパス作成を通して人的コストの算出を試み,(2)「地域ケア」では,退院促進の前提となる精神科訪問看護における家族ケアの実態およびその関連要因を分析し,(3)「急性期医療」では医療内容に直結する看護師の薬物療法への関心と急性期の処遇に関する意識,薬剤処方最適化に関する認識,および精神科病院における隔離・身体拘束に関する調査を実施した.加えて(4)「医療経済学」の観点から,平均在院日数を短縮するために必要な医療と福祉の連携を視野に入れた診療報酬体系の検討を行った.
結果と考察
(1)「退院支援」;退院準備プログラムの準備と施行に要した人的コストは合計303,204円であった.また医療と地域の連携を実現するためのクリニカルパスの有用性が示された.(2)「地域ケア」;精神科訪問看護では家族への援助が高い割合で実施されていることが示された.(3)「急性期医療」;職種間の連携が薬物療法・行動制限の最適化と関連する可能性が示された.しかしながら,薬剤師が十分に急性期医療に参画できていない現状も明らかになった.それらをふまえ薬剤師が薬物治療という観点から多職種と連携するためのプロトコールを作成した.次に隔離・身体拘束の実態と,救急入院料病棟における多職種チーム連携および建築学的空間構成と隔離・身体拘束との関連について研究プロトコールを作成し調査実施となった.(4)「医療経済学」の観点から;退院支援と地域ケアの円滑な連携といった医療と福祉をつなぐ診療報酬体系について知見が得られた.
結論
本研究結果は,長期入院患者の地域生活への移行と地域生活の維持に向けた,診療報酬改定に直接的に寄与するための知見を提示している.また多職種連携のあり方の検討の結果と人的コスト計算方法の開発は,新規入院患者の早期退院に向けた薬剤処方・行動制限の最適化という医療の質向上に資する.

公開日・更新日

公開日
2008-03-21
更新日
-