外科手術のアウトカム要因の解析と評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
200701019A
報告書区分
総括
研究課題名
外科手術のアウトカム要因の解析と評価方法に関する研究
課題番号
H18-政策-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
  • 松山 裕(東京大学大学院医学系研究科生物統計学)
  • 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
11,408,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,施設症例数(Hospital Volume,HV)および外科医の経験数(Surgeon Volume,SV)と外科手術アウトカムの関連を明らかにし,診療報酬制度への反映方法を検討すること,および,外科手術に関する診療報酬評価の研究や臨床研究に不可欠な手術術式の標準的分類コード体系を検討することである。
研究方法
外科系6学会から各登録医療機関に協力を依頼し,14の術式を対象として06年11月-07年4月のうちの3-5ヶ月間に症例調査および施設調査を実施した。手術アウトカム(早期合併症,在院日数,転帰)を従属変数,HV/SVおよび患者の背景要因を独立変数とする多変量解析を行った。
手術術式の標準的分類コード体系の開発を行い,ネット上およびスタンドアローンで動作するコンピュータプログラムにより簡単に手術データの登録ができる手法の研究を行った。
結果と考察
腎全摘術では,アウトカムとHV/SVに有意な関連なし。広汎子宮全摘術・人工股関節置換術では術後合併症とSVに関連を認めたものの,HVとアウトカムに関連なし。人工膝関節置換術においては,HV/SVともに術後合併症との関連を認めなかった。未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術では術後modified Rankin scaleとSVに有意な関連を認めたものの,HV/SVともに術後合併症との関連なし。脳動脈瘤コイル塞栓術においてはHV/SVともにいずれのアウトカムとの関連なし。食道(亜)全摘術・膵頭十二指腸切除術では術後合併症とSVに有意な関連を認めたが,HVとの関連なし。直腸切除術/切断術・腹腔鏡下結腸切除術・乳腺悪性腫瘍手術においては,術後合併症とHV/SVに有意な関連なし。
現在の保険請求コードに対応する臨床手術術式のバリエーションを収集し,これと手術術式データベースをあわせて整理することにより,臨床手術術式のバリエーションと標準病名との対応およびKコードとの対応を体系化し,これに国際標準処置手術コード案としてWHOが公開しているICHIコード(International Classification of Healthcare Interventions)との対応付けが可能であった。
結論
いくつかの術式において,HVは手術時間・出血量・在院日数などの有意な影響因子であった。しかし術後合併症については,HVとの関連は明らかにならなかった。一部の術式においてSVと術後合併症の頻度に有意な関連を認めたものの,HVの違いによるアウトカムの優劣は本研究では明らかとならなかった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200701019B
報告書区分
総合
研究課題名
外科手術のアウトカム要因の解析と評価方法に関する研究
課題番号
H18-政策-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
  • 松山 裕(東京大学大学院医学系研究科生物統計学)
  • 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,施設症例数(Hospital Volume,HV)および外科医の経験数(Surgeon Volume,SV)と外科手術アウトカムの関連を明らかにし,診療報酬制度への反映方法を検討すること,および,外科手術に関する診療報酬評価の研究や臨床研究に不可欠な手術術式の標準的分類コード体系を検討することである。
研究方法
外科系の6学会から各登録医療機関に協力を依頼し,14の術式を対象として06年11月1日~07年4月30日のうちの3-5ヶ月の期間に症例調査および施設調査を実施した。患者の背景情報(性別・年齢・診断名・術前併存症),手術内容(術式,手術時間,出血量など),アウトカム(早期合併症,在院日数,転帰),各施設の年間件数および医師の経験数などを質問した。アウトカムを従属変数,HV/SVおよび患者の背景要因を独立変数とする多変量解析を行った。
結果と考察
いくつかの術式において,施設症例数は手術時間・出血量・在院日数などの有意な影響因子であった。しかし最も重要なアウトカム指標である術後合併症の頻度については,HVとの関連は明らかにならなかった。一部の術式においてSVと術後合併症の頻度に優位な関連を認めたものの,HVの違いによるアウトカムの優劣は本研究では明らかとならなかった。
結論
本邦において施設症例数の多寡によって診療報酬点数に格差をもうけるという政策は,本研究結果からはその妥当性が必ずしも明らかとならなかった。ただし本研究は,考慮すべき患者側の背景要因を十分に調査できたわけではなく,調査対象としなかった患者要因が結果に影響を与えている可能性がある。今後,この点を含めたさらなる調査・解析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
外科手術のVolume-Outcome Relationshipについて,これまでの海外における報告は術後死亡をエンドポイントとするものが多かったが,術後死亡率は欧米人に比較して日本人の方が相対的に低いなど,人種差による影響と推測される要因もあり,海外の報告をそのまま日本に適用することは必ずしも妥当でないと考えられる。本研究は,本邦におけるエビデンスを示した点で意義深い。
臨床的観点からの成果
本研究は,本邦における医療供給システムの特徴を考慮して分析された。すなわち本邦では施設数が多いために症例が分散しており,1施設あたり症例数が欧米に比して少ない。また本研究においては,術後死亡が問題となるようなMajor Surgeryだけでなく,術後死亡はほとんど問題とならないが術後合併症は一定程度発生しうる術式も含めた点も,臨床的に意義深い。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、診療報酬制度への反映方法を検討するための資料として活用・提供される。本研究の結果から,施設症例数の多寡によって診療報酬点数に格差をもうけるという政策の妥当性は明らかにならなかった。また本研究結果により、外科手術に関する臨床研究で利用できる標準的な臨床術式分類コード体系を提供が可能となることが明らかとなった。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-