医師のキャリアパスを踏まえた動態把握のあり方及びその有効活用に関する研究

文献情報

文献番号
200701015A
報告書区分
総括
研究課題名
医師のキャリアパスを踏まえた動態把握のあり方及びその有効活用に関する研究
課題番号
H18-政策-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科医療経営政策学講座)
  • 井出 博生(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)
  • 中村 利仁(北海道大学大学院医学研究科(医療システム学分野))
  • 前沢 政次(北海道大学大学院医学研究科(医療システム学分野))
  • 児玉 知子(国立保健医療科学院政策科学部計画科学室)
  • 菅野 健太郎(自治医科大学消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,596,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,厚生労働省が実施している医師調査のデータを個人レベルで継時的に縦断化し,医師のコホート集団における診療科・業務内容・地域などの移動を分析することによって,産科・小児科など特定診療科の医師数の動向,勤務医から開業医への異動,女性医師の就労状況とそれらに関わる要因を分析し,現下の諸問題に関わる現状把握と政策立案に資する資料を提供すること,さらにアンケート調査によって医師のやりがいや疲労感などを質問し,それらに影響を与える要因について分析すること,等である。
研究方法
1972年から2004年の医師票データ4,024,916件(医師延数は374,804人)を分析対象とした。各年における診療科別,業務種別,地域別の医師の残留数,流入数,新人数を集計した。世代間の動態の差を比較するために,1972年,1982年,1992年に医師免許を取得した各コホートにおける残留率を計算した。次に、1982年から1993年までに医籍登録のあった女性医師15,483名について,2004年までの観察期間中の平均在職期間,平均離職期間を算出した。勤務医を対象にインターネット・アンケート調査を実施し、341名から回答を得て、医師の「やりがい」および「疲労感」と各要因間の因果関係を分析した。
結果と考察
産婦人科医の減少の主因は新卒者の減少であり、平均年齢が高くなっている傾向が認められた。小児科医数は新卒者の補充が維持されているため、総数としては増加しているものの、将来的に一定または減少する可能性が指摘された。高年齢の開業医のリタイアに伴って新規開業が増加するという傾向が認められた。女性医師の離職のピークは卒後約8-10年にあり,その比率は10%強であった。勤務医のやりがいや疲労感に関するアンケート調査では,同僚のサポートが厚く,給与に対する満足度が高いほど,医師のやりがいは増し,疲労感は減ることが分った。また患者の過剰な要求は,医師のやりがいを損ない,疲労感を増すことが分った。
結論
医師の転科や開業の動向に関する現状が明らかとなった。今後は,医師の養成数を増やす方向性を模索しつつ,既存の人的資源を有効利用する施策も必要と考えられる。例えば離職した女性医師の人材活用のために職場復帰を支援するなど,医師の生涯を通じた就労への支援環境整備が望まれる。勤務医とりわけ大病院の勤務医の仕事や所得に対する満足度が低いことの背景に,比較的劣悪な就労環境の影響も考えられ,それらの改善の施策も望まれる。

公開日・更新日

公開日
2008-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200701015B
報告書区分
総合
研究課題名
医師のキャリアパスを踏まえた動態把握のあり方及びその有効活用に関する研究
課題番号
H18-政策-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科・医療経営政策学講座)
  • 井出 博生(東京大学医学部附属病院企画情報運営部)
  • 児玉 知子(国立保健医療科学院政策科学部計画科学室)
  • 中村 利仁(北海道大学大学院医学研究科・医療システム学分野)
  • 前沢 政次(北海道大学大学院医学研究科・医療システム学分野)
  • 菅野 健太郎(自治医科大学消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,厚生労働省が実施している医師調査のデータを個人レベルで継時的に縦断化し,医師のコホート集団における診療科・業務内容・地域などの移動を分析することによって,産科・小児科など特定診療科の医師数の動向,勤務医から開業医への異動,女性医師の就労状況とそれらに関わる要因を分析し,現下の諸問題に関わる現状把握と政策立案に資する資料を提供すること,さらにアンケート調査によって医師のやりがいや疲労感などを質問しそれらに影響を与える要因について分析すること,病院の医師数と医師の労働生産性について分析することである。
研究方法
1972年から2004年の医師票データ4,024,916件(医師延数は374,804人)を分析対象とした。各年における診療科別,業務種別,地域別の医師の残留数,流入数,新人数を集計した。世代間の動態の差を比較するために,1972年,1982年,1992年に医師免許を取得した各コホートにおける残留率を計算した。次に、1982年から1993年までに医籍登録のあった女性医師15,483名について,2004年までの観察期間中の平均在職期間,平均離職期間を算出した。勤務医を対象にインターネット・アンケート調査を実施し、341名から回答を得て、医師の「やりがい」および「疲労感」と各要因間の因果関係を分析した。郵送調査により260施設から,医師数,看護職員数、退院患者数、入院特掲診療料収入などのデータを得た。
結果と考察
産婦人科医の減少の主因は新卒者の減少であり、平均年齢の上昇が認められた。小児科医数は新卒者数が維持されているため総数としては増加しているが、将来的に一定または減少する可能性が指摘された。高齢の開業医のリタイアに伴い新規に診療所に勤務する医師が増加する傾向が認められた。女性医師の離職のピークは卒後約8-10年にあり,その比率は10%強であった。勤務医のやりがいや疲労感に関するアンケート調査では,同僚のサポートが厚く,給与に対する満足度が高いほど,医師のやりがいは増し,疲労感は減ることが分った。また患者の過剰な要求は,医師のやりがいを損ない,疲労感を増すことが分った。病院医師規模が比較的大きい病院では、医師一人当たり看護職員数、看護スタッフ数と、医師一人当たり退院数、入院特掲診療料収入等との間に直線的関係が認められた。
結論
医師の転科や開業の動向に関する現状が明らかとなった。今後は,医師の養成数を増やす方向性を模索しつつ,既存の人的資源を有効利用する施策も必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-05-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
産婦人科医・小児科医などの診療科別の医師の動向、病院勤務医から開業医への転職の動向、若年層における女性医師の割合の増加と離職率の動向などが記述的・実証的に明らかとなった。医師の仕事満足分析から,大病院医師の仕事満足が低い現状も明らかとなった。

臨床的観点からの成果
勤務医のやりがいや疲労感に関するアンケート調査では,同僚のサポートが厚く,給与に対する満足度が高いほど,医師のやりがいは増し,疲労感は減ることが分った。また患者の過剰な要求は,医師のやりがいを損ない,疲労感を増すことが分った。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
今後は医師の養成数を増やす方向性を模索しつつ,既存の人的資源を有効利用する施策,医師の生涯を通じた就労への支援環境整備,勤務医の仕事や所得といった就労環境の改善施策などの必要性が示唆された。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
康永秀生, 勝村裕一, 井出博生, 今村知明.医師の属性と仕事満足度の関連についての分析. 病院 2007;66(7):580-582.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
児玉知子、康永秀生、小池創一、井手博生、今村知明.女性医師の卒後就労分析-医師・歯科医師・薬剤師調査経年データより-.第18回日本疫学会学術総会、2008年1月、東京
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-