生活保護の相談援助業務に関する評価指標の開発と、指標の業務支援ツールとしての応用に関する研究

文献情報

文献番号
200701008A
報告書区分
総括
研究課題名
生活保護の相談援助業務に関する評価指標の開発と、指標の業務支援ツールとしての応用に関する研究
課題番号
H17-政策-一般-020
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
森川 美絵(国立保健医療科学院福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 卓(首都大学東京都市教養学部)
  • 新保 美香(明治学院大学社会学部)
  • 根本 久仁子(聖隷クリストファー大学社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,032,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、生活保護の相談援助業務に関する評価項目・指標の開発を行い、それらの評価項目・指標の業務支援ツールとしての応用可能性について検討するものである。最終年は、評価項目の確定、評価項目を応用した業務の現状分析、実務者向け業務支援ツールの開発と効果の検証に取り組んだ。
研究方法
1.評価項目の確定:昨年度の調査結果をふまえ、研究班全員により協議した。
2.業務の現状分析:全福祉事務所の約1割の協力を得て(120福祉事務所)、生活保護担当現業員を対象に(生活保護担当係の1係につき1名任意抽出)、評価項目の実施状況と所属組織の業務体制に関する郵送自記式アンケート調査を実施した。配布数276、有効回答数217(78.6%)。
3.実務者向け業務支援ツールの開発:評価項目を、過程別に相談援助機能とも対応させた一覧表「相談援助項目一覧」、「一覧」を活用して業務実施状況の整理考察を行う「作業シート」、一覧と作業シートを用いた相談援助のふりかえり方法について解説した「てびき」を作成した。 
4.業務支援ツールの効果検証:2自治体の福祉事務所の協力を得て、業務支援ツールを用いた研修を研究班が実地に行い、ツールの効果および効果的活用に関するフィードバックを参加者より得た。
結果と考察
評価項目として、6過程7機能別に54の評価項目を抽出した。相談援助の現状分析からは、過程によるバラツキ、援助計画の策定やその評価・見直し過程における実施程度の低さ、よりよい援助関係を形成するための意識的な働きかけの弱さ、一人一人のワーカーの肩に生活保護をとりまく多くの問題が重くのしかかっている現実、定期的なグループスーパービジョンが個人の相談援助に及ぼす多面的なプラスの影響等が示唆された。こうした現状に即した業務支援ツールとして、冊子『相談助活動を見直してみよう!~「生活保護実践のための業務支援ツール」のてびき』を開発した。業務支援ツールの効果の検証を通じ、業務支援ツールが相談援助の業務指針の役割を果たすこと等を確認した。
結論
最終的に、相談援助過程について一定の内容妥当性と汎用性を備えた評価項目として、6過程7機能別に54の評価項目を抽出した。この評価項目を活用して開発した業務支援ツールは、相談援助の実施状況を過程別、機能別に網羅的に確認点検する上で有用であり、相談援助の質の底上げに寄与するものとなった。

公開日・更新日

公開日
2008-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200701008B
報告書区分
総合
研究課題名
生活保護の相談援助業務に関する評価指標の開発と、指標の業務支援ツールとしての応用に関する研究
課題番号
H17-政策-一般-020
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
森川 美絵(国立保健医療科学院福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 卓(首都大学東京都市教養学部)
  • 新保 美香(明治学院大学社会学部)
  • 根本 久仁子 (聖隷クリストファー大学社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活保護の相談援助業務に関する評価項目・指標の開発を行い、評価項目・指標の業務支援ツールとしての応用可能性について検討することを目的とした。
研究方法
1.生活保護における相談援助の位置づけの把握と活動項目の抽出 (1年次) 
ア.論点整理
イ.地方自治体レベルでの相談援助の標準化・質向上の取り組みの概況把握:指定都市でのヒアリング。全都道府県指定都市を対象にしたアンケート調査。
ウ.相談援助過程の活動項目化:実務家の協力を得て、相談援助を過程と局面の2次元で整理し、各過程の各局面に関する活動を項目化。

2.相談援助過程の評価項目の策定(2年次)
ア.評価項目(案)の抽出
イ.内容妥当性の検討:福祉事務所生活保護担当を対象に、項目へのコンセンサスに関する質問紙調査(7福祉事務所)。当事者団体からの聞き取り。
ウ.評価項目の確定(3年次):研究班全員による協議。

3.業務支援ツールとしての応用可能性の検討(3年次)
ア.相談援助の実施状況の把握:福祉事務所生活保護担当を対象に評価項目の実施状況と業務体制に関するアンケート調査(120福祉事務所)。
イ.実務者向け業務支援ツールの開発:評価項目の一覧表、業務実施状況の整理考察を行う作業シート、「一覧」と「シート」によるふりかえり方法を解説した「てびき」の作成。
ウ.ツール効果の検証:業務支援ツールを用いた研修を通じ、ツール活用の効果に関するフィードバックを入手(2自治体6福祉事務所)。
結果と考察
・評価の前提として求められる相談援助活動の体系的言語化が不十分であることが確認された。
・生活保護における相談援助の重要かつ標準的な活動の体系的項目化が可能となった。
・相談援助過程の評価項目として、6過程7機能別に54の評価項目を抽出した。
・相談援助の現状からは、援助計画の策定やその評価・見直しの過程における実施程度の低さ、よりよい援助関係を形成するための意識的な働きかけの弱さなどがうかがえた。
・業務支援ツール『相談援助活動を見直してみよう!?「生活保護実践のための業務支援ツール」のてびき』を作成した。
・業務支援ツールが相談援助の業務指針の役割を果たすこと等を確認した。
結論
一定の内容妥当性と汎用性を備えた相談援助過程の評価項目を抽出した。開発した業務支援ツールは、相談援助の実施状況を過程別、機能別に網羅的に確認点検する上で有用であり、相談援助の質の底上げに寄与するものとなった。

公開日・更新日

公開日
2008-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200701008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生活保護の相談援助業務について、その過程に即して体系的に言語化した点、具体的な評価項目を提示した点は、評価指標や評価システムに関する研究が未発達な公的扶助研究分野において、特色ある成果である。本研究による生活保護の相談援助実施状況に関する詳細な実証的数量的把握についても、これまでの公的扶助研究では十分な蓄積がなく、特色ある成果である。
臨床的観点からの成果
生活保護の相談援助過程について一定の内容妥当性と汎用性を備えた評価項目として、6過程7機能別に54の評価項目を抽出した。この評価項目により、生活保護の実務担当者は、相談援助の実施状況を過程別、機能別に網羅的に確認点検することが可能になる。また、開発した生活保護業務の支援ツール『相談援助活動を見直してみよう!?「生活保護実践のための業務支援ツール」のてびき』は、現場実践の指針として、個人ないし組織が日常的に、また職場内研修やスーパービジョンにおいてすぐに活用できるツールとして有効である。
ガイドライン等の開発
本研究が開発した評価項目および業務支援ツールは、相談援助の業務指針としての役割を果たすことが、ツールの効果検証を通じて確認された。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省が作成した生活保護の面接相談業務に関する研修用視覚教材(厚生労働省『心の扉をひらく―生活保護に関する面接をよりよくするために』2008年)の内容検討時に、本研究の評価項目が参考とされた。(その旨の連絡を、厚生労働省担当者より受けた。)
その他のインパクト
国立保健医療科学院が実施している全国の福祉事務所職員を対象とした研修(社会福祉研修「福祉事務所新任査察指導員研修」)において、平成20年度は、演習時に「業務支援ツール」を活用することも予定されている。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
厚生労働省が作成した生活保護の面接相談業務に関する研修用視覚教材(厚生労働省『心の扉をひらく―生活保護に関する面接をよりよくするために』2008年)の内容検討時に、本研究の評価項目が参考とされた。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国立保健医療科学院が実施している社会福祉研修「福祉事務所新任査察指導員研修」において、平成20年度は、演習時に業務支援ツールの活用が予定されている。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
森川美絵,根本久仁子,岡部卓 他
生活保護における相談援助過程の評価にむけて
賃金と社会保障 ,  (1431) , 20-33  (2006)
原著論文2
根本久仁子, 森川美絵, 岡部卓 他
地方自治体における生活保護業務マニュアルの分析-相談援助充実の観点から
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 ,  (6) , 17-28  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-