文献情報
文献番号
200639035A
報告書区分
総括
研究課題名
温泉の泉質等に対応した適切な衛生管理手法の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-健危-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 森本 洋(北海道立衛生研究所 微生物部)
- 藤田 雅弘(群馬県衛生環境研究所 保健科学グループ)
- 緒方 喜久代(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
- 岩渕 香織 (岩手県環境保健研究センター 保健科学部)
- 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 山崎 利雄(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター病原微生物部)
- 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
- 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
入浴施設を介したレジオネラ症集団感染事例の後、循環式入浴施設では塩素消毒による衛生管理が徹底されているが、温泉の場合には一律にこの手法が適用できない。温泉の泉質に対応した衛生管理手法を見いだすため、掛け流し式温泉の温泉成分濃度を測定し、微生物の実態を調査した。
研究方法
温泉水に直接Legionella pneumophilaを添加して菌数の短時間変化を検討した。L. pneumophila血清群1分離株を、ヨーロッパのレジオネラ感染症作業部会の検査法により型別した。温泉の浴槽水等の微生物数、温泉成分量を測定した。感染リスクを検討するため、感染事例と浴槽水中の菌数のアンケート調査を行った。
結果と考察
1)酸性泉の浴槽水にL. pneumophilaを接触させると短時間で殺菌され、陰イオン交換処理により殺菌作用は消失した。2)冷却塔由来株に比べ、入浴施設由来株は遺伝子型、モノクローナル抗体型が多様性に富んでいた。抗体MAb 3/1の陽性率は、臨床分離株で74%、環境分離株で22%(すべて入浴施設由来株)であった。冷却塔水、浴槽水由来株の間で鞭毛遺伝子型に明白な違いが認められた。3)浴槽水等、113検体について微生物検査を行ったところ、29%からレジオネラが検出された(施設別では、48施設中46%から検出)。分離されたレジオネラは、9割がL. pneumophilaで、血清群1、6、untypableが多かった。泉質別では酸性泉と硫黄泉のレジオネラ検出率が低かった。多重ロジスティック回帰解析でレジオネラの陽性率が有意に低かったのは、温泉成分でpH6未満、微生物では従属栄養細菌200CFU/mL未満、一般細菌30CFU/mL未満、アメーバ20PFU/100mL未満であった。一般細菌が10倍になると、レジオネラ汚染のリスク(オッズ比)は2.2倍になった。4)アンケート調査の結果、患者由来株と入浴施設由来株の遺伝子型が一致する結果を得たのは10機関、13症例で、すべてL. pneumophilaが起因菌であった。浴槽水中の菌濃度は、90-4700CFU/100mLであった。
結論
掛け流し式温泉で、レジオネラ汚染リスクが低くなる温泉成分量、微生物量を明らかにした。酸性泉のレジオネラ殺菌作用を明示した。入浴施設,冷却塔由来分離株の特徴を明らかにして感染源の推測を可能とした。散発感染事例の菌数の分布を取りまとめた。
公開日・更新日
公開日
2007-05-15
更新日
-