残留塩素に依存しない水道の水質管理手法に関する研究

文献情報

文献番号
200639023A
報告書区分
総括
研究課題名
残留塩素に依存しない水道の水質管理手法に関する研究
課題番号
H17-健康-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科)
  • 大瀧 雅寛(お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 西村 和之(県立広島大学 生命環境学部)
  • 船水 尚行(北海道大学大学院 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
17,213,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日の水道における残留塩素保持の意義と必要性をわが国の水道の現状と最新の知見に照らして再検討し、残留塩素に依存しない新しい水道水質管理を実現するにあたってのあり方を明らかにすることにより、水道水の安全性及び快適性のより一層の向上を図ることを目的とする。
研究方法
水道原水中の病原生物による汚染実態の把握、紫外線照射およびオゾン処理の消毒機構の比較と管理手法の開発、消毒副生成物による健康リスクの総括的評価、塩素使用と免疫毒性との関連性の検討、残留塩素に依存しない水道システムにおける健康リスク評価シミュレーションモデルの構築、水道の配水管路内における微生物再増殖の制御手法の検討などを行った。
結果と考察
牧牛地域におけるクリプトスポリジウム等病原生物の河川流出量を定量的に明らかにした。紫外線消毒およびオゾン消毒による大腸菌の不活化と回復に関する一連の実験を行い、回復能力を評価するとともに、不活化機構につき推定した。代表的な水中有機物を塩素処理した結果生成される副生成物の毒性を、形質転換試験によって評価した場合、その毒性は染色体異常試験による場合より高く、クロロ酢酸と同程度かより強いことを示した。塩素処理を含めた浄水処理の各過程における水中のエンドトキシンの変動、並びに、その細胞毒性との関係を明らかにした。水道水の給配水過程における微生物学的リスク評価のシミュレーションモデルを構築して、その適用性を確認した。配水過程における微生物再増殖につき室内実験を行い、付着微生物量が数週間で定常状態に達すること、定常状態における付着微生物量は水中の残留塩素濃度レベルや壁面の粗度に応じて異なること、付着微生物量は残留塩素濃度の一時的な上昇によって急減するが、その濃度が元のレベルに戻ると速やかに回復することなどを明らかにした。
結論
水道の給配水過程において残留塩素を保持しない場合、従属栄養細菌などが再増殖するので、健康リスクの増大を生じさせないためには、浄水過程で消毒が確実に行うことと、外部からの汚染を生じさせないことを確保する必要がある。また、消毒副生成物全体の健康リスクについては今後さらに慎重に検討する必要がある。最終年度にあたる来年度は、以上の研究をさらに継続して行い、各成果を取りまとめるとともに、これらの成果を総合して、残留塩素なしを実現する上で必要となる条件などを具体的に明らかにしたい。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
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