文献情報
文献番号
200639010A
報告書区分
総括
研究課題名
バングラデシュ及び中国を中心とする地下水のヒ素汚染地域において地下水を(安全な)水道水源とする実現可能性評価に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-067
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
徳永 裕司(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 内野 正(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
- 国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
- 横田 漠(宮崎大学 工学部)
- 大野 浩一(北海道大学大学院 工学研究科)
- 山内 博(北里大学 医療衛生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,379,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
バングラデシュにヒ素除去装置(GSF)を設置し、ヒ素除去性能、排出されるヒ素汚泥の処分法を研究する。チュナカリ村にGSFを設置し、ヒ素被害家族16家族にGSF水供給前後における水と食料からの1日ヒ素摂取量を推定する。安全な水の供給の6ヶ月及び1年後のヒ素家族のヒ素症状並びに毛髪及び尿中のヒ素代謝物濃度の変化を検討する。中国では、慢性ヒ素中毒患者に中国の飲料水ヒ素基準を満たす飲料水をパイプ方式で給水した場合の効果と問題点を検討する。
研究方法
GSFの設計方法を模索し、設計の基本的な基準及び人工池におけるヒ素の自然浄化を検討する。ヒ素汚染家族16家族からの飲料水及び食料中のヒ素量を検討し、各家庭の代表者1人の1日分の食事を陰膳として採取した。安全な水の供給の6ヶ月及び1年後のヒ素家族の症状は皮膚科医が診断し、毛髪及び尿中のヒ素量はHPLC-ICP/MSで測定された。中国内モンゴル自治区の住民約11000名の慢性ヒ素中毒調査を行なうと同時に村民に配水される井戸水中ヒ素濃度の調査を行った。
結果と考察
GSFの設計の基準を作り上げた。人工池でもかなりの数のコロニーとヒ素代謝物の存在を確認した。安全な水供給後の成人男性と成人女性の飲水量の平均値は、2.54と2.24L/day/人となり、安全な水供給前の結果より低い値だった。食品中のヒ素濃度は、供給前に比べて低減した。6ヶ月及び1年間の安全な水の供給により、かなりのヒ素被害患者の重傷度が軽減した。安全な水供給6ヶ月後の毛髪中のヒ素濃度は明らかに低下したが、尿中ヒ素代謝物濃度は気候要因を受けた。中国では、安全な水供給後1年目の尿中ヒ素濃度は約1/2に低下し、皮膚症状も軽減した。
結論
JICA/AANプロジェクトで本研究での設計基準が応用できる。人工池での結果はヒ素汚泥の自然処理の確立に繋がる。GSF水供給前後における水と食料からの1日ヒ素摂取量の分析により、食品由来のヒ素摂取量が減少した。安全な水の供給後の6ヶ月及び1年後の調査で、ヒ素被害患者の重傷度が軽減した。毛髪中のヒ素濃度は明らかに低下した。中国では、ヒ素暴露の停止や軽減で将来の発ガン性のリスクの軽減に対しては科学的な根拠を獲得した。
公開日・更新日
公開日
2007-04-09
更新日
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