循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究

文献情報

文献番号
200639008A
報告書区分
総括
研究課題名
循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-059
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 縣 邦雄(アクアス(株) つくば総合研究所)
  • 荒井 桂子(横浜市衛生研究所)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部 )
  • 倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部 )
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所)
  • 神野 透人(国立医薬品食品研究所 環境衛生化学部)
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所)
  • 福井 学(北海道大学 低温科学研究所)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部 )
  • 山崎 利雄(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 病原微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,117,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レジオネラ汚染に至るメカニズム、システムが抱える問題点を実証的に示し、その対応策を提案すことで循環式浴槽を介したレジオネラ等に起因する感染症の発生防止に寄与することを目的とする。
研究方法
循環式浴槽における濁度とKMnO4消費量(有機物汚染)の管理について、
消毒に係る諸問題
遺伝子検出法を用いた迅速検査法の評価
アメーバへの感染性(ID50 )の継時的変化
循環式浴槽管理における重要管理点
浴槽内に発生する微生物叢解析
結果と考察
循環型浴槽水の濁度とKMnO4消費量(有機物汚染)に関する理解が深まり、いずれの値も持ち込み量を溢水量(溢水に見合う補給湯量)で除した値に収束することが示された。その結果、濁度は浴槽水の基準値を超えるが、KMnO4消費量は超えないことが明らかとなった。従って、循環式浴槽に求められるろ過機能は濁質の除去に限られる。有機物対策と称した生物浄化は不要である。今回、使い捨てろ材を用いた珪藻土ろ過装置の効果を検証し、良好な成績を得た。実験室レベルで塩素に替わる諸毒剤の効果を検討した。レジオネラの検査法として迅速遺伝子検出法は有効であるが、試行機関によって結果に差があり、培養法の感度に及ばない例もあった。浴槽水中のレジオネラはアメーバへの感染性を比較的速やかに失うことが示された。浴槽水の衛生管理にHACCPの導入を推進している。当該システムは衛生管理が効果的に実行されていることを検証するための活動である。
結論
溢水とそれに見合う補給が実施されている循環型浴槽では濁度対策が必要であるが、KMnO4消費量が基準値を超えることは無い。レジオネラ属菌は浴槽水と接触する構造物の表面に着生するバイオフィルムが汚染巣で、対策の要点は構造の単純化と洗浄・換水にある。塩素消毒は緊急避難的な措置であり、最小限に留めることが望まれる。塩素消毒に伴って消毒副生成物監視が必要である。塩素消毒の導入以降、浴槽水でL. pneumophila SG1の相対的な増加が認められており、原因究明が急がれる。レジオネラ以外にもMycobacterium などの病原微生物が検出された。DNA増幅によるレジオネラの迅速検出法は有効であるが、普及に向けてはDNAの抽出/回収の効率化と簡便化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200639008B
報告書区分
総合
研究課題名
循環式浴槽における浴用水の浄化・消毒方法の最適化に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-059
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 縣 邦雄(アクアス(株) つくば総合研究所)
  • 荒井 桂子(横浜市衛生研究所)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 倉 文明(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 黒木 俊郎(神奈川県衛生研究所)
  • 神野 透人(国立医薬品食品研究所 環境衛生化学部)
  • 杉山 寛治(静岡県環境衛生科学研究所)
  • 福井 学(北海道大学 低温科学研究所)
  • 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 山﨑 利雄(国立感染症研究所 病原微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
レジオネラ汚染に至るメカニズム、システムが抱える問題点を実証的に示し、その対応策を提案すことで循環式浴槽を介したレジオネラ等に起因する感染症の発生防止に寄与することを目的とする。
研究方法
循環式浴槽における浴槽水の濁度、有機物汚染等の管理
消毒剤の効果評価と問題点の整理
遺伝子検出法を用いた迅速検査法の有用性評価
レジオネラのアメーバへの感染性評価
循環式浴槽管理における重要管理点
その他
結果と考察
レジオネラおよび他の病原微生物の発生源は浴槽システム中で繁殖するバイオフィルムである。しかるに、現行のシステムでは「有機物対策」と称してろ過槽内に繁殖するバイオフィルムの積極活用を謳っている。当該研究では、浴槽水の有機物対策が溢水とそれに見合う湯水の補給で完結することを示した。一方、濁質の除去は必要で、微生物対策を最優先にした浴槽システムの単純化(接水部分の極少化、洗浄・消毒の効果を得やすい構造)が危急の課題と考える。これにより塩素等の消毒剤を最少限に抑えることで、あわせて消毒剤の持つ負の効果を低減させることが肝要と考える。水中のレジオネラは比較的速やかに宿主アメーバへの感染性を失うことから、実機レベルで本現象の検証を行った上で、現行のレジオネラ水質基準(10cfu/100mL未満)を再検討すべきと考える。レジオネラ固有の遺伝子検出を利用した迅速検査法を再評価し、培養法に替わり得ることを示した。浴槽水の衛生管理における重要管理点を整理した。
結論
当該研究事業では多方面からレジオネラ汚染に至るメカニズム、あるいは循環式浴槽システムが抱える衛生問題を明らかにし、管理の要点を指摘してきた。循環式浴槽は旅館や各種入浴施設において広く設備されているが、レジオネラ汚染等など衛生管理に苦慮している。その原因は循環式浴槽システムの矛盾を抱えた構造にある。
循環式浴槽システムは従来の完全換水型の浴槽システムとは根本的に異なった構造であり、換水を前提とした現行の浴槽水水質基準を準用することの是非について検討べき時期にあると考える。また、現場での管理指標が必要と考える。当該研究事業および関連の研究事業によって得られた成果は「公衆浴場における衛生等管理要領」あるいは「旅館業における衛生等管理要領」等の抜本的な見直しに向けた問題点の整理、および具体的な対応策の整備に寄与するものである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200639008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
循環式浴槽システムにおいて、レジオネラ属菌は浴槽水と接触している構造物の表面に着生するバイオフィルムが汚染巣である。浴槽水のKMnO4消費量(基準値:25mg/L)は溢水とそれに見合う湯水の補充により管理できることを明らかにし、生物浄化の必要性を根本から否定した。一方、濁質(濁度5度以下)の除去は必要で、使い捨て型の珪藻土ろ過が効果的であるなど、浴槽構造の単純化と洗浄効果が得られ易い構造への改良が危急の課題として指摘した。培養法に替えてDNA検出によるレジオネラ検査の迅速化に道を開いた。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
浴槽水の濁度およびKMnO4消費量は入浴者が持ち込む汚れと溢水/補給湯量により規定されるもので、濁度およびKMnO4消費量は持ち込み汚染量を補給湯量で除した値に収束することを示した。塩素等の消毒剤の使用により生じる副生成物による化学物質曝露の回避に向けて換気を含めた施設の維持管理の見直しを指摘した。レジオネラ検査用の既存のDNA検査キットは概ねわが国の環境株、臨床株に対応していた。併せて、浴槽管理の重要管理点を整理した。
その他行政的観点からの成果
循環式浴槽システムは従来の完全換水型の浴槽システムとは根本的に異なった構造であり、換水を前提とした現行の浴槽水水質基準を準用することの是非について検討べき時期にあると考える。また、現場での管理指標の必要性が指摘される。当該研究事業および関連の研究事業によって得られた成果は「公衆浴場における衛生等管理要領」あるいは「旅館業における衛生等管理要領」等の抜本的な見直しに向けた問題点の整理、および具体的な対応策の整備に寄与するものである。
その他のインパクト
当該研究の成果は、厚生労働省主催の「全国レジオネラ対策会議」において報告されている。また、地方自治体の条例等には研究成果が参照されており、自治体主催の講演会においても成果発表を行ってきた。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
研究成果は地方自治体の条例等に反映されている レジオネラ対策指針等に反映
その他成果(普及・啓発活動)
5件
全国レジオネラ対策会議(厚生労働省)において研究成果を発表 都道府県からの依頼で講習会等で講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-