難分解性有機汚染物質(POPs)の胎児期暴露に関する研究

文献情報

文献番号
200638023A
報告書区分
総括
研究課題名
難分解性有機汚染物質(POPs)の胎児期暴露に関する研究
課題番号
H18-化学-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 洋(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究分担者(所属機関)
  • 細川 徹(東北大学教育学研究科発達障害学)
  • 岡村 州博(東北大学医学系研究科周産期医学)
  • 村田 勝敬(秋田大学医学系研究科環境保健学)
  • 堺 武男(宮城県立こども病院)
  • 福土 審(東北大学医学系研究科行動医学)
  • 斎藤 善則(宮城県環境保健センター)
  • 仲井 邦彦(東北大学医学系研究科環境保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
45,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ダイオキシン類、ポリ塩化ビフェニール(PCBs)、有機塩素系農薬などの残留性有機汚染物質(POPs)およびメチル水銀といった化学物質は環境に長期間に渡り残留し、食物連鎖を経て生物濃縮され、人は食物、特に魚摂取を通して曝露を受ける。なかでも、中枢神経系が発生、発達期にある胎児および新生児は化学物質に対する感受性が高いと考えられ、周産期曝露による健康リスクを明らかにすることが求められている。本研究では、POPsおよびメチル水銀による周産期曝露に起因した健康影響を明らかにするために、周産期における化学物質曝露をモニタリングするとともに、出生児の発達、特に認知行動面の発達を追跡する前向きコホート調査を実施する。
研究方法
599名の新生児の登録を得て調査研究を進めてきた。本年度は、生後30ヶ月で実施したChild Behavior Checklistを終了するとともに、生後42ヶ月(Kaufmann Assessment Battery for Childrenによる追跡調査)および66ヶ月(社会生活能力や不適応行動に関するアンケート調査)を進めた。臍帯血PCBs分析を高分解能GC/MSにより実施し、臍帯血総PCBs、母親毛髪総水銀、母親総魚摂取量とともに、これまでにデータを収集した子どもの新生児行動評価(NBAS、生後3日目に実施)、Bayley Scales of Infant Development Second Edition(BSID-II、生後7ヶ月および18ヶ月に実施)との関連性を重回帰分析により解析した。
結果と考察
NBASについて、臍帯血総PCBsおよび母親総魚摂取量との間に統計学的に有意な関連性は見いだせなかったが、母親毛髪総水銀との間に有意な関連性が認められ、NBAS運動クラスターと負の、状態の幅クラスターおよび反射クラスターと正の相関が観察された。一方、生後7ヶ月および18ヶ月に実施したBSID-IIについては、いずれの曝露指標とも関連性は認められなかった。
結論
a) メチル水銀曝露による負の影響が新生児期に示唆されたものの、b) メチル水銀曝露の影響は生後7および18ヶ月の追跡調査では観察されなかった。また、c) PCBsによる胎児期曝露の影響は生後18ヵ月までの追跡調査ではみと認められず、d) 母親の魚摂取の利点についても見いだせなかった。本研究は子どもの発達を追跡するコホート調査であり、引き続き周産期におけるPOPs曝露評価を進めるとともに、児の発達を追跡する。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
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