前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明

文献情報

文献番号
200638016A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明
課題番号
H17-化学-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
水上 尚典(北海道大学大学院医学研究科生殖・発達医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 梶原 淳睦(福岡県保健環境研究所保健科学部)
  • 遠藤 俊明(札幌医科大学産婦人科学講座)
  • 千石 一雄(旭川医科大学産婦人科学講座)
  • 中澤 裕之(星薬科大学薬品分析化学講座)
  • 藤田 正一(北海道大学大学院獣医学研究科環境獣医科学講座)
  • 野々村克也(北海道大学大学院医学研究科外科治療学講座)
  • 櫻木 範明(北海道大学大学院医学研究科生殖・発達医学講座 )
  • 佐田 文宏(北海道大学大学院医学研究科予防医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
66,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
尿道下裂、停留精巣等の先天異常の疫学研究をpopulation-basedで行い、我が国における発生率の増加の有無、リスク要因を検討し予防対策に資する。
研究方法
北海道の42産科施設の協力を得て、妊婦を対象に地域ベースの前向きコホートを設定し、55のマーカー異常について観察し、先天異常モニタリングとリスク評価を実施する。ダイオキシン類、有機フッ素系化合物など内分泌攪乱物質の曝露評価を行い、症例対照研究を併せて実施し環境要因とともに遺伝的な感受性素因を解明する。
結果と考察
(1)平成19年1月まで、同意を得ての参加した妊婦数は12686人であった。新生児個票の戻った8267人のうち、先天異常総数は225、出産頻度は2.09%であった。内訳は、先天性心疾患28人、ダウン症候群11人、口唇口蓋裂9人、水腎症8人、多指症7人、福耳、停留精巣各6人等で、尿道下裂は2人であった。在胎週数、児の出生時体重が先天異常発症と関連していた。母の血清葉酸値5.7ng/ml以下は児の出生体重を有意に下げたが、葉酸サプリメント摂取によって体重低下が予防された。(2)妊婦の母体血中ダイオキシン類平均濃度は、18.1 pg TEQ/g lipid、総PCB類濃度は438.1 pg/gであり、母乳中ダイオキシン類平均濃度は、13.7 pg TEQ/g lipid、総PCB類濃度は4084.7 pg/gであった。母体血から母乳へのダイオキシン類およびPCB類の移行は、塩素数の多いものほど移行しにくかった。(3)母乳40検体で有機フッ素化合物を分析したところ、すべての検体からPFOSが検出され、PFCsも高頻度で検出された。妊婦のPFOS濃度が高いほど出生時の体重を下げ有意の関連がみとめられた。(4)尿道下裂の程度が強いほど内分泌異常の頻度が増加し、ESR1のCGハプロタイプ(PvuII部位/XbaI部位)、ESR2の2681-4A>G部位のGアレルは尿道下裂に対するリスクを減少させ、遺伝的感受性素因の存在が明らかになった。
結論
妊婦の葉酸値が低ければ出生時体重を有意に下げ、サプリメント服用によって低体重が予防される。ダイオキシン類濃度は低下傾向を認めたが有機フッ素系化合物は広く曝露し、いずれも児の出生時体重と関連した。今後も大規模疫学研究を継続し、環境と遺伝の相互作用を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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