核内受容体結合能およびホルモン活性同時測定法による化学物質リスク評価

文献情報

文献番号
200638015A
報告書区分
総括
研究課題名
核内受容体結合能およびホルモン活性同時測定法による化学物質リスク評価
課題番号
H17-化学-一般-011
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
下東 康幸(九州大学大学院 理学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 野瀬 健(九州大学大学院 理学研究院)
  • 松島綾美(九州大学大学院 理学研究院)
  • 下東美樹(福岡大学 理学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
29,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の内分泌かく乱作用性を高精度に予測する方法として、「化学物質のホルモン受容体への結合に伴う受容体コンホメーション変化を感知・センシングする」という、新しい着想に基づく「ホルモンの受容体結合性およびホルモン活性の同時測定評価法」の開発に我々は成功した。そして、このセンシング抗体法を、エストロゲン受容体とアンドロゲン受容体について「化学物質の内分泌かく乱作用性の順位予測法」として確立した。内分泌かく乱作用は、核内受容体が複合的に関与する複雑な制御機構に対して化学物質が影響を及ぼす結果として発現される可能性が高い。本研究では、それぞれの核内受容体に対するコンホメーション変化センシング抗体の一般的な設計・調製法およびアッセイ法を確立し、ヒト核内受容体48種すべてに対する環境化学物質の内分泌かく乱作用性の予測・順位付けを行うことを目的とする。また、新たに発見された核内受容体反応性の化学物質について、受容体応答性の詳密解析を実施することを目的とする。
研究方法
抗原ペプチドを化学合成し、ウサギ・ポリクローナル抗体、マウス・モノクローナル抗体、ファージ抗体を作製する。これらを用いて競合ELISAを基盤としたセンシング抗体アッセイ法を確立し、化学物質の内分泌かく乱作用性の順位付けを行う。
結果と考察
新たに12種の核内受容体について抗体作製を完了し、既にアッセイ法を確立したものを含め、合計36種について統一的なセンシング抗体アッセイ法の確立に取り組んだ。モノクローナル抗体については、特にアッセイの高効率に有効である。こうしたなか、自発活性化型受容体であるエストロゲン関連受容体γ型(ERRγ)について、インバースアゴニストで構造変化させたうえでアッセイする新規な方法の開発に成功した。これによりビスフェノールAのインバースアンタゴニスト活性が発見された。こうした反応性は、現在まで未解明である「ビスフェノールAの低用量効果」がERRγを介して発現される内分泌かく乱作用である可能性を示唆する。
結論
核内受容体に通常のリガンド活性化型受容体に加えて、自発活性化型受容体が存在することが判明し、これらに対してそれぞれコンホメーション変化センシング抗体アッセイ法を確立した。化学物質リスク研究においては、ヒト核内受容体48種すべてを標的とすること必要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2007-04-04
更新日
-