化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析

文献情報

文献番号
200638014A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析
課題番号
H17-化学-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 久下周佐(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 黄 基旭(東北大学 大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
33,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康影響が懸念されている化学物質や重金属類に対する感受性決定遺伝子を網羅的に検索・同定し、その作用機構を解明することを目的とする。
研究方法
高発現またはノックダウンさせることによって化学物質感受性に影響を及ぼす遺伝子群を網羅的に検索し、同定された遺伝子の一部については遺伝学的および生化学的手法を用いて作用機構解析を行った。
結果と考察
ヒトのほぼ全遺伝子に対応するsiRNAライブラリーを293細胞に導入して、ノックダウンすることによってメチル水銀に対する293細胞の感受性に影響を与える遺伝子群を検索し、PIGBを含むいくつかの遺伝子を同定した。GPIアンカー合成に関わるPIGBはノックダウンによって293細胞をメチル水銀耐性にしたが、機構解析の結果、GPIアンカーの合成の抑制がメチル水銀毒性軽減に関与していることが初めて示唆され、初期のGPIアンカーの形成に関わるセラミドがメチル水銀毒性を増強することも明らかとなった。また、昨年度の検索で同定されたピルビン酸合成に関わる酵素Eno2についても機構解析を引き続き行い、ミトコンドリア電子伝達系に関わる因子の中でRip1が電子伝達系とは別の機構でメチル水銀毒性を増強させることが判明し、さらにメチル水銀がピルビン酸のミトコンドリアへの取り込みを促進させることも明らかとなった。一方、FIP-INシステムを用いて高発現によって亜ヒ酸毒性に影響を与える遺伝子の検索も行い、GDP/GTP交換反応抑制因子であるGDI2が293細胞を亜ヒ酸耐性にする遺伝子として同定された。さらに、酵母を用いた遺伝子スクリーニングも実施し、各種のストレスに応答するPkc1-MAPK 経路に関わる因子の多くが欠損によって酵母を亜ヒ酸高感受性にすることも判明した。Pkc1-MAPK 経路の上流に位置する数種の膜受容体の中でストレス感知を担う膜受容体であるSlg1のみが本機構に関わり、亜ヒ酸処理によってSlg1の蛋白質レベルが顕著に減少すること、および酵母Slg1のヒトホモログであるCD43を高発現させたヒト培養細胞が亜ヒ酸に耐性を示すことも明らかとなった。
結論
新しい高効率の感受性決定遺伝子検索法が確立され、これによって多くの化学物質感受性決定遺伝子を同定することに成功した。本知見は、今後の化学物質感受性決定因子に関する研究の発展に大きく寄与するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-03-24
更新日
-