文献情報
文献番号
200638012A
報告書区分
総括
研究課題名
環境ナノ粒子の動脈硬化促進メカニズムの解明
課題番号
H17-化学-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岩井 直温(国立循環器病センター研究所疫学部)
研究分担者(所属機関)
- 丹羽 保晴(国立循環器病センター研究所疫学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナノ粒子の心血管系に対する影響とそのメカニズムを解明し、リスク評価の基礎データを整備することを目的とする。
研究方法
ナノ粒子の物理的性質の解析と、血管内皮細胞、マクロファージを中心としたナノ粒子の培養細胞への影響(主に急性効果)を解析する。更に動物実験を中心としたナノ粒子吸入試験による生体内分布の解明及び生理機能(炎症反応・血小板凝集能・酸化ストレス)への影響調査を行った。
結果と考察
ナノ粒子の物理的性質:粉体カーボンブラック(CB)の平均粒子径は約111.4nmで水溶液には不溶
性、水溶性フラーレンは約7.1nmであった。
血管内皮細胞:CBは血管内皮細胞に対して細胞障害を誘発し、そのメカニズムとして1)オートフ
ァゴソーム過形成などの物理的要因 2)サイトカイン、ケモカインや活性酸素産生増加などの二次的障害が考えられた。水溶性フラーレンも細胞障害を誘発し、1)ユビキチン化蛋白質の異常蓄積による物理的要因 2)サイトカイン、活性酸素産生などによる2次的要因が考えられた。ナノ粒子の性状によって内皮細胞に対する作用機序が異なることが判明した。
マクロファージ:カーボンブラック、水溶性フラーレンによりマクロファージが刺激され、変成LDL
を取り込むことによって泡沫化することを示した。
血小板:ナノ粒子自体には血小板凝集反応促進作用は検証できなかったが、水溶性フラーレンにはADPに対する血小板反応相乗効果作用が確認できた。
LDLR/KOマウス:CBの気管内噴霧と高コレステロール食負荷により、動脈硬化巣の進展と、炎症性マ
ーカーであるCRPの血中濃度の上昇が見られた。しかし、肺以外の臓器でCBの沈着は確認できなかった。
ラットCB全身曝露実験:収縮期血圧の上昇が確認できたが、血圧上昇の作用機序とその他の生理機
能は解析中である。
性、水溶性フラーレンは約7.1nmであった。
血管内皮細胞:CBは血管内皮細胞に対して細胞障害を誘発し、そのメカニズムとして1)オートフ
ァゴソーム過形成などの物理的要因 2)サイトカイン、ケモカインや活性酸素産生増加などの二次的障害が考えられた。水溶性フラーレンも細胞障害を誘発し、1)ユビキチン化蛋白質の異常蓄積による物理的要因 2)サイトカイン、活性酸素産生などによる2次的要因が考えられた。ナノ粒子の性状によって内皮細胞に対する作用機序が異なることが判明した。
マクロファージ:カーボンブラック、水溶性フラーレンによりマクロファージが刺激され、変成LDL
を取り込むことによって泡沫化することを示した。
血小板:ナノ粒子自体には血小板凝集反応促進作用は検証できなかったが、水溶性フラーレンにはADPに対する血小板反応相乗効果作用が確認できた。
LDLR/KOマウス:CBの気管内噴霧と高コレステロール食負荷により、動脈硬化巣の進展と、炎症性マ
ーカーであるCRPの血中濃度の上昇が見られた。しかし、肺以外の臓器でCBの沈着は確認できなかった。
ラットCB全身曝露実験:収縮期血圧の上昇が確認できたが、血圧上昇の作用機序とその他の生理機
能は解析中である。
結論
当初、ナノ粒子が肺を通過し、循環血中に移動するという考えに基づいて細胞レベルで直接作用を検証し、ナノ粒子が動脈硬化発症と進展を促進する可能性を提示した。ところが、LDLR/KOマウスの実験からほとんどのCBは循環血中に移動しないことが判明した。しかし、CB噴霧により動脈硬化が発症、進展し、血中CRP濃度が上昇したことから、CB曝露による肺組織での緩やかな炎症免疫反応が動脈硬化の引き金になると推察した。
公開日・更新日
公開日
2007-04-12
更新日
-