内分泌かく乱化学物質の生体影響メカニズム(低用量効果・複合効果を含む)に関する総合研究

文献情報

文献番号
200638002A
報告書区分
総括
研究課題名
内分泌かく乱化学物質の生体影響メカニズム(低用量効果・複合効果を含む)に関する総合研究
課題番号
H16-化学-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 達(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関澤 純(徳島大学総合科学部)
  • 松井 三郎(京都大学大学院)
  • 杉村 芳樹(三重大学医学部)
  • 福島 昭治(日本バイオアッセイ研究センター)
  • 曽根 秀子(国立環境研究所)
  • 井口 泰泉(自然科学研究機構)
  • 笹野 公伸(東北大学大学院)
  • 廣川 勝いく(東京医科歯科大学大学院)
  • 山崎 聖美(国立健康栄養研究所)
  • 五十嵐 美徳(国立がんセンター研究所)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 粟生 修司(九州工業大学大学院)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所)
  • 五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
57,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本総合研究で設定した統括的目的は、内分泌かく乱化学物質の高次生命系へのかく乱作用の背景にある分子機構を、核内受容体のシグナルネットワークを中軸とした基盤研究をすすめ、生殖・ステロイド代謝系、免疫・感染防御系、神経・行動系への影響メカニズムを統一的に理解することにある。また現実課題となっている低用量効果・複合効果についても、プロジェクト研究として、ホメオスタシスの背景に潜伏する比較的低用量レベルでの生体影響を視野に入れ、個別に時宜に応じた疑問に答える研究を図ることとしてきた。
研究方法
プロジェクト課題研究では、1.リスク評価情報収集、2.食物等中の異物受容体結合物の調査、3.エストロジェンの成長初期の前立腺への影響、及び4.低用量発がん、の4課題について、1.と2.は文献検索、3.と4.は実験を行った。また、基盤研究では、生殖・ステロイド代謝部門、免疫部門、神経・行動部門、核内レセプター部門の各部門に分かれて実験を行った。神経・行動部門および核内受容体研究でマイクロアレイ解析による支援を行った。
結果と考察
プロジェクト課題研究では、ビスフェノールA(BPA)関連の文献調査(さしあたり168件)を始め、AhRリガンドとなりうる食品類の調査を行った。またBPAの経皮下投与により成獣マウス前立腺に角化病変が認められたほかヒト乳がん細胞MCF7におけるテロメレース発現の上昇を指標とした発がんの蓋然性が認められた。基盤研究では免疫・感染防御系での免疫細胞の活性化、神経・行動系での探索行動における性分化障害など、また生殖・ステロイド系での肝や骨でのBPAやノニルフェノールの通常内分泌器官をうわまわる反応性影響を認めた。
結論
ウェイブリッジ会議十周年を迎えプロジェクト課題および基盤研究のそれぞれで最終年度としてのくぎりとなる成果がまとまり生体反応機構に対する理解が進展した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200638002B
報告書区分
総合
研究課題名
内分泌かく乱化学物質の生体影響メカニズム(低用量効果・複合効果を含む)に関する総合研究
課題番号
H16-化学-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 達(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井藤 悦郎(宇部興産(株))
  • 関澤 純(徳島大学総合科学部)
  • 松井 三郎(京都大学大学院)
  • 杉村 芳樹(三重大学医学部)
  • 福島 昭治(日本バイオアッセイ研究センター)
  • 曽根 秀子(国立環境研究所)
  • 井口 泰泉(自然科学研究機構)
  • 笹野 公伸(東北大学大学院)
  • 廣川 勝昱(東京医科歯科大学大学院)
  • 山崎 聖美(国立健康栄養研究所)
  • 五十嵐 美徳(国立がんセンター研究所)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 粟生 修司(九州工業大学大学院)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所)
  • 五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所)
  • イシュワー エス パルハー(日本医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内分泌かく乱化学物質の高次生命系へのかく乱作用の背景にある分子機構を、核内受容体のシグナルネットワークを中軸とした基盤研究をすすめ、生殖・ステロイド代謝系、免疫・感染防御系、神経・行動系への影響メカニズムを統一的に理解することを目的として研究を進めた。現実課題となっている低用量効果・複合効果についても、プロジェクト研究として、ホメオスタシスの背景に潜伏する比較的低用量レベルでの生体影響を視野に入れ、個別に時宜に応じた疑問に答える研究を図ることとしてきた。
研究方法
プロジェクト課題研究では、1.リスク評価情報収集、2.食物等中の異物受容体結合物の調査、3.エストロジェンの成長初期の前立腺への影響、及び4.低用量発がん、の4課題について、1.と2.は文献検索、3.と4.は実験を行った。また、基盤研究では、生殖・ステロイド代謝部門、免疫部門、神経・行動部門、核内レセプター部門の各部門に分かれて実験を行った。経年的に2,3の研究テーマ毎にマイクロアレイ解析による支援を行った。
結果と考察
プロジェクト課題研究では、2000年以降7年間のビスフェノールA(BPA)関連の文献調査を始め、天然のAhRリガンドとなりうる食品類を含む諸物質の調査やその代謝物からみた生体障害予測の研究、前立腺に対するエストロジェンやBPAによるゲノム刻印機構や催奇形性、角化病変の誘発さらにヒト乳がん細胞MCF7におけるテロメレース発現の上昇を指標とした発がんの蓋然性の観察などが行われた。基盤研究では、ダイオキシン受容体シグナルと女性ホルモン受容体シグナルのクロストーク(交叉)現象、胎生期及び新生児期におけるDESなどホルモン活性物質の投与によって生ずる不可逆的シグナル伝達機構の発見、種々のSXR等核内受容体の種々の臓器における多様な反応性、BPAの免疫・感染防御系での担当細胞の活性化、神経・行動系での探索行動における性分化障害、さらに生殖・ステロイド系での肝や骨でのBPAやノニルフェノールの通常内分泌器官をうわまわる反応性影響等を見出した。
結論
3年間の研究期間の最終年次はウェイブリッジ会議十周年に相当したが、3年間を通してプロジェクト課題および基盤研究のそれぞれでくぎりとなる成果がまとまり、生体反応機構に対する理解が進展した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200638002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
内分泌かく乱化学物質の高次生命系へのかく乱作用の背景にある分子機構を、核内受容体のシグナルネットワークを中軸とした基盤研究をすすめ、生殖・ステロイド代謝系、免疫・感染防御系、神経・行動系への影響メカニズムを統一的に理解することを目的として研究を進め、ダイオキシン受容体シグナルと女性ホルモン受容体のクロストーク(交叉)現象、胎生期及び新生児期におけるDESなどホルモン活性物質の投与によって生ずる不可逆的シグナル伝達機構の発見、種々のSXR等核内受容体の種々の臓器における多様な反応性等を見出した。
臨床的観点からの成果
内分泌かく乱化学物質そのもののヒトへの暴露の危惧はないことが明らかになりつつあり、他方かく乱機構に関する研究が進み、種々のホルモン受容体を介した内分泌かく乱症候群としてのメタボリックシンドローム等、臨床的観点からの目配りの求められる課題が明らかになりつつある。
ガイドライン等の開発
内分泌かく乱化学物質のスクリーニングに関する試験法開発とあいまって子宮腫大試験等のガイドラインの設定が経済開発協力機構を中心に進んでおり、これらの学術的情報提供が行われている。
その他行政的観点からの成果
厚生労働科学内分泌かく乱化学物質検討会等の審議会で、その研究動向と欧州委員会、米国環境保護庁等の行政施策の進展動向をにらんで情報の検討が進んでいる。
その他のインパクト
各省連絡会議を通じた関連公開シンポジウム等への情報提供を行ってきた。

発表件数

原著論文(和文)
37件
原著論文(英文等)
310件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
150件
学会発表(国際学会等)
175件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Wei M, Hori T, Wanibuchi H, Morimura K, Kang JS, Puatanachokchai R and Fukushima, S
Wei M, Hori T, Wanibuchi H, Morimura K, Kang JS, Puatanachokchai R and Fukushima, S
Cancer Lett. ,  (231) , 304-308  (2006)
原著論文2
Kinoshita A, Wanibuchi H., Wei M, Fukushima S.
Hormesis in carcinogenicity of non-genotoxic carcinogens
J Toxicol Pathol ,  (19) , 111-122  (2006)
原著論文3
Grun F, Watanabe H, Kanno J, et al
Endocrine-disrupting organotin compounds are potent inducers of adipogenesis in vertebrates
Mol Endocrinol. ,  (20) , 2141-2155  (2006)
原著論文4
Kobayashi M, Takahashi E, Iguchi T, et al
Chromatin immunoprecipitation-mediated target identification proved aquaporin 5 is regilated directly by estrogen in the uterus
Gene to Cells ,  (11) , 1133-1143  (2006)
原著論文5
Kishimoto M, Fujiki R, Kato S, et al
Nuclear Receptor Mediated Gene Regulation through Chromatin Remodeling and Histone Modifications
Endocr J ,  (53) , 157-172  (2006)
原著論文6
Oishi H, Kitagawa H, Kato S, et al
An hGCN5/TRRAP histone acetyltransferase complex co-activates BRCA1 transactivation function through histone modification.
J Biol Chem. ,  (281) , 20-26  (2006)
原著論文7
Shiina H, Matsumoto T, Igarashi K, et al
Premature ovarian failure in androgen receptor-deficient mice
Proc Natl Acad Sci U S A. ,  (103) , 224-229  (2006)
原著論文8
Kuwatani M, Ikarashi Y, Iizuka A, et al
Modulation of acute grft-versus-host disease and chimerism after adoptive transfer of in vitro-expanded invariant Vα14 natural killer T cells
Immunol Lett. ,  (106) , 82-90  (2006)
原著論文9
Imataki O, Heike Y, Ikarashi Y, et al
Efficient EX vivo Expansion of Vα24+ NKT Cells Derived From G-CSF-mobilized Blood Cells
J Immunother. ,  (29) , 320-327  (2006)
原著論文10
Kanno J, Aisaki K, Igarashi K, et al
"Per cell" normalization method for mRNA measurement by quantitative PCR and microarrays
"Per cell" normalization method for mRNA measurement by quantitative PCR and microarrays ,  (64) , 1-14  (2006)
原著論文11
Fujimoto T, Kubo K, Aou S.
Prenatal exposure to bisphenol A imparis sexual differentiation of exploratory
Prenatal exposure to bisphenol A imparis sexual differentiation of exploratory Brain Res ,  (1068) , 49-55  (2006)

公開日・更新日

公開日
2013-04-02
更新日
-