大量出血時の止血能の評価と輸血療法に関する研究

文献情報

文献番号
200637073A
報告書区分
総括
研究課題名
大量出血時の止血能の評価と輸血療法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-医薬-一般-028
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高松 純樹(名古屋大学医学部附属病院 輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター 輸血管理室)
  • 稲田 英一(順天堂大学医学部附属病院 麻酔科)
  • 高本 滋(愛知医科大学医学部輸血部 輸血)
  • 西脇 公俊(名古屋大学医学部附属病院 麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
手術中の大量出血は術中死亡の最大原因であるが、それを未然に防ぐ“止血のための輸血治療”法は確立されていないのが現状である。本研究はまず、術中に大量出血をきたすことの多い基礎疾患・術式についてレトロスペクティブな調査研究を行い、大量出血をきたしやすい患者背景と止血能の状態について明らかにすることを目的とする。さらに術中大量出血時の血小板および血液凝固因子の量的・質的評価を詳細に行って出血量と止血能の相関関係を明らかにし、希釈性凝固障害の本体を解明するとともに、真に止血能の改善を図ることのできる適切な輸血治療の確立を最終的な目標とする。
研究方法
まず術中の大量出血症例の実態を把握するため、各研究施設において平成17年1月から平成18年12月までの2年間、術中に循環血液量を上回る大量出血をきたした症例、およびMAP製剤20単位以上の大量輸血を要した症例をレトロスペクティブに調査した。調査項目は、年齢・性別、疾患名、術式、術前状態、出血量、輸血量、術前・術中の血液凝固検査データ、術中循環動態の異常の有無、ICU滞在日数、生命予後などである。以上の調査により、大量出血をきたすことの多い基礎疾患および術式について明らかにするとともに、大量出血につながりやすい血液凝固異常の状態について検討を行った。
結果と考察
術中大量出血(大量輸血)をきたした症例の基礎疾患として多かったのは、胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術、肝硬変合併肝臓癌の摘出術、肝硬変および肝臓癌に対する生体肝臓移植術であった。胸部大動脈瘤患者では約3分の2にFDPおよびD-dimerの上昇を認めた。これらの疾患が大量出血をまねきやすい理由として、胸部大動脈瘤症例では術中に使用する人工心肺装置による血小板の量的・質的な異常に加え、瘤局所における線溶亢進を主体としたDICの存在が考えられた。また肝硬変症例においては、脾機能亢進による血小板数の低下および蛋白合成障害による凝固因子の低下が出血傾向をまねいていると推測された。しかし実際には、術中の大量出血時に血液凝固能の評価が行われている症例は非常に少なく、止血のための適切な輸血治療が行われている症例はごく一部に限られていると考えられた。
結論
術中大量出血および大量輸血症例の多くは、胸部大動脈瘤、肝硬変合併肝臓癌、および生体肝臓移植症例であった。大量出血をきたした症例では、術前から血液凝固異常を認めることが多かった。しかし、術中の大量出血時に血液凝固能の評価が行われている症例は非常に少ないことが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2007-08-21
更新日
-