薬物体内動態支配因子のファーマコゲノミクスに基づく医薬品開発評価

文献情報

文献番号
200637048A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物体内動態支配因子のファーマコゲノミクスに基づく医薬品開発評価
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-医薬-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋史(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 樋坂 章博(東京大学 医学部附属病院)
  • 北山 丈二(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ファーマコゲノミクス(PGx)の実用化が強く期待されるP-450代謝酵素について、医薬品開発において収集すべき情報を科学的理論構築に基づいて再構成して提案することを目的とする。平成16年度はCYP2D6酵素の*10変異について重点的に検討した。また、CYP酵素の代謝寄与率と活性変化を考慮し、薬物間相互作用を網羅的に予測する枠組みを構築した。
研究方法
CYP2D6は医薬品の20-25%の代謝に関わる重要な酵素であり、80種以上の遺伝多型が知られる。*10変異は東アジア人でアリル頻度が約50%と非常に高く、活性が低下するが、その程度を系統的に調べた研究はない。今回、基質として重要な9種の薬物を選択し、変異型酵素を用いて、その活性低下をin vitroで評価するとともに、in vivoへの予測性を検証した。薬物間相互作用については、100報以上の臨床研究報告を基盤とし、CYPの選択的基質あるいは阻害剤と併用した結果を特に重視して基本的パラメータを求め、他の多くの相互作用を網羅的に予測する方法論を構築した。
結果と考察
CYP2D6による代謝活性は*10変異により著名に減少し、その低下の割合は73-91%に及んだ。予測されるin vivoクリアランスの低下は50-80%程度と計算され、実際の報告と適合した。特にtamoxifenについては、薬効の本体と考えられる代謝物endoxifenの生成が*10変異により減少し、薬効が半分程度に減ずると予測された。相互作用については、CYP3A4、2D6、および2C19を介する相互作用がこの方法で良く予測できることが確かめられた。
結論
東アジア人ではCYP2D6の活性を完全に欠損する変異は少なく、従ってその遺伝子検査の有用性が軽視されているが、*10変異の頻度と活性低下の程度から見て、重要性が再認識されるべきと考えられた。特にtamoxifenは乳がんの治療に重用され、用量の最適化の必要性が論議されるべきであろう。相互作用については、この方法の精度が確認されたことにより、今後、薬物代謝酵素やトランスポーターに遺伝子変異を持ち、活性の変化した患者に対して、より適切な処方設計を可能とする理論的基盤が得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-06-19
更新日
-