有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究

文献情報

文献番号
200637034A
報告書区分
総括
研究課題名
有害事象に関与する薬物動態相互作用に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H17-医薬-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 充生(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 北條 泰輔(国立がんセンター 中央病院)
  • 杉山 雄一(東京大学大学院 薬学系)
  • 頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
トランスポーターを介した薬物相互作用については各国添付文書での情報提供の解析を、抗がん剤併用療法についてはトラスツズマブによる心障害及びInfusion reaction(IR)発生状況に関する抗がん剤併用との関連性を明らかにする。また、トランスポーターによる細胞膜透過過程における薬物間相互作用を定量的に予測するための評価方法の確立、並びにヒト薬物代謝酵素等の誘導を制御する複数の核内受容体を培養細胞に共発現させた培養細胞系の確立を試みる。
研究方法
トランスポーターを介した薬物相互作用については日米英の添付文書と公表文献情報との比較・検討を行った。国立がんセンター中央病院ではトラスツズマブ投与歴を有する乳がん患者の診療録及びオーダリングシステムを2001年6~12月までの期間、321名について調査した。一方、全摘出されたヒト腎組織から調製した組織切片並びにヒト薬物トランスポーターの過剰発現系を用いた輸送実験を行った。また、レポーター遺伝子と核内受容体のPXRおよびVDRの発現プラスミドをヒト培養細胞に導入し、転写活性を測定した。
結果と考察
トランスポーターの記載は各国での一致は少なく、また有害事象報告は添付文書に殆ど反映されていなかった。トラスツズマブの前治療歴や併用薬剤で心障害発生割合に違いはなかった。IR発現率は約30%確認され、ステロイド剤を有する抗がん剤前投薬群では、IRは小さい傾向が見られた。一方、薬物トランスポーター実験では、種々薬剤による阻害定数を測定し、臨床投与量で得られる非結合型薬物濃度で薬物トランスポーター機能を阻害する薬剤を見出した。また、HepG2にVDRとPXRを共発現させCYP3A4遺伝子の転写活性を調べたところ、リガンド非依存下のPXRはVDRによる転写活性を抑制した。
結論
トランスポーターに関する情報は、今後の研究結果を適切に添付文書に反映する必要がある。トラスツズマブの心障害は前治療歴や併用薬剤の差異には依らず5%程度の発生割合を有し、またIRリスクの予防法としてステロイド剤の前投薬の選択も一案と考えられた。腎排泄過程の薬物間相互作用には、管腔側の排出輸送を阻害するものも含まれる。OATP1B3による肝取り込み阻害も薬物間相互作用を生じる要因となる。PXRとVDRを共発現させた場合、それぞれを単独で発現させた場合のCYP3A4遺伝子の転写と異なる特徴を示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-