文献情報
文献番号
199700270A
報告書区分
総括
研究課題名
厚生統計情報の国際的情報発信戦略の基盤確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
林 謙治(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は厚生統計情報の国際的情報発信戦略の基盤整備確立の方向性を確定することを目的としている。我が国は従来国内の健康問題を解決するために政策上の必要から厚生統計情報の収集、分析に努力してきた。一方、経済発展の結果、健康へのニーズが多様化し、かつ国際交流の環境の変化から諸外国との情報交換が重要な課題となってきている。感染症情報の交換、高齢化に係わる健康指標、行政指標の国際比較、途上国の情報の信頼性等の把握を通して我が国の国内問題に役立てると同時に国際貢献にも資することを目的とする。
研究方法
1.欧米諸国における国際情報の発信並びに交流に関するシステムについて研究する。アメリカについてはCDC等を対象に、ヨーロッパについてはECの保健医療部門、OECD等を対象に調査を行う。2.アジア諸国を対象に情報整備について調べると共に技術移転の可能な分野を特定する。3.国際情報発信基地としての日本の基盤整備状況について調査する。対象は厚生省統計情報部、JICA、SEAMIC等である。
結果と考察
1.情報先進国における情報戦略に関する研究
本年度はアメリカについて調査を行った。アメリカでは1970年代後半より、新しい行政課題の取り込みおよび地方分権による業務移管等の背景から社会調査の効率的統合再編情報の標準化・法整備を進めてきた。その成果の具体例として、例えばVital StatisticsにおいてはCD-ROMの頒布(データと統計分析パッケ-ジ)がされるようになり、疫学疾病統計ではCDC WONDERを通じて、国内、国際情報(AIDS情報を含む)ともアクセス可能となった。また、保健医療サービス統計は医療サービス、技術の評価結果を国民に提供するようになった。国際保健情報システムの構築は主としてCDCの保健統計センタ-の機能に負うところが大きいが、それを可能ならしめたのは国内の情報基盤整備およびGateway設置による国内情報の海外へのSpill Overととらえることができる。CDCの保健統計センタ-の国際部門を担当する2室が設置されている。その1つである国際統計室は(1)国際機関等との統計プログラム調整(2)国際協力としての統計活動センター(分析、国際比較、研究情報の提供)を担当している。もう1室の国際保健プログラム室は50名前後の職員を国際保健医療プロジェクトに派遣し、情報収集を行うと同時にそれらの情報を援助政策にフィードバックする役割を担っている。
2.わが国の国際協力における情報交流の現状
国内の地域保健活動と同様、国際保健活動においても情報の収集が活動の出発点になることは言うまでもない。しかしながら、国際保健活動の場は外国であるだけに情報の収集は容易ではない。また、情報は活動開始前の企画立案に有用なものとして収集することが望ましいばかりでなく、活動開始後も必要に応じて情報収集に努め、全体の内容とリンクさせることが重要である。本研究において国際保健専門家の情報ニーズについて調査した。
情報収集で困難を感じた内容については、特に計画段階では「情報が整理されていない」、「信頼性に関わる資料がない」そして「情報の所在が分らない」などの情報収集の基本に関わるような困難さが挙げられているが、評価段階になると国内でも現地協力国でも「情報の入手まで時間がかかる」、「情報が整理されていない」など情報入手に関わる手間が問題となっている。
次に専門家が必要としている情報の内容および必要の程度を5段階で評価し、各段階を点数として加重平均を算出した。点数が5点の時は是非必要で、1点の時は不用である。
計画段階ではいずれの情報も高い点数となっており、特に「保健行政組織に関する情報」、「保健医療政策に関する情報」、「疾病統計に関する情報」および「相手国専門家リスト」等が必要性が高いことがわかる。
これに対し、評価段階では相対的に点数の高い情報は計画段階とほぼ同様であるが、点数が低下する傾向にある。特に「一般行政組織に関する情報」、「人口動態に関する情報」および「保健行政組織に関する情報」はすでにプロジェクト運営を通して知っているためと思われるがその必要性は一段と低い。以上から、情報収集のプライオリティが明確となった。
3.わが国からの情報発信の方向性について
わが国から情報発信する場合その量は膨大であり、その中から当然情報の選択が必要になってくる。例えば政策研究について考えると発展途上国にとって現存する情報の利用方法と可能な開発すべき情報は何かを問題によって知ることが重要となると思われる。
そこであるテ-マに関しての情報についてその所在、或いは内容についての統合した情報があり、キ-ワ-ドによって統合された情報が現れれば大いに役立つと思われる。このように医療或いは公衆衛生情報を重要なテ-マ毎に統合し分類し直すことも一つの方法と思われ1例として感染症を挙げてみたい。
感染症についてはその量と質が必要であるが、人の健康に関して常に対応が求められるので、年次、年、月、日を通しての感染症の発生とその死亡に関する量が最初に求められよう。さらに何処で発生したかを示す地理的情報、また何時発生したかを示す日時の時間的経過に関する情報と共に速度、病原菌、発生源、発生経路に関する情報が必要となる。感染症全体の情報の統合と或いはある特定の病原菌に関する情報の統合が必要である。
a)感染症による死亡・・・・人口動態統計(厚生省大臣官房統計情報部)
b)感染症の罹患率、有病率の年次、月別・・・・伝染病統計(厚生省統計情報部)
c)感染症特にウィルス性疾患、結核、性病、疾患名とその時間的 経過
・・・・結核、感染症サ-ベイランス週報、月報、年報(厚生省保健医療局)
d)結核、感染症サ-ベイランス、或いは法定伝染病等の時間的、地理的情報
・・・・都道府県地方衛生研究所
e)食中毒とその原因菌・・・・食中毒統計、地理的情報と時間的経過に関する情報は 都道府県地方衛生研究所
f)疾患の臨床、治療に関する時間的経過またその予後については担当病院の情報
e)その他病原菌等の速報・・・・保健所、地方衛生研究所、国立研究所、大学、病院 等
以上のように情報源情報をテーマ別に整理すれば、国内ばかりでなく海外からも利用価値が高いものと思われる。
本年度はアメリカについて調査を行った。アメリカでは1970年代後半より、新しい行政課題の取り込みおよび地方分権による業務移管等の背景から社会調査の効率的統合再編情報の標準化・法整備を進めてきた。その成果の具体例として、例えばVital StatisticsにおいてはCD-ROMの頒布(データと統計分析パッケ-ジ)がされるようになり、疫学疾病統計ではCDC WONDERを通じて、国内、国際情報(AIDS情報を含む)ともアクセス可能となった。また、保健医療サービス統計は医療サービス、技術の評価結果を国民に提供するようになった。国際保健情報システムの構築は主としてCDCの保健統計センタ-の機能に負うところが大きいが、それを可能ならしめたのは国内の情報基盤整備およびGateway設置による国内情報の海外へのSpill Overととらえることができる。CDCの保健統計センタ-の国際部門を担当する2室が設置されている。その1つである国際統計室は(1)国際機関等との統計プログラム調整(2)国際協力としての統計活動センター(分析、国際比較、研究情報の提供)を担当している。もう1室の国際保健プログラム室は50名前後の職員を国際保健医療プロジェクトに派遣し、情報収集を行うと同時にそれらの情報を援助政策にフィードバックする役割を担っている。
2.わが国の国際協力における情報交流の現状
国内の地域保健活動と同様、国際保健活動においても情報の収集が活動の出発点になることは言うまでもない。しかしながら、国際保健活動の場は外国であるだけに情報の収集は容易ではない。また、情報は活動開始前の企画立案に有用なものとして収集することが望ましいばかりでなく、活動開始後も必要に応じて情報収集に努め、全体の内容とリンクさせることが重要である。本研究において国際保健専門家の情報ニーズについて調査した。
情報収集で困難を感じた内容については、特に計画段階では「情報が整理されていない」、「信頼性に関わる資料がない」そして「情報の所在が分らない」などの情報収集の基本に関わるような困難さが挙げられているが、評価段階になると国内でも現地協力国でも「情報の入手まで時間がかかる」、「情報が整理されていない」など情報入手に関わる手間が問題となっている。
次に専門家が必要としている情報の内容および必要の程度を5段階で評価し、各段階を点数として加重平均を算出した。点数が5点の時は是非必要で、1点の時は不用である。
計画段階ではいずれの情報も高い点数となっており、特に「保健行政組織に関する情報」、「保健医療政策に関する情報」、「疾病統計に関する情報」および「相手国専門家リスト」等が必要性が高いことがわかる。
これに対し、評価段階では相対的に点数の高い情報は計画段階とほぼ同様であるが、点数が低下する傾向にある。特に「一般行政組織に関する情報」、「人口動態に関する情報」および「保健行政組織に関する情報」はすでにプロジェクト運営を通して知っているためと思われるがその必要性は一段と低い。以上から、情報収集のプライオリティが明確となった。
3.わが国からの情報発信の方向性について
わが国から情報発信する場合その量は膨大であり、その中から当然情報の選択が必要になってくる。例えば政策研究について考えると発展途上国にとって現存する情報の利用方法と可能な開発すべき情報は何かを問題によって知ることが重要となると思われる。
そこであるテ-マに関しての情報についてその所在、或いは内容についての統合した情報があり、キ-ワ-ドによって統合された情報が現れれば大いに役立つと思われる。このように医療或いは公衆衛生情報を重要なテ-マ毎に統合し分類し直すことも一つの方法と思われ1例として感染症を挙げてみたい。
感染症についてはその量と質が必要であるが、人の健康に関して常に対応が求められるので、年次、年、月、日を通しての感染症の発生とその死亡に関する量が最初に求められよう。さらに何処で発生したかを示す地理的情報、また何時発生したかを示す日時の時間的経過に関する情報と共に速度、病原菌、発生源、発生経路に関する情報が必要となる。感染症全体の情報の統合と或いはある特定の病原菌に関する情報の統合が必要である。
a)感染症による死亡・・・・人口動態統計(厚生省大臣官房統計情報部)
b)感染症の罹患率、有病率の年次、月別・・・・伝染病統計(厚生省統計情報部)
c)感染症特にウィルス性疾患、結核、性病、疾患名とその時間的 経過
・・・・結核、感染症サ-ベイランス週報、月報、年報(厚生省保健医療局)
d)結核、感染症サ-ベイランス、或いは法定伝染病等の時間的、地理的情報
・・・・都道府県地方衛生研究所
e)食中毒とその原因菌・・・・食中毒統計、地理的情報と時間的経過に関する情報は 都道府県地方衛生研究所
f)疾患の臨床、治療に関する時間的経過またその予後については担当病院の情報
e)その他病原菌等の速報・・・・保健所、地方衛生研究所、国立研究所、大学、病院 等
以上のように情報源情報をテーマ別に整理すれば、国内ばかりでなく海外からも利用価値が高いものと思われる。
結論
国際的情報発信という意味で先進国であるアメリカが現在あるシステムを構築するに致った背景は情報技術が飛躍的に進歩したことと政治的には行政の分権化に対応するためであった。その結果情報のSpill overとして国際情報の発信につながっている。現在わが国でなしうることは国際保健医療協力を念頭におきつつ途上国情報を収集して発信すること、もう1つは国内情報をテーマ別に整理し情報源情報を発信することが重要であると思われる。
公開日・更新日
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