厚生統計情報の収集・利用総合サポートシステムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
199700269A
報告書区分
総括
研究課題名
厚生統計情報の収集・利用総合サポートシステムの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大杉 茂治(財団法人日本システム開発研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松山正弘(財団法人日本システム開発研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日、国は国民・企業からの申請・届出手続きの電子化を進める方針を強く推進している。また、厚生省としても、各種厚生統計について、可能な限り発生源に近いところで日常的に電子化し、オンライン収集などによって迅速化・効率化を図る方向を打ち出している。以上の背景のもとで、本研究は、厚生統計につき、特にデータ収集局面の電子化を進めるにあたっての課題を整理するとともに、その実現可能性を明らかにしようとするものである。
研究方法
まず、現在の厚生統計全般を概観して、収集の電子化の観点から特徴を整理し、その中から、当面の電子化検討モデルの対象となる統計2種を選択した。次にこれら統計につき、その業務実態を関係部局へのヒアリングにより調査した。他方、統計収集にかかわる最近の技術動向につき、米国等での事例も参考として調査・整理し、厚生統計へ適用の可能性を検討した。以上に基づき、厚生統計収集の電子化の一般的な要件を整理するとともに、2つのモデル統計についてシステム化イメージを作成した。
結果と考察
厚生統計は全体として107種類、調査票様式は約370に達する。これらを収集の電子化という観点から見ると、調査対象が個人であるか機関であるか、また特定されているか不特定であるか、調査対象数の規模、調査票・調査項目の複雑さの程度、調査のサイクル(週、月、四半期、1~4年)、収集ルートとこれに関与する機関(報告者、調査員、保健所、都道府県、厚生省)などが、着目点となる。収集の電子化(通信利用を含む)が比較的容易に実現できる条件としては、調査対象が特定され、かつ、調査サイクルが1月程度である統計に絞られる。そのような統計のうちから、「薬事工業生産動態調査」「医療施設調査・病院報告」の2つをシステム化検討のモデルとして選択した。これらについて業務実態の分析を行った結果、業務面でも、調査票書式・収集ルート面でも、比較的システム化しやすい条件にあると考えられる。しかし、100に及ぶ大部分の厚生統計は、調査周期が長い、調査客体が特定しない、調査量が小さい、など、在来概念からすると収集の電子化に適さない分野に属する。なお、統計によっては、調査対象数が都道府県によって極端なバラツキが見られるという特徴がある。他方、統計収集にかかる技術動向を調査・検討した結果、通信における暗号化・認証・電子署名の技術の進展、電子メールによる統計調査、WWWによる調査システム、モバイルコンピュータ、小型携帯端末の利用、米国における統計収集システムの手法(CASIC)、統計のワンストップサービス(連邦統計)、など、注目すべきものが見られる。以上の状況を踏まえ、厚生統計収集の電子化及び通信利用にかかる課題を検討した結果、システム化にあたっての主要な要件は次のように整理できる。1)社会一般の報告者が容易かつ正確に電子報告が行え、収集側の職員等がこれを受付け審査できるシステムを提供すること。このシステムは、報告手段として、媒体・通信の両方に対応できるとともに、簡易に開発・保守でき、かつ報告者等に配布できるものでなければならない。同時に、電子報告ができない報告者等に対する代替手段を用意する必要があり、その場合の収集側の入力負担軽減も考慮しなければならない。2)公衆回線を経由して報告される場合の本人確認、データの同一性、セキュリティ確保にかかる技術的方法を、統計業務に適した適切なレベルで定めること。なお、法令上は、押印の扱いを解決しなければならない。また、厚生省の内部システムが汚染されないような防護策を講ずる必要がある。3)収集データを安全かつ負担の少ない方式で管理すること。
これについては、統計収集にかかる地方公共団体と国の法令上の権限・責任を考慮しつつ、ネットワークとデータベースシステムの最適な技術構成を検討しなければならない。4)統計収集の対象者が許認可手続きの対象者である場合は、もとの許認可手続き自体の電子化を考慮に入れること。5)その他、調査項目の標準化と統一コード化及び多種の統計への汎用的・総合的な運用を考慮すべきこと。以上の検討に基づき、前記モデル2統計について、システム化イメージを作成したが、その要点は、次のとおりである。1)入力システムとしては、EXCELなどの汎用的なツールを利用した簡易なものとするが、集計など基本的なチェック機能を持たせる。報告提出方法として、フロッピーディスク及び電子メールの2方式対応とし、プログラム配布も同様とする。なお、電子メール方式の場合は、過去データやコード表も回線を通じて受領できるものとする。押印が法令上省略できない場合は、表紙のみ郵送という方法が考えられる。電子報告の代替手段としては、統計調査員による入力のほか、FAXによる提出を認め、その場合の入力は受付機関において行う方法が考えられる。2)公衆回線による報告を厚生省がメールサーバーを設置して直接受信する方法も考えられるが、管理負担及び厚生省内部システムの防護を考慮すると、直接の受け口としてはプロバイダーを利用し、そこから受付行政機関が随時取り込む方法がよいと思われる。本人確認、データの同一性確認及びセキュリティの確保については、ID、パスワード、電子メールアドレス番号のほか、データの暗号化により目的を達することができると考えられる。なお、フリーダイヤル化によって、電子報告の促進を図ることも考えられる。3)受付機関は、電子報告データを取り込み、或いは電子的な方法以外で提出された報告を入力するシステムと受付データを審査するシステムを持つ。審査にあたっては、過去データなども参照できるとともに、締切前は修正等が柔軟に行えるものとする。審査済データは、WISH内に設けた中央受付データベースへ転送し、物理的には集中管理する方式が管理上適当と思われる。但し、その閲覧・修正等は、法令の権限に合わせる。締切後は、本省のとりまとめ部署が受付データを引き上げ、一括審査後、統計システムへデータを引き渡す。4)2つのモデルはいずれも許認可・届出された者を対象とする統計調査であり、これら事務自体の電子化によって、一貫した効率化が見込まれる。5)システム開発の準備として、まず、基本設計と平行してパイロットシステムを作り、報告・審査・集約・配布・保守の各局面のテストを行うこと、これを都道府県・事業者にデモしてその合意と協力を得ることが重要と思われる。なお、初期データの整備も先行しなければならない。
結論
モデルとした「医療施設調査・病院報告」及び「薬事工業生産動態調査」についてはいずれも、今日確立している技術が利用でき、かつ、行政上の問題も少ないので、前記の準備作業を適切に行えば、比較的早期に収集の電子化を実現でき、十分な効果を上げうると考える。なお、現行規則は、紙での提出を義務付けているので、他の電子化移行例にならって、この点の改正が必要となる。併せて、ベースとなる許認可手続き自体の電子化に取り組むことが望まれる。他方、サイクルが長い、対象者が一般個人であったり不特定である、テーマが調査の回ごとに異なる、など在来の概念ではシステム化に適さないと考えられる統計については、米国のCASICなども参考にし、個別対応ではなく、多様な方式の組み合わせと総合的な運用ができるシステムの工夫によって解決できる可能性がある。

公開日・更新日

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