副作用の発現メカニズムを考慮した対応方策に関する研究

文献情報

文献番号
200637020A
報告書区分
総括
研究課題名
副作用の発現メカニズムを考慮した対応方策に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-024
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 和秀(九州大学大学院薬学研究院・医療薬科学部門・薬効解析学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、上市されているカルシウム拮抗薬が膵臓β細胞からのインシュリン分泌を抑制するか否かを明らかにし(新しい副作用とそのメカニズム・予防法の提唱)、ついで、L-type Ca Channelとは独立した新しいインシュリン放出メカニズムを探索し、それに基づく副作用治療法を提案することである。本年度は、ATP受容体刺激によるインシュリン放出メカ二ズムについてモデル細胞MIN6を用いて詳細に検討した。
研究方法
MIN6 細胞を、5 × 105 cells / well となるよう24 well plate に播種し、DMEM medium を加えて全量 1 ml / well とし5-7 日間培養する。ほぼ90%程度に増殖が達した状態で medium を除去し、HBSSで wash 後、2.2 mM Glu / HBSS( 3 ml/ well )を加えて2 時間の pre incubation を行う。その後、medium を除き、各種刺激とする溶液を3 ml/wellで添加し5 時間の incubation を行う。反応終了時にmedium 1 ml/well を回収し、その上清中のインシュリン濃度をELISA法により測定した。
結果と考察
グルコース誘発インシュリン分泌に対するATP受容体の作用は2相性であり、低濃度(1M)では増強し、高濃度(100M)では逆に抑制した。受容体サブタイプの関与をアゴニストやアンタゴニストを用いて検討した結果、増強作用はP2X5およびP2X6の可能性が考えられ、抑制作用はP2Y1の可能性が高まった。これまで、様々な動物実験を用いた成績が報告されているが、ある論文ではインシュリン分泌を抑制したとされ、別の論文では逆に増強したとされ、互いに矛盾していたが、今回の報告でその矛盾は見事に解決された。この増強のかなりの部分は電位依存性Ca2+チャネル依存性であったが、電位依存性Ca2+チャネル以外の経路も関与すると考えられる。一方、P2Y1受容体を介するグルコース誘発インシュリン分泌の抑制は非常に著明であり、過剰なインシュリン分泌を制御するという重要な役割をATPが担っている可能性が考えられる。
結論
ATP受容体は様々な形で膵β細胞の機能維持において重要な役割を果たしていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200637020B
報告書区分
総合
研究課題名
副作用の発現メカニズムを考慮した対応方策に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-024
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 和秀(九州大学大学院薬学研究院・医療薬科学部門・薬効解析学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 永松 信哉(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床的に用いられるCaチャネル拮抗降圧剤は、膵β細胞機能を抑制し、糖尿病治療薬であるスルフォニルウレア剤の効果を減弱させる可能性がある。本研究の目的は、上市されているカルシウム拮抗薬が膵臓β細胞からのインシュリン分泌を抑制するか否かを明らかにし(新しい副作用とそのメカニズム・予防法の提唱)、ついで、L-type Ca Channelとは独立した新しいインシュリン放出メカニズムを探索し、それに基づく副作用治療法を提案することである。
研究方法
膵β細胞の調整・培養、Fura-2AM負荷細胞を用いた細胞内カルシウムイメージング、TIRFM(total internal reflection fluorescence microscopy)法によるインスリン分泌の時間的・空間的解析、膵β細胞からのperifusionと分泌インスリン量の定量(RIA) 、MIN6 細胞培養とELISA法によるインシュリン濃度測定は既報どおり行った。
結果と考察
臨床上頻繁に用いられているカルシウム拮抗降圧薬の膵β細胞における作用を検討した結果、ニフェジピンはグルコース刺激による[Ca2+]iの上昇を完全に抑制し、インスリン分泌も同様に抑制した。グルコース誘発インシュリン分泌に対するATP受容体の作用は2相性であり、低濃度(1μM)では増強し、高濃度(100μM)では逆に抑制した。受容体サブタイプの関与をアゴニストやアンタゴニストを用いて検討した結果、増強作用はP2X5およびP2X6の可能性が考えられ、抑制作用はP2Y1の可能性が高まった。この増強のかなりの部分は電位依存性Ca2+チャネル依存性であったが、電位依存性Ca2+チャネル以外の経路も関与すると考えられる。一方、P2Y1受容体を介するグルコース誘発インシュリン分泌の抑制は著明であり、過剰なインシュリン分泌を制御するという重要な役割をATPが担っている可能性が考えられる。
結論
ATP受容体は様々な形で膵β細胞の機能維持において重要な役割を果たしていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生理的条件ではグルコースが常に存在しているため、我々は、グルコース存在下のインシュリン分泌に対するATPの影響を調べ、その結果、P2Xを介してインシュリン分泌を増強することを見いだした。この増強のかなりの部分は電位依存性Ca2+チャネル依存性であったが、電位依存性Ca2+チャネル以外の経路も関与すると考えられる。一方、P2Y1受容体を介するグルコース誘発インシュリン分泌の抑制は著明であり、過剰なインシュリン分泌を制御するという重要な役割をATPが担っている可能性がある。
臨床的観点からの成果
ATP受容体は様々な形で膵β細胞の機能維持において重要な役割を果たしていると考えられるため、そしてATPは常にインシュリンと共に分泌されていることも知られており、インシュリン分泌阻害を回避する有効な手だてや医薬品が本研究の成果から見いだされる可能性がある。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-