植込み型生命維持装置の安全対策に関する研究

文献情報

文献番号
200637019A
報告書区分
総括
研究課題名
植込み型生命維持装置の安全対策に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
笠貫 宏(東京女子医科大学循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中茂夫(医療法人 狭山中央病院)
  • 杉浦敏文(静岡大学 電子工学研究所)
  • 杉浦伸一(名古屋大 医学部)
  • 加納 隆(埼玉医科大学 保健医療学部)
  • 平尾見三(東京医科歯科大学 医学部)
  • 豊島 健(日本メドトロニック株式会社 カーディアックリズムディジーズマネージメント)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ペースメーカー、除細動器等の植込み型生命維持装置は、患者を健常者同等まで回復させ、QOLを著しく改善できる。しかし、本質的には重篤な基礎疾患を有した患者が病院の監視を離れることになり、装置に不具合が生じると、直接生命を脅かされる宿命にある。当然これらは高度な技術によって製造されているが、工業製品に変わりはないため、技術的かつ経済的限界もある。本研究では、このような不具合に対し、科学的根拠に基づいた分類、評価法を制定するとともに、不具合の情報蓄積伝達システムを構築して、医療従事者、装着患者、行政さらに国民に至るまで、情報を共有することで、全者が納得できる、不具合に対するより合理的な対処法の確立を目指している。
研究方法
植込み型生命維持装置に不具合についての患者の啓蒙活動計画作成のため、患者側を代表する機関として、日本心臓ペースメーカー友の会の役員レベルの人々と協議を行った。また、不具合等が報道された場合、現状で不満な点、改善すべき点等について協議を行い、それらの改善案を列挙するとともに、具体的な改善策を作成した。また、不具合の情報蓄積伝達システムに持たせるべき機能を列挙し、提案した。
結果と考察
患者達の不満に、不具合の報道から自分達に情報が伝わるまでの時間がかかりすぎるといものがあった。医療機関で、各患者の緊急性に応じた優先順位が決められ、一般の患者に伝わるのが遅れるためと判断された。これらの不満および転居等の理由で医療機関からの連絡網が途切れてしまった患者の救済のため、一定のサイトにアクセスすると、その時点で対応中の不具合事例を確認できるインターネットシステムを提案した。また、この情報から、患者が自分との関連を適確に判断できるよう、ペースメーカー手帳等の一部の共通化を提案した。不具合の情報蓄積伝達システムは事例の羅列ではなく、キーワードによる検索機能を持たせ、特定の植込み手技に派生しやすい不具合等を検索できるようにすることを提案した。
結論
不具合発生時に患者が確実容易に自分の装置との関連を知ることの出来る、インターネットやペースメーカー手帳を活用した環境を整えた上で、患者に対する啓蒙活動を開始することとした。また、検索機能を持たせることで、貴重な情報が埋もれず、適切な情報が取り出せる不具合の情報蓄積伝達システムとすることが重要であると結論付けられた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200637019B
報告書区分
総合
研究課題名
植込み型生命維持装置の安全対策に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
笠貫 宏(東京女子医科大学循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中茂夫(医療法人 狭山中央病院)
  • 杉浦敏文(静岡大学 電子工学研究所)
  • 杉浦 伸一(名古屋大 医学部)
  • 加納 隆(埼玉医科大学 保健医療学部)
  • 平尾見三(東京医科歯科大学 医学部)
  • 豊島 健(日本メドトロニック株式会社カーディアックリズムディジーズマネージメント事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ペースメーカー、ICD等の植込み型生命維持装置は、患者を健常者同等まで回復させ、QOLを著しく改善できる。しかし、本質的には重篤な基礎疾患を有した患者が病院の監視を離れることになり、装置に不具合が生じると、直接生命を脅かされる宿命にある。当然これらは高度な技術によって製造されているが、工業製品に変わりはないため、技術的かつ経済的限界もある。本研究では、このような不具合に対し、科学的根拠に基づいた分類、評価法を制定するとともに、不具合の情報蓄積伝達システムを構築して、医療従事者、装着患者、行政さらに国民に至るまで、情報を共有することで、全者が納得できる、不具合に対するより合理的な対処法の確立を目指している。
研究方法
植込み型生命維持装置に不具合について、ペースメーカ協議会会員企業から過去10年間の不具合事例の提出を受け、用語の統一を図り、不具合発生率の算出を行うと共に、各不具合によって患者にもたらされる症状の重症度に応じて、各不具合の客観的評価アルゴリズムを考案し、実際に取られた対応策の深刻度と比較検証した。また、不具合に関し、患者に対する啓蒙活動計の内容を検討した。
結果と考察
実際の不具合発生率は1.38から6,931/百万台・月に分布しており、クラスⅡ以上の自主回収策を取った事例は、この中央に位置しており、発生率が深刻度を表しているわけではないことが分かった。これに対し、患者症状をもとにした客観的評価法では、深刻度の高いものが分離され、さらに深刻度の低いものの発生頻度が高いことを示した。また、患者側から一定のウェブサイトをアクセスすることで、自分の使用している装置に、対応中の不具合が発生しているかどうかを確認できるシステム、およびキーワード検索可能で、医師が各手技に関連し、どのような不具合が生じやすいかを確認できる不具合情報蓄積システムを提案した。
結論
植込み型生命維持装置の不具合に関し、用語を統一することで、客観的評価方法を導入することが可能であることが示唆された。また、対応中の不具合の有無を患者側から適確に確認できる環境を整え、システムを準備し、患者を啓蒙することで、転居等の理由で医療機関からの連絡が途絶えてしまった患者の救済が可能となることを指摘した。また不具合情報蓄積システムは事例の羅列に終わらずに、キーワード検索等で、医師が各手技に関連し、どのような不具合が生じやすいかを確認できるようにすることの重要性を指摘した。

公開日・更新日

公開日
2007-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の不具合事例の取扱い上では、あまり扱われていなかった、不具合の発生率を信頼性工学に基づいて算出する手法を導入した。しかも単なる不具合発生率のみでなく、患者に現われる症状の重症度に基づいて不具合の深刻度を評価する手法に修正して用いている。これは、信頼性工学のFEMA手法を拡張して応用したもので、従来の不具合の判定法と同等の判定を客観的、科学的に判断するに適した手法であって、国内外を問わず、きわめて斬新な概念である。
臨床的観点からの成果
本研究では、不具合事例蓄積伝達システムに、適切なキーワードによる検索機能を持たせることの重要性を説いている。これは、このシステムを単に不具合事例の羅列されるシステムとするのでなく、不慣れな手技等を採用せざるを得ない状況になった医師に、その手技で注意すべき不具合の原因を示唆するなどして、不測の不具合発生の防止にも役立つものとするため、重要な要素といえる。
ガイドライン等の開発
本研究の中ではガイドラインの形では扱われていないが、不具合事例が発生した場合、転居などの理由で、万一医療機関側からの伝達経路が途絶えてしまっている患者の救済に役立つ手法を提案している。これを実現するための環境が整い次第、これを含めた患者に対する啓蒙活動を開始することで、不具合発生時に備えるべき、患者向けのガイドラインを完成することができる。
その他行政的観点からの成果
昨今では、不具合の届出に際し、不具合の発生率の明記を求められるようになるなど、本研究で提示した指標が実際の行政にも反映されつつある。
その他のインパクト
第20回日本心臓ペーシング・電気生理学会学術大会の電磁干渉・不具合教育セミナーは、医療界、製造販売業界、患者代表、行政を加えて意見交換を行うセミナーであった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
第20回日本心臓ペーシング・電気生理学会学術大会、電磁干渉・不具合教育セミナー1件、一般演題1件 第21回日本不整脈学会学術大会、教育セッション1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
第20回日本心臓ペーシング・電気生理学会学術大会、電磁干渉・不具合教育セミナー1件、一般演題1件 第21回日本不整脈学会学術大会、教育セッション1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-