安全な血液製剤を確保するための新興・再興感染症等の診断、除去・不活化法の研究

文献情報

文献番号
200637016A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液製剤を確保するための新興・再興感染症等の診断、除去・不活化法の研究
課題番号
H16-医薬-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 久實(北海道赤十字血液センタ-)
  • 佐藤 博行(福岡赤十字血液センタ-)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス1部)
  • 武田 直和(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス3部)
  • 米山 徹夫(国立感染症研究所 ウイルス2部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興・再興感染症等の血液製剤の安全性に脅威となっているウイルスの診断、除去・不活化法の研究を行い、安全な血液製剤の確保を目指した。実際のウイルスを用いた評価を行い、培養できないウイルスでは除去・不活化法の評価系を開発した。また、新しいウイルス不活化法の開発も行った。
研究方法
食品の分野で既に実用化されている高圧処理による滅菌法が血液製剤のウイルス不活化法として応用できるか検討した。また、3つのHAV培養株に対する加熱処理による不活化の効果を評価した。SARSウイルスの除去・不活化法の検討は一般の施設では困難なのでマウス肝炎ウイルスがモデルウイルスとして利用できるか検討した。一方、培養できないE型肝炎ウイルス( HEV)では構造タンパクをバキュロウイルスの系で発現させることによってウイルス様粒子(VLP)を作製し、粒子内に存在するE型肝炎ウイルス特異的な遺伝子を定量することによって除去の評価系を検討した。診断系ではB19遺伝子増幅のための検体処理法の検討を行った。また、ウエストナイルウイルスではフラビウイルス属のウイルスの塩基配列を詳細に検討し、広範囲にフラビウイルス属のウイルスを検出できる系の開発を実施した。
結果と考察
高圧処理(3000気圧)によってB19や日本脳炎ウイルスは不活化された。血漿タンパクは失活する因子もあったが全く活性に影響を受けない因子もあった。また、同じHAVにおいて株間で不活化に抵抗性の差が認められ、今後、他のウイルスを含めた評価に用いるウイルス株の適正な選択が必要と考えられた。一方、マウス肝炎ウイルスは検討した加熱処理、S/D処理、ウイルス除去膜処理等においてSARSウイルスから得られた結果と同等であり、モデルウイルスとして用いることができると考えられた。HEVの検討では35nmのポアサイズを持つウイルス除去膜によって約5log除去可能であった。診断系では、加熱による検体処理によって精製したDNAを用いた場合と同等の感度のB19検出法が開発できた。また、WNVやデングウイルスだけでなく広範囲にフラビウイルス属のウイルスを検出できる核酸増幅法を開発した。
結論
加圧による新しいウイルス不活化法の検討を行い、さらに、安全な血液製剤を確保するための診断、除去・不活化法の研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200637016B
報告書区分
総合
研究課題名
安全な血液製剤を確保するための新興・再興感染症等の診断、除去・不活化法の研究
課題番号
H16-医薬-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 久實(北海道赤十字血液センタ-)
  • 佐藤 博行(福岡赤十字血液センタ-)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス1部)
  • 武田 直和(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス3部)
  • 米山 徹夫(国立感染症研究所 ウイルス2部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興・再興感染症等の血液製剤の安全性に脅威となっているウイルスの診断、除去・不活化法の研究を行い、安全な血液製剤の確保を目指した。
研究方法
結果を参照
結果と考察
1. 食品の滅菌技術として実用化されている高圧処理を血液製剤のウイルス不活化法として応用できるか検討した。圧力、加圧時間、加圧回数等を変えてウイルスの不活化と血漿タンパクの活性について解析した。3000気圧の高圧処理によってパルボウイルスB19(B19)や日本脳炎ウイルスは約5 log(10万分の一)不活化したが、第9因子やアンチトロンビンIII、フィブリノ-ゲンの活性は非加圧の血漿と同等であった。
2. SARSウイルス、ウエストナイルウイルス(WNV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、パルボウイルスB19(B19)の各ウイルスについて除去・不活化を検討した。SARSウイルスとWNVは血漿分画製剤の製造工程で導入されている除去・不活化法である加熱処理、界面活性剤処理(S/D)、ウイルス除去膜処理によって検出感度以下にまで除去・不活化された。HAVでは、株によって不活化に対する抵抗性が異なることを明らかにし、他のウイルスを含めた評価に用いるウイルス株の適切な選択の重要性を認識した。
3. 上皮性細胞株を用いたB19の感染系を確立し、B19の不活化を検討した。加熱処理ではモデルウイルスと異なり、容易に不活化された。上皮系細胞株は血球系細胞株より安定性があり、有用な方法である。
4. HBVはこれまでin vitroの感染系がなかった。HBVを酵素処理すると肝癌細胞株に吸着するようになり、細胞内でHBVの環状二重鎖DNAが合成された。環状二重鎖DNAを指標としたHBVの不活化評価系を作製し、加熱処理によって3log不活化されることを明らかにした。
5. E型肝炎ウイルス(HEV)のウイルス様中空粒子を用いてHEV除去を評価できる系を作製した。
6. パルボウイルスB19検出のために、検体の簡便な前処理法とLAMP法を組み合わせて簡便・迅速・高感度なB19-DNA検出法を開発した。 
7. WNVの株間の多様性に対応できる核酸増幅法を開発した。さらにフラビウイルス属のウイルスの塩基配列を詳細に検討し、WNVやデングウイルスを含む広範囲にフラビウイルスを検出できるPCR法を開発した。
結論
安全な血液製剤を確保するための診断、除去・不活化法の研究を実施し、多くの有用な知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WNVの株間の多様性に対応できる核酸増幅法を開発し、さらにWNVやデングウイルスを含むどのフラビウイルスでも検出可能なPCR法を開発した。SARSウイルス、ウエストナイルウイルス(WNV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、B19の各ウイルスについて除去・不活化を検討し、SARSウイルスとWNVは加熱処理、界面活性剤処理(S/D)、ウイルス除去膜によって効率良く除去・不活化できることを明らかにした。また、高圧処理が血液製剤の新しい病原体不活化法となる可能性も明らかにできた。
臨床的観点からの成果
WNVはいくつかの株が存在し、これらを全て検出できる系がなかったが、本研究班で株間の多様性に対応できるPCRの検出系を開発することができた。これによって米国以外の国で感染したWNVを広く検出できるようになり、血液製剤の安全性ばかりでなく、臨床診断する上で有用な成果と考える。また、高圧処理による血液製剤の病原体不活化の可能性が示され、今後の進展によっては血漿分画製剤の安全性を向上させるだけでなく、輸血用血液の不活化にも応用できる可能性もある。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
一般にHAVは種々の不活化法に抵抗性を示すと言われているが、複数のHAV株を用いて異なる機序による不活化法を検討したところ、株間によって不活化法に対する抵抗性が異なることを発見した。血液製剤の不活化法の評価を行なう場合、これまで株間の相違について検討されてこなかったが、評価する不活化法毎に適切な株を選択する必要性が示唆された。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
33件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-