ワクチン製造株の品質管理に関する研究

文献情報

文献番号
200637014A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチン製造株の品質管理に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 篤(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 沼﨑 啓(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 大槻 紀之(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 大隈 邦夫(化学及血清療法研究所 品質管理部)
  • 仁田 義弘(武田薬品工業 生物製剤部)
  • 李 富雄(北里研究所 製造第3部門)
  • 五味 康行(阪大微生物病研究会 研究技術部6)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,670,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
複製する度に変異を蓄積するウイルスを原材料にして製造される弱毒生ウイルスワクチンの品質を常に同一にすることは困難である。できる限り一定品質のワクチンを製造することは医薬品としてのワクチンには必須な事であり、そのために医薬品GMPがある。変異ウイルスの出現量を制御するには継代歴を規制する以外に手段はなく、それがシードロットシステムである。本研究班では現状の製造履歴の枠内でシードロットシステムを構築することをめざした。
研究方法
(1)シードロットシステムの導入の検討:弱毒生麻疹、風疹、おたふくかぜワクチンの製造現場にシードロットシステムを導入することを目的に、暫定マスターシード、ワーキングシード、プロダクションシードをどの様に設定するを検討した。
(2) 導入案の具体的検討:製剤毎に製造承認株から数えて何継代目のものがワーキングシード、プロダクションシードに設定でき、ワクチンとしてどの程度の期間供給可能なのかを試算した。
(3) シード管理技法の検討:均一なウイルス集団を維持しているか否かを検証するために特定部位の塩基置換の存在確認、遺伝子増幅技法を利用した変異遺伝子の定量的検出方法、ウイルスプラックサイズあるいは温度感受性による管理、病原性マーカー、温度感受性マーカー等の方法を検討した。
結果と考察
現状の生ワクチン製造と生物学的製剤規準の枠組みの中で、同一継代歴のワクチンを安定的に市場に出すべく各製造所の麻疹、風疹、おたふくかぜ生ワクチン製剤にシードロットシステムを導入する案を作った。ワクチンに含まれるウイルス集団の同等性を検証する手段を検討したが、方法ならび規格値を設定するまでには至らなかった。これら規格試験の設定と供に、GMPでの記載整備手順、システム導入後の検定基準の見直し等が今後の検討課題として残った。
結論
シードロットシステムを製造現場に導入することが可能で、それにより同一品質の生ワクチンを安定的に供給可能であった。しかし、システムの運用を検査する手段については、さらに高感度にするなどの工夫が必要であった。

公開日・更新日

公開日
2009-07-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200637014B
報告書区分
総合
研究課題名
ワクチン製造株の品質管理に関する研究
課題番号
H16-医薬-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 篤(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
研究分担者(所属機関)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 斉藤 義弘(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 沼﨑 啓(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 海野 幸子(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 大槻 紀之(国立感染症研究所 ウイルス第3部)
  • 大隈 邦夫(化学及血清療法研究所 品質管理部)
  • 仁田 義弘(武田薬品工業 生物製剤部)
  • 李 富雄(北里研究所 製造第三部門)
  • 五味 康行(阪大微生物病研究会 研究技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝的に変化し易い性質を持つウイルスを原材料として製造される生ウイルスワクチンを可能な限り一定品質にすることは、医薬品として必須な事である。一定の手順と製造環境を保つことにより製造過程の再現性を上げようとしたのが「医薬品GMP」である。一方、ウイルスは専らゲノムの複製時に変異し、それが複製毎に蓄積するので製造の再現性だけでは品質的同等には不十分である。そこで、ウイルスの継代歴を規制するのが「シードロットシステム」である。本研究班では現状の製造内にシードロットシステムを構築することをめざした。
研究方法
(1)国産弱毒生麻疹、風疹、おたふくかぜワクチンの製造現場にシードロットシステムを導入することを目的に、暫定マスターシード、ワーキングシード、プロダクションシードをどの様に設定するかを検討した。
(2) 製造承認株から数えて何継代めのものがワーキングシード、プロダクションシードに設定でき、実際のワクチンとしてどの程度の期間、安定供給が可能なのかを試算した。
(3) シードロットシステムにより均一なウイルス集団を維持しているか否かの検証方法及び、その規格値の設定について検討した。
結果と考察
本研究班では、製造各所社のワクチン株の継代履歴をもとに「製造承認株からの継代は5代以内」という生物学的製剤規準を壊さない範囲でシードロットシステムを実行する方策を各社、各生ワクチン製剤毎に設定した。十数年から数百年くらいの規模で同一種由来、同一継代歴のワクチンが製造できることわかった。シードロットシステムが実際に機能しているかを検証するための品質管理手法についても検討したが、感度的に不十分で規格値設定には至らなかった。
結論
現状の生ワクチン製造と生物学的製剤規準の枠組みの中で、製造承認株から数えて同一継代歴のワクチンを安定的に市場に出すことが、麻疹、風疹、おたふくかぜ生ワクチンで可能であった。ワクチンに含まれるウイルスの集団としての同等性を検証する手段を検討したが、方法ならび規格値を設定するまでには至らなかった。これら規格試験の設定並びにGMPでの記載整備手順、システム導入後の検定基準の見直し等が今後の検討課題として残った。

公開日・更新日

公開日
2009-07-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200637014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
同一品質の生ウイルスワクチンを安定的に供給することは、国民の健康保持上重要なことである。現在の製造方法と生物学的製剤規準の枠組みの中で、製造承認株から数えて同一継代歴のワクチンを安定的に市場に出すべく麻疹、風疹、おたふくかぜ生ワクチン製剤に導入する案を作った。
臨床的観点からの成果
ワクチン接種後の副反応は、ワクチン接種により得た利点に比べて小さい場合には許容される。生ウイルスワクチンは、対象者が主に子供であり、その被接種者数も多い事から、品質的安定性には十分に気をつける必要がある。医薬品GMPに加えてシードロットシステムを導入することにより製品の品質的安定性が向上し、変異ウイルスに由来する副反応を無くし得る。
ガイドライン等の開発
生物学的製剤基準の枠内で、ワクチン株に対して暫定マスターシード、ワーキングシード、プロダクションシードの設定を行った。ワクチンの品質を検証するためにワクチンに含まれるウイルス集団の管理技法の検討を行った。
その他行政的観点からの成果
医薬品GMPにシードロットシステムが加わることにより、製品のロット間の品質的同等性はさらに向上する。一方、わが国の生物学的製剤は全ロット検定を行い、それに合格しなければ展示、販売できない。しかし、これらシステムにより生物学的製剤のロット間格差が無くなるとするならば、検定項目の見直し、全ロット検定システムそのものも見直しが可能になる。
その他のインパクト
国産ワクチンの品質が向上し、全ロット検討等の国家検定項目が見直されれば、国内ワクチン製造所の国際競争力が向上するものと思われる。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-