DNA塩基配列変化を直接検出する遺伝毒性試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200636043A
報告書区分
総括
研究課題名
DNA塩基配列変化を直接検出する遺伝毒性試験法の開発に関する研究
課題番号
H18-食品-若手-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • ぴーたー ぐるーず(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内因性、外因性の遺伝毒性物質によってどのような突然変異が誘発されるかを定量的に解析することは、ヒトへの発がんリスクを評価する上で重要である。本研究では、制限酵素処理と1分子PCR法を組み合わせた直接検出法を用いて新しい遺伝毒性試験法を開発することを目的とする。
研究方法
TP53遺伝子第6イントロン内にある標的配列(制限酵素TaqI の切断部位)を含む909塩基対のDNAを、dUTPの存在下、5’末端をビオチン標識したプライマーを用いてヒト培養細胞株Nalm-6のゲノムDNAから増幅した。増幅したdUを含むDNA断片を磁気ビーズと結合させプローブDNAを調製した。エチルニトロソ尿素(ENU)で処理したNalm-6細胞からゲノムDNAを抽出し、5種類の制限酵素で切断した。切断したDNA断片をプローブDNAとハイブリダイズさせ、形成された二本鎖DNAを磁石により沈殿させて、標的DNAを選択的に回収した。標的/プローブ二本鎖DNAを制限酵素TaqIで処理した。標的配列(TCGA)はTaqIにより切断され、変異した標的配列を含むDNAだけがTaqIによる切断を免れる。TaqIによる変異体の選択を5回繰り返した後、uracil DNA glycosylaseによりdUを含むプローブDNAを分解した。回収された標的DNAの数と、TaqIで分解されなかった標的DNAの数を、それぞれ定量的PCR法により求めた。
結果と考察
文献的にはゲノムDNA(120μg)から10EXP7から10EXP8の標的DNAが回収可能とされているが、現在のところ回収効率は10EXP4から10EXP5であり、ENU処理した細胞を用いても変異体を検出するに至っていない。無処理細胞の突然変異頻度は塩基当たり10EXP-8と予想され、ENU処理を行っても10EXP-6以下と予想される。したがって、変異体を検出するためには回収効率を上げることが必要である。現在、(1)プローブDNAと標的DNAのハイブリダイゼーションの条件検討(2)細胞あたりのコピーが約100コピーあるミトコンドリアDNA中の標的配列を使い、変異体を検出する工夫を進めている。また本法を開発した米国ワシントン州立大学Bielas博士のもとを訪問し手法の改善に努めている。
結論
表現型に依存せずに突然変異を直接検出する方法の確立を目指し、手法の改善に努めている。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-