食品中の遺伝毒性を有する有害物質のリスク管理に資する総合研究

文献情報

文献番号
200636040A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の遺伝毒性を有する有害物質のリスク管理に資する総合研究
課題番号
H18-食品-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
今井 俊夫(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 紅林 秀雄(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 渋谷 淳(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品からのアクリルアミド(AA)摂取量は、成人よりも小児の方が高いと推定されている。本研究では、動物の胎児・乳幼児から春機発動期におけるAAの体内動態及び毒性を成熟期と比較し、小児を含むヒトに対するリスク管理に資するデータを構築する。更に、遺伝毒性を指標としたAAの毒性抑制物質の探索によりAAの毒性発現機序を明らかにし、代謝の種差を考慮したリスク管理に寄与する。
研究方法
[代謝] 4週齢の雌ラットに[2,3-14C]AAを2.5mg/kg体重の用量で1回強制経口投与した。[神経、精巣毒性] ラットの妊娠10日目から離乳時まで、AAを50、100、200ppmの用量で飲水投与した。[発がん性] AAの乳幼児期投与によるラット多臓器中期発がん性試験法の実施に先立ち、予備実験として出生時から12週間、AAを10、20、40ppmの用量で飲水投与した。[遺伝毒性] ヒトリンパ芽球細胞株AHH-1とTK6、ならびにCYP2E1を高発現する遺伝子導入細胞h2E1ver2、CYP2E1のほかCYP1A2、CYP2A3、CYP3A4、mEpoxide hydrolaseを高発現するMCL-5を用いた。
結果と考察
[代謝] 投与72時間後までに尿中に80%、糞中に8%、呼気中に4%の排泄が確認された。組織中放射能濃度は、大部分の測定臓器で30分後には最高値に達し、血液では72時間後も高値が確認されたが、毒性標的臓器の坐骨神経などに特に高い集積性はみられなかった。 [神経、精巣毒性] 児動物の雄では50ppm以上、雌では100ppm以上において、出生直後より用量に依存した体重増加抑制がみられたが、明らかな神経毒性および精巣毒性作用は認められなかった。[発がん性] いずれの群でも、体重、飲水量などに明らかな影響はみられなかったが、40ppm群の雄で精巣毒性、雌では成熟期投与では報告のない心臓毒性を示唆する所見が得られた。[遺伝毒性] AHH-1に対しh2E1ver2では、AAの遺伝毒性は増強されず、TK6に対しMCL-5では、AAによる強い遺伝毒性を示したことから、AAの代謝活性化にCYP2E1以外の代謝酵素の関与していることが示唆された。
結論
AAの幼若期投与による体内動態及び各種毒性に関する研究成果の一部には、ライフステージによりAAの毒性標的あるいは感受性に違いのある可能性を示唆する結果が含まれ、遺伝毒性を指標とした実験では、代謝活性化と毒性発現との関連性を明らかにし得るデータが蓄積されつつある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-