食品添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究

文献情報

文献番号
200636036A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性評価のための戦略構築に関する研究
課題番号
H18-食品-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
能美 健彦(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 本間正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 山田雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 松田知成(京都大学)
  • 長尾美奈子(共立薬科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
13,748,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、遺伝毒性の閾値形成にDNA修復がどのような役割をはたしているかを明らかにするとともに、酸化的DNA損傷の分析法、遺伝毒性検出用gpt deltaトランスジェニックラットのバリデーションを進め、遺伝毒性発がん物質の閾値形成機構に関する基盤的研究を推進する。
研究方法
Ames試験菌株TA1535、TA100の酸化的DNA損傷に対する修復能(mutM, nth, nei)を欠損した変異株を作製した。ヒト細胞TK6の染色体上に一カ所だけ制限酵素I-SceIの切断部位を導入した。欧州アカデミーなどの意見をはじめ、文献検索により国際情報を収集した。5種のDNA付加体の安定同位体を合成しLC/MS/MSを用いた同位体希釈法により5成分の一斉分析を行った。gpt deltaラットに臭素酸カリウムを投与し腎臓と肝臓の突然変異を解析した。
結果と考察
バクテリアおよびヒト細胞を用いた研究から、DNA修復とDNA損傷の乗り越えに関わるDNAポリメラーゼが、遺伝毒性の閾値形成に関与していることを示唆した。閾値に関する国際動向の分析に基づき、DNAに直接作用する物質であってもDNA修復等により閾値が形成されることを提言した。低用量域での遺伝毒性作用を検討するため、グリオキサール、アクロレインおよびクロトンアルデヒドなどにより生ずる酸化DNA損傷を一斉分析しうるLC/MS/MS法を確立した。gpt deltaトランスジェニックラットに臭素酸カリウムを投与し、発がんと遺伝毒性の標的臓器が一致することを示した。
結論
遺伝毒性の閾値形成には、DNA修復系やDNAポリメラーゼの働きが重要な役割をはたしていると考えられる。バクテリアや哺乳類細胞を用いた分子生物学的アプローチと、高感度LC/MS/MSによるDNA損傷の定量分析を組み合わせて、化学的基礎を持った閾値研究を行うことが重要である。また国際動向の分析、個体レベルでの遺伝毒性閾値研究もさらに推進する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-