新規培養細胞系を用いたアレルゲン性評価試験法に関する研究

文献情報

文献番号
200636030A
報告書区分
総括
研究課題名
新規培養細胞系を用いたアレルゲン性評価試験法に関する研究
課題番号
H17-食品-若手-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中村 亮介(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、アレルギー反応において重要な役割を果たすマスト細胞が発現する高親和性IgE受容体(FcεRI)の架橋に基づくユニークな活性化メカニズムに着目し、単純にIgEとアレルゲンとの結合を調べる従来の試験法とは全く異なる原理に基づいた新しいアレルゲン性評価試験法を開発し、これにより食品の加熱・消化等の加工によるアレルゲン性の変化を定量的に解析できる系を確立することで、食品の安心・安全確保に貢献しようというものである。
研究方法
ヒトFcεRIαサブユニットの細胞外ドメインとヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞内ドメインとのキメラ受容体遺伝子を作製した。転写因子Elk1によりレポーター分子ルシフェラーゼの発現が誘導されるHeLa細胞(HLR-Elk1細胞)に上記遺伝子を導入し、共焦点レーザ顕微鏡によりヒトIgEの結合を解析した。キメラ受容体の発現および細胞内シグナル伝達を解析するため、ウェスタンブロッティングおよびリン酸化MAPキナーゼ(MAPK)の可視化解析を行なった。また、デュアルルシフェラーゼアッセイによりElk1活性を測定した。
結果と考察
キメラ受容体遺伝子(細胞内にEGFRドメインを持つものと持たない陰性対照の2種)を作製しHLR-Elk1細胞に発現させたところ、いずれの場合も細胞表面へのヒトIgEの特異的な結合が観察された。細胞膜貫通ドメインをFcεRIα由来にした場合は受容体の発現は良好でなく、EGFR由来の場合に顕著であった。細胞内にEGFRドメインを持つキメラ受容体は、単量体ヒトIgEの感作および抗ヒトIgE抗体による架橋に伴い、強く自己リン酸化され、MAPKのリン酸化を誘導した。また、感作に用いたヒトIgEの濃度に応じたルシフェラーゼの発現が認められた。一方、抗ヒトIgE抗体の有無によるルシフェラーゼ発現の差は認められなかった。また、感度は高いものの、バックグラウンドにあたるヒトIgEの添加に依存しないルシフェラーゼ発現も認められた。
結論
ヒトの新規培養細胞系を用いた、ヒトIgEとFcεRIとの相互作用を検出することのできる新しいアレルゲン性評価試験法の基礎を確立した。しかし、架橋シグナルをより選択的に検出するためにも、ベクターの変更や宿主細胞の変更等により、本評価系のさらなる改善が求められる。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200636030B
報告書区分
総合
研究課題名
新規培養細胞系を用いたアレルゲン性評価試験法に関する研究
課題番号
H17-食品-若手-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中村 亮介(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、アレルギー反応において重要な役割を果たすマスト細胞が発現する高親和性IgE受容体(FcεRI)の架橋に基づくユニークな活性化メカニズムに着目し、単純にIgEとアレルゲンとの結合を調べる従来の試験法とは全く異なる原理に基づいた新しいアレルゲン性評価試験法を開発し、これにより食品の加熱・消化等の加工によるアレルゲン性の変化を定量的に解析できる系を確立することで、食品の安心・安全確保に貢献しようというものである。
研究方法
ラット培養マスト細胞株RBL-2H3細胞にヒトFcεRIαを発現させた系、および、ヒトFcεRIαとヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)とのキメラ受容体を転写因子Elk1によりレポーター分子ルシフェラーゼの発現が誘導されるHeLa細胞(HLR-Elk1細胞)に発現させた系の二つを作製した。前者の系では、精製ヒトIgEおよびアレルギー患者血清中IgEを感作させ、抗IgE抗体により受容体を架橋することにより細胞を活性化し、誘導される脱顆粒反応により放出される酵素活性を定量した。後者の系では、ヒトIgEを感作して抗IgE抗体により受容体を架橋することで誘導される細胞内シグナル伝達を解析するとともに、ルシフェラーゼの発現を定量した。
結果と考察
ヒトFcεRIαを安定発現するRBL-2H3細胞は、IgEの架橋により、細胞内カルシウム応答などの結果、IgEの濃度依存的に脱顆粒反応を誘導できることが分かった。しかし、特異的抗原による脱顆粒を検出することは困難であった。また、キメラ受容体遺伝子を作製しHLR-Elk1細胞に発現させたところ、ヒトIgEは細胞表面に強固に結合し、単量体IgEの感作に伴い、受容体自己リン酸化やMAPキナーゼのリン酸化を通じ、IgEの濃度依存的にルシフェラーゼの発現が誘導された。一方、抗ヒトIgE抗体の有無によるルシフェラーゼ発現の差は認められなかった。また、感度は高いものの、バックグラウンドにあたるヒトIgEの添加に依存しないルシフェラーゼ発現も認められた。
結論
新規培養細胞系を用いた、ヒトIgEとFcεRIとの相互作用を検出することのできる新しいアレルゲン性評価試験法の基礎を確立した。だが、受容体の架橋をより選択的に検出できるよう、宿主細胞やベクターの変更など、本評価系のさらなる改善が求められる。

公開日・更新日

公開日
2007-07-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ラット培養マスト細胞株にヒト高親和性IgE受容体(FcεRIα)を発現させた系、および、FcεRIαと上皮増殖因子受容体とのキメラ受容体を作製してルシフェラーゼアッセイ用のヒト子宮頸部癌由来細胞に発現させた系の二つを確立した。これらの系を用い、抗体を用いてIgEを検出する従来法とは全く異なる、生きた細胞のシグナル伝達に基づきIgEの感作および架橋を高感度に検出するという、より生理的なアレルゲン性評価試験法を開発した。
臨床的観点からの成果
アレルギー患者血清中のIgE濃度は、血清中に共存するさまざまな阻害因子(抗FcεRI自己抗体や抗IgE自己抗体等)のため、必ずしも臨床症状を反映しないことが知られている。本法は、実際にFcεRIに結合可能なIgEを定量できるという点において、単純にIgEとの結合を検出する従来法に対する大きな利点を持つ。また、従来法では加工に伴う食品のアレルゲン性を十分に調べられない恐れもあったが、本法はその点を克服しうる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Teshima, R., Amano, F., Nakamura, R., et al.
Effects of polyunsaturated fatty acids on calcium response and degranulation from RBL-2H3 cells.
International Immunopharmacology , 7 (2) , 205-210  (2007)
原著論文2
Nakamura, R.
Chimeric EGF receptor that detects IgE-binding/crosslinking.
Journal of Allergy and Clinical Immunology , 119 (1) , 97-97  (2007)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-