ダイオキシンの乳幼児への影響その他の汚染実態の解明に関する研究-特に母乳中のダイオキシン類濃度の経年的変化と乳幼児発育発達に及ぼす影響-

文献情報

文献番号
200636017A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシンの乳幼児への影響その他の汚染実態の解明に関する研究-特に母乳中のダイオキシン類濃度の経年的変化と乳幼児発育発達に及ぼす影響-
課題番号
H16-食品-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
多田 裕(東邦大学 医学部新生児学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センタ-)
  • 松浦 信夫(聖徳大学 人文学部児童学科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における母乳中のダイオキシン類濃度を一定の場所を定めて測定し汚染状況とその変化を検討すると共に母乳中のダイオキシン類が乳幼児の健康に及ぼす影響を評価する。
研究方法
初産婦から生後30日の母乳約25~50mlの提供を受け、母乳のダイオキシン類濃度を測定した。母乳を採取する地域を岩手県、千葉県、新潟県、石川県、大阪府の5府県とし、これまでの測定値と比較した。母乳測定を行った母親が第2子以降を出産した場合には第2子以降の児が哺乳する母乳中の濃度も測定した。これらの母乳を哺育した児が1歳になった時点で健康診査と採血を行い乳児の健康への影響を評価した。
結果と考察
平成18年度には47検体の母乳を採取した。平成17年度に採取し測定を終了した上記の府県に島根県を加えた6府県の母乳85検体中のダイオキシン類濃度は16.2pg TEQ/gFatであり各地域とも過去の測定値より漸減傾向が認められた。また府県別の測定値の差は小さくなっていた。第2子を出産した後のダイオキシン類濃度は第1子出産後の母乳濃度に低下していた。各府県内の母乳採取を保健所に依頼して採取した場合と医療機関に依頼して採取した場合で測定値に差は認められなかった。1歳時の健康に関しては身体発育、甲状腺機能、免疫、アレルギ-に関し検討したが、ダイオキシンによると考えられる影響は認められなかった。過去に1歳時の検査が終了した後の残余血液を集めて測定した1歳時の血液中のダイオキシン類濃度は4.1~73pg TEQ / gFat、平均40.0pgTEQ / gFatと従来報告されている成人の平均値に比し高値であった。以上の結果から近年のダイオキシン汚染対策により母乳中のダイオキシン類は低下しており地域差も小さくなっていることが明らかになった。乳児の健康への影響も認められなかったが母乳を長期に哺乳している児の血中ダイオキシン類濃度は成人に比し高い値を示す例もあることが明らかになった。
結論
母乳中のダイオキシン類濃度には低下傾向が認められ1歳時点の子どもの健康への影響も認められなかった。しかし母乳からのダイオキシン摂取量の多い児の1歳時の血中ダイオキシン濃度は成人の値より高いことから、今後とも母乳中のダイオキシン汚染の推移と健康への影響を検討していくことが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200636017B
報告書区分
総合
研究課題名
ダイオキシンの乳幼児への影響その他の汚染実態の解明に関する研究-特に母乳中のダイオキシン類濃度の経年的変化と乳幼児発育発達に及ぼす影響-
課題番号
H16-食品-一般-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
多田 裕(東邦大学 医学部新生児学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センタ-)
  • 松浦 信夫(聖徳大学 人文学部児童学科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における母乳中のダイオキシン類濃度を一定の場所を定めて測定し汚染状況とその変化を検討すると共に、母乳中のダイオキシン類が乳幼児の健康に及ぼす影響を評価する。
研究方法
初産婦から生後30日の母乳約25~50mlの提供を受け、母乳のダイオキシン類濃度を測定した。母乳を採取する定点地域は岩手県、千葉県、新潟県、石川県、大阪府、島根県の6府県とし、過去の研究で母乳を採取した東京都にも協力を依頼し、母乳を採取してダイオキシン類等の測定を実施した。母乳測定を行った母親が第2子以降を出産した場合には第2子以降の児が哺乳する母乳中の濃度も測定した。これらの母乳を哺育した児が1歳になった時点で健康診査と採血を行い乳児の健康への影響を評価した。
結果と考察
平成16、17年度に採取した母乳中のダイオキシン類濃度は16.2pgTEQ/gFatであり各地域とも過去の測定値より漸減傾向が認められた。府県別の測定値の差は小さくなっていた。第2子以降の児を出産した後母乳中のダイオキシン類濃度は著しく低下していた。1歳時の健康に関しては身体発育、甲状腺機能、免疫、アレルギ-に関し検討したがダイオキシンによると考えられる影響は認められなかった。測定が終了した血液を集めて測定した1歳時の血液中のダイオキシン類濃度は4.1~95pgTEQ / gFatであった。以上の結果から近年のダイオキシン汚染対策により母乳中のダイオキシン類は低下しており地域差も小さくなっていることが明らかになった。乳児の健康への影響も認められなかったが母乳を長期に哺乳している児の血中ダイオキシン類濃度は成人の平均値に比し高い値を示す児が存在することが明らかになった。
結論
母乳中のダイオキシン類濃度には低下傾向が認められ1歳時点の子どもの健康への影響も認められなかった。しかし母乳からのダイオキシン摂取量の多い児の1歳時の血中ダイオキシン濃度は成人の値より高いことから、今後とも母乳中のダイオキシン汚染の推移と健康への影響を検討していくことが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200636017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国の母乳中のダイオキシン類濃度とその年次変化が明らかになり、乳児が摂取するダイオキシン類の量が明らかになった。また、ダイオキシン汚染が乳児の健康に明らかな影響を与えていないことが明らかになった。さらに母乳の摂取量によっては、成人の平均血中濃度より高濃度の血中ダイオキシン類濃度を乳児も認められることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
定点を定めて測定したダイオキシン類の濃度が低下傾向にあることが明らかになった。また現時点の程度の汚染では乳児の健康に明らかな影響が無いことが明らかになり、母乳哺育の安全性が確認された。近年のアレルギー疾患患児の増加や甲状腺機能異常の頻度増加にダイオキシン汚染が関与していないことも明らかになった。以上より多くの利点がある母乳を安心して推奨出来ることになった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
ダイオキシン対策に対するパンフレットの中に当研究班の研究成果としての母乳中のダイオキシン類の年次推移が引用され、一般への知識の普及に役立った。また、母乳中のダイオキシン濃度の低下傾向は、國のダイオキシン対策が効果をあげていることを示しており、事業の効果に用いることが可能であることを明らかにした。さらに、母乳哺育の推奨を含む母子保健対策に貢献し少子化対策にも成果があった。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Uehara R, Peng G, Nakamura Y,et al
Human milk survey for dioxins in the general population in Japan.
Chemoshere , 62 , 1135-1141  (2006)
原著論文2
Hishinuma A, Fukata S, Nishiyama S, et al
Haplotype analysis reveals founder effects of thyro- globulin gene mutations C1058R and C1977S in Japan.
J Clin Endocrinol Metab. , 91 (8) , 3100-3104  (2006)
原著論文3
H Kaneko、E Matsui、S Shioda、N Kawamoto、Y Nakamura、R Ueharai、N Matsuura、M Morita、H Tada, and N Kondo
Effects of dioxins on the quantitative levels of immune components in infants
Toxicology and Industrial Health , 22 , 131-136  (2006)
原著論文4
小西良昌、田中之雄、堀伸二郎、多田裕
ダイオキシン類による母乳汚染の経年推移
環境化学 , 16 (4) , 677-689  (2006)

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-