労働者の自殺予防に関する介入研究

文献情報

文献番号
200635025A
報告書区分
総括
研究課題名
労働者の自殺予防に関する介入研究
課題番号
H18-労働-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
島 悟(京都文教大学人間学部臨床心理学科)
研究分担者(所属機関)
  • 森 晃爾(産業医科大学)
  • 數川 悟(富山県心の健康センター)
  • 北條 稔(北條医院)
  • 黒木 宣夫(東邦大学医学部佐倉病院精神科)
  • 廣 尚典(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 飯島 美世子(島根大学医学部)
  • 田中 克俊(北里大学医学部産業精神保健学)
  • 井上幸紀(大阪市立大学医学部神経精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,単一施設でなく多施設での共同研究により、自殺対策の効果評価における事業場の情報開示をより容易にすることを目指すものである。また職域における自殺予防対策の有用性に関してエビデンスを出すことを主眼としている。さらに事業場の規模別,地方都市と大都市といった労働者の働く場の違いに注目して、それぞれのモデルを提唱することを志向するものである。
研究方法
1.自殺予防に関するコホート研究:東京都,富山県,大阪府における主として中小規模事業場の事業者および労働者を対象として質問紙調査を実施した。2.抑うつ気分を主訴に精神科受診した労働者を対象とした職業性ストレス状況調査を行った。3.レセプトデータによる労働者のうつ病の実態を調査した。4.「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に関する調査を実施した。5.心の病を持つ労働者の離職後の就労状況に関する調査を行った。6.国内外の労働者の自殺予防対策に関する文献研究を行った。
結果と考察
1.富山県では47.4%の事業場,東京都では72.7%の事業場がメンタルヘルス対策の必要性を感じていたが,メンタルヘルス対策の実施率はそれぞれ7.9%,23.6%であった。心の健康問題による相談・問題事例があった事業場は7.9%,34.5%であった。2.患者群では多くの職業性ストレスが高値を示したが,仕事外要因や家族支援では有意差を認めなかった。3.F2の診断病名により医療機関を受診した組合員は1.7%であった。4.手引きを知っていると答えた者は48.1%であり,周知度は高いとはいえない。また手引きを使用していると答えた者は28.3%,手引きを基に社内の職場復帰に係る規定を整備したと答えた者は17.0%であり少なかった。5.退職後1年以内に正規社員で再就職した者は45例であり,転帰の明らかな対象者の54.2%を占めた。退職後1年以内に非正規社員で再就職した者は15.7%,退職後1年間は無職であった者は30.1%であった。6.抽出された文献は,主に自殺リスクの検討,自殺予防対策の立案,自殺予防マニュアルの作成に関する文献であり,実際に職場における自殺予防対策の効果評価を行った研究は含まれていなかった。
結論
労働者の自殺対策として,一次予防・介入・事後対応が必要とされるが,うつ病を中心とする対策とともに,睡眠障害など関連した病態をも考慮する必要がある。地域で行われているのと同様に,ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチを組み合わせることが有効であり,実施可能であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
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