石綿ばく露による健康障害のリスク評価及びリスクコミニケーションに関する研究

文献情報

文献番号
200635023A
報告書区分
総括
研究課題名
石綿ばく露による健康障害のリスク評価及びリスクコミニケーションに関する研究
課題番号
H18-労働-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
森永 謙二(独立行政法人労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 溥太郎(横須賀市立うわまち病院)
  • 審良 正則(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 高田 礼子(聖マリアンナ医大予防医学教室)
  • 田村 猛夏(独立行政法人国立病院機構奈良医療センター)
  • 安達 修一(相模女子大学芸学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)石綿を吸入したことの医学的証拠として、胸膜プラークの所見は重要である。しかし、経験のない医師の読影では、結核による石灰化陰影や肥満等による肥厚陰影を胸膜プラークと間違えたり、小さな非石灰化/石灰化陰影を見落すことがよくある。これらの胸膜プラークの所見は、現在健康管理手帳の交付対象者となっている。この調査が、今後の健康管理手帳の交付すべき対象者がどの程度いるのかといった推定にも役立つ。
(2)石綿ばく露による健康影響は、社会問題となっている。一般の石綿に対するリスク認識を把握することは、今後のリスクマネジメントやリスクコミュニケーションにおいて重要である。
研究方法
(1)石綿製品製造にかつて従事していた従業員および周辺住民を対象に、胸部エックス線(一部については胸部CT)が行われたが、それらのフィルムを経験ある複数の医師が読影し、胸膜プラークの所見の有無について調査した。対象地域は2ヶ所で、うちひとつは離職者のみを対象、もうひとつは地域住民も対象にした健診で実施された胸部エックス線フィルムである。
(2) 自記式質問票を作成し、石綿問題が大きく取り上げられてきた関西地方と、石綿に関する報道等がそれほど多くない関東地方とで、それぞれ女子大学1校の協力を得て、自記式(無記名)質問票を配布し、その場で記入、回収した。調査は平成18年9月から10月にかけて実施した。
結果と考察
(1)離職者137人の胸部エックス線による胸膜プラーク有所見者は57人(41.6%)で、従事開始時期が早いほど有所見率が高い傾向が見られた。離職者538人、家族84人、出入り業者33人、周辺住民234人を対象とした調査では、胸膜プラークの有所見率は、離職者66.4%、家族40.5%、出入り業者60.6%、周辺住民18.8%であった。石綿肺(1型以上)は離職者の4.8%に認められた。
(2)今年度は女子大学生(関西地区の1校199人、関東地区の1校150人)を対象に石綿に対するリスク認識を把握するためのアンケート調査を実施した。その結果、石綿の情報は“クボタショック”以降知った者が約8割であった。不安の程度は、石綿よりも自動車排ガス、農薬、狂牛病、エイズの方が大きかった。

結論
(1)胸膜プラークの有所見率は、離職者と出入り業者で高く、次いで家族、周辺住民の順であった。また離職者を対象とした調査からは、従事開始時期が早いほど有所見率が高い傾向が見られた。
(2)女子大学生を対象とした石綿に対するリスク認識調査では、不安の程度は、石綿よりも自動車排ガス、農薬、狂牛病、エイズの方が大きかった。

公開日・更新日

公開日
2007-05-14
更新日
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