中皮腫発生に関わる職業性石綿ばく露の研究

文献情報

文献番号
200635021A
報告書区分
総括
研究課題名
中皮腫発生に関わる職業性石綿ばく露の研究
課題番号
H18-労働-一般-001
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 卓巳(独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大西 一男(独立行政法人労働者健康福祉機構神戸労災病院)
  • 井内 康輝(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 木下 博之(兵庫医科大学医学部)
  • 三上 春夫(千葉県がんセンター)
  • 玄馬 顕一(独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院)
  • 山崎 浩一(北海道大学病院)
  • 瀧川 奈義夫(岡山大学医学部・歯学部附属病院)
  • 青江 啓介(独立行政法人国立病院機構山陽病院)
  • 加藤 勝也(岡山大学医学部・歯学部附属病院)
  • 丸山 理一郎(新日鐵八幡記念病院)
  • 豊岡 伸一(岡山大学医学部・歯学部附属病院)
  • 平木 章夫(愛知県がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
21,034,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 石綿ばく露と中皮腫の発生に関して、人口動態調査死亡票により平成16年の死亡例についての調査を行った。一方、中皮腫診断における臨床医と病理医の協議による確定診断を行った。また、石綿ばく露の指標として肺内石綿小体数算定の意義についても検討した。

研究方法
 平成16年に中皮腫で死亡した953例について性別、年齢、予後調査を行った。また、平成15年に死亡した878例ついては、平成17年度に報告した113例とその後追加で画像および標本等を得た合計204例について、臨床的あるいは病理学的に検討を加えて、最終的な中皮腫の確定診断を行った。
 一方、石綿小体数の算定については、一般人250例あるいは肺がん患者33例の肺内石綿小体数を算定した。
結果と考察
 平成16年の中皮腫死亡例は、男性729例、女性224例(男女比 3.25:1)で、年齢は平均70.2歳(6~104歳)であった。生存期間は8ヶ月であり、発生部位別予後では、胸膜原発は10ヶ月で、腹膜は6ヶ月であった。一方、臨床経過及び画像と組織標本(細胞診を含む)を得ることができた204例中総合判断で中皮腫であると確定できたのは166例(81%)であり、肺がんであった例が13例、卵巣がん5例などであった。良性石綿胸水症例の如く非悪性腫瘍例もあった。病理医による診断が有用であるのみならず総合的な判断が必要であった例もあり、臨床医と病理医の連携が不可欠であった。
 また、石綿小体数の算定については肺がん33例中3例が肺乾燥重量1gあたり5,000本以上であり職業性ばく露が疑われたが、一般住民の場合では250例中1例では1,193本の石綿小体が検出されたが、それ以外は1,000本以下であった。
結論
 平成16年に死亡した中皮腫患者の性別(男女比)は3.25:1であり、海外に比較して女性の比率が多い傾向を示した。平均年齢は70.2歳と高齢者が多かった。臨床および病理学的に検討できた204例中、中皮腫であると確定し得た症例は81%であり、約20%は中皮腫でない症例が中皮腫であると診断されていた。確定診断に際しては、臨床医と病理医の協議が大変重要であった。
 石綿ばく露における肺乾燥重量1gあたりの石綿小体数は一般人の場合1,000本以下とするヘルシンキクライテリアの基準は日本人の基準としても有用であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-