地域保健における保健婦等の活動に関する研究

文献情報

文献番号
199700261A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健における保健婦等の活動に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
田中 久恵(杏林大学)
研究分担者(所属機関)
  • 金城マサ子(沖縄県)
  • 池田信子(秋田市)
  • 島内憲夫(順天堂大学)
  • 河合智栄子(愛知県田原町)
  • 湯澤布矢子(宮城大学)
  • 田中久子(埼玉県)
  • 田中久恵(杏林大学)
  • 丸山美知子(国立公衆衛生院)
  • 村山正子(富山医科薬科大学)
  • 吉田雅子(日本医療社会事業協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健法の全面施行に当たり、今求められている地域保健活動のあり方として、住民の視点に立って、A.保健婦等のマンパワーとサービス供給体制の整備、B.住民の健康および保健従事者に関する意識を明らかにする、C.保健婦等の役割機能の明確化、D.保健婦等の資質の向上方策の4つの研究目的を設定し、10分担研究班で行った。
研究方法
上記4つの主課題に沿い、分担研究班毎に方法及び結果の概要を紹介する。
(A-1)離島・小規模町村における保健婦の人材確保定着に関する研究(金城マサ子):市町村長、市町村、保健所保健婦にアンケートを実施、首長、市町村保健婦共、保健活動推進、人事交流、一部事務組合の設置等広域的対応が切実な要望であった。保健所保健婦は条件が整えば交流を希望するものが半数を超える。人材確保として奨学金制度、一部事務組合で対応、離島出身の人材育成などが出された。
(A-2)市町村保健婦の活動領域等に関する研究(池田信子):保健婦リーダーにアンケートを実施した。保健と福祉の統合部署等多様な組織に配属される傾向にある。今後充実したいことは地域保健活動、企画立案、情報収集、係長以上の配置があるところは48%で、職位及び配属に関する満足度は低い。
(B-3)住民の健康に関する相談行動に関する研究(島内憲夫):千葉県内1町の全職員と、5市町の保健婦、住民に調査を行い、気軽に利用できる「総合相談窓口」の設置が期待されている。的確なアドバイスをしてくれる専門職として保健婦、カウンセラーが求められていた。一方住民は家族、友人、次いで医師に相談しており、公的機関はあまり機能していなかった。 
(B-4)義務教育段階における保健福祉に関わる教育に関する研究(河合智栄子):学習用教材の中で保健福祉衛生に関する記載状況を調査した。小学校では健康については水とゴミのみ、中学では保健福祉事業が紹介されていたが、職種としての保健婦の記載があったのは1市のみで、保健婦からの働きかけが必要である。
(C-5)これからの行政組織における保健婦活動のあり方に関する研究(湯澤布矢子):福祉分野に働く保健婦に期待される業務を総合的に検討した。その結果*健康増進予防活動を目指した住民活動の活性化、*健康情報の供給体制整備、*サービスの連続性の保障、*住民関係者と協同した計画策定等の役割があげられた。どの部門に配属されても保健婦の基本的機能は変わりなく、住民が主体的に参画できる仕掛け作りが最も重要である。今後本来の保健活動の水準を落とすことなく、介護保険制度の円滑な実施に向けての体制整備、地域特性に応じた行政課題の取り組みが期待される。
(C-6)新しい地域保健福祉における栄養士の役割に関する研究(田中久子):保健所栄養士活動について、緊急性の高い業務の検討、栄養士活動の質・量的評価を目的に、枠組みモデルを元に業務分析を行った。保健所栄養士の役割は、保健福祉医療の連携に加えて民間も含め広範なネットワーク活動である。また枠組みを作成することで活動の評価と今後の方向性を提示することが可能になった。
(C-7)総合相談窓口におけるケア・コーディネーション機能に関する研究(田中久恵):都内S区1保健福祉センター総合相談窓口の1月間の全相談例を分析した。保健婦は疾病性の高い事例に専門的な機能を発揮している。複数回の相談を重ね、問題が明確化し適切なサービスにたどり着いているが、介護環境が短期間に変化する例も多く即時的な対応は難しく、関係部署との情報の共有等も望まれる。
(D-8)保健婦の調査・研究の資質向上に関する研究(丸山美知子):県保健所及び市町村保健婦を対象に研究の実施状況を調査した。調査研究能力の自己評価、修得したい能力、保健所と市町村保健婦の特性を配慮した研修の意義が明確になり、研修プログラム開発及び研究支援体制について提言を行った。
(D-9)保健婦の保健計画・施策化能力の育成に関する研究(村山正子):全国保健所・市町村のリーダー保健婦に保健計画参画状況及び研修の実状調査を行った。老人、母子の保健計画には参画度が高いが、実施上に様々な研修課題があった。企画調整・保健計画に関わる研修は2~3日程度で行われていた。本研究では研修プログラム案も作成した。
(D-10)地域保健福祉における医療ソーシャルワーカーの資質向上に関する研究(吉田雅子):日本医療社会事業協会員を対象にケアマネジメントの実態を調査した。退院・転院援助、在宅ケア援助にMSWの視点と方法が有効である。MSWの専門性は社会福祉の方法論上の特性にあると確認された。
結果と考察
結論
1.小規模町村の人材確保に一部事務組合の設置等一定の方向性が示された。また今後の地域保健活動の充実にとって保健婦の職位等の向上は不可欠な条件である。2.保健婦等の役割機能に関しては、福祉等多様な部署に配属される保健婦も増える中で、基本的な保健婦本来の活動を基盤に、介護保険制度などの円滑な実施の体制づくり、住民の主体的保健活動への支援が重要である。更に新しい地域保健体制の中で、保健婦および栄養士、医療ソーシャルワーカーの果たす専門機能についても検討された。3.保健婦等の資質の向上に関しては、特に今求められている調査研究能力の開発・向上が必要である。4.住民の保健行動を検討し、主体的な保健活動の推進のために総合相談窓口などの設置、専門職活用について教育現場への働きかけが必要である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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