保健所の機能強化に関する研究

文献情報

文献番号
199700259A
報告書区分
総括
研究課題名
保健所の機能強化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小倉 敬一(千葉県木更津保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉敬一(千葉県木更津保健所)
  • 平田輝昭(福岡県久留米保健所)
  • 野崎貞彦(日本大学医学部)
  • 曾根啓一(新潟県福祉保健部)
  • 植田悠紀子(国立公衆衛生院)
  • 金子仁子(滋賀医科大学医学部)
  • 草野文嗣(滋賀県長浜保健所)
  • 小林勝義(石川県石川中央保健所河北センター)
  • 小林美智子(長野県伊那保健所)
  • 吉崎哲世(埼玉県越谷保健所)
  • 中川昭生(島根県浜田保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健法の全面施行により、公衆衛生行政における国、都道府県、市町村の役割が明確にされ、新たな体制がスタートした。その中で専門的、技術的な拠点としての保健所の担う役割の中で特に機能強化の求められている課題について、強化のあり方を具体的に明らかにすることにより、全国の保健所の今後の活動の活性化に資することを目的とする。
研究方法
保健所の機能強化という共通の課題に対して、11の分担研究がそれぞれ異なったテーマで展開されたため、研究方法は各々の研究毎に特異である。詳細はそれぞれの分担研究報告にゆずるが、全保健所を対象にしてのアンケート調査の分析、一定の条件をもった地域を対象としたアンケート調査によるもの、先進的な地域を対象とした事例調査、モデルを設定しての研究、モデル地区における先駆的、実験的事業の実施とその評価等に大別される。
なお、研究班員間の意思の疎通を図り相互理解を深めると共に指定研究としての統一性
をできるだけ図るため、研究開始初期と終了時期(1997年7 月、1998 年2 月)の2 回、東京で班会議を開催した。その都度、本研究の企画委員である青山英康岡山大学教授にご参加いただき、ご指導ご助言をいただいた。
結果と考察
結果:分担研究毎に研究テーマが著しく異なるため、詳細な結果は各分担研究報告にゆずるが分担研究毎の主な結果を列記すると、1)機能強化のために全国的に、本庁及び保健所の組織、機構の変化が急速に進んでいること、その変化の中心は、福祉部門との連携強化・企画調整部門の新設を含む強化が中心であること、2)保健所職員の企画調整、情報処理分析能力の向上のためのプログラムを作成し、衛生研究所で試行的研修を行い有用であったこと、3)健康教育への受講の有無群別の分析より、今後の健康教育事業を効果的に行う上で、地区組織のメンバーを通した受講の働きかけが重要であること、4)産業保健と地域保健の連携の強化のため、各種のモデル事業を実施した結果、住所地別の継続健康管理ファイルの必要性、世帯単位のアプローチの重要性が明らかにされたこと、5)保健所保健福祉サービス調整推進会議の実施状況についての全国調査から、この会議を通して果たせた保健所の機能、役割は多くの点で一致しており評価指標として用い得ること、6)小規模町村側から保健所に対して期待されている内容は、企画機能(保健計画に対してのアドバイス等)、調整機能(ニーズ理解への働きかけ等)、研究機能(共同研究実施)、教育機能(新人に対する計画的な教育等)であること、7)任意設置とされた保健所運営協議会については、委員構成等、改善を要する点も多いが、調査対象全て(所長、主管部局、協議会委員)において本協議会を必要と認める意見が多いこと、その重要性から廃止した所では再考の必要があること、8)保健所業務をマルチメディアによって疑似体験する自己学習システム(バーチャル保健所)をインターネット上に構築して、地域保健・福祉実習への活用を図る研究で、その有用性を期待できることを明らかにしたこと、9)地域にあった総合的な地域保健サービスの提供のため、母乳哺育推進運動のガイドラインと障害母子QOL評価基準を策定し、そのプロセスを含めヘルスプロモーションの基本指針として活用できたこと、10) 保健所と学校保健の連携状況についての全国的な調査から、50~70% の保健所で、何らかの関わりがもたれていること、もっと連携を強めるべきとの意見を93% の保健所長がもっていることが明らかにされたこと、11) 保健所と市町村の連携のあり方を検討するため17保健所の先駆的事例、27の現地調査を実施し、連携を進めるための必要条件として市町村との協働活動の事業化、協議の場の確保、保健所の力量形成等が抽出されたこと、等である。
考察:今回の11の分担研究の内容は、いずれも地域保健法全面施行後の保健所の機能強化の方向を具体的に示すものであるが、その研究成果はそのまま全国の保健所に応用しうるものから、地域特性を加味してのアレンジが必要なもの、今後、まだまだ試行から実用化への研究の必要なもの等多くの段階のものを含んでいる。しかし、そのいずれも保健所の機能強化を考える際の貴重な手掛かりになるものと推測される。
結論
今回の研究は、同じ課題での研究の3 年目になるが、新しい地域保健体制下における保健所の役割、機能強化の方向を具体的に示す多くの成果をあげてきた。しかし、全国の公衆衛生行政をめぐる状況は混沌としており、特にその中核的役割を果たす専門的な機関である保健所をめぐる情勢の変化はまだ数年は続くものと推測される。引き続いての研究の継続が強く望まれる。

公開日・更新日

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