インシデント報告を活用した事故防止策構築過程の開発と報告者・リスクマネージャー支援に関する研究

文献情報

文献番号
200634125A
報告書区分
総括
研究課題名
インシデント報告を活用した事故防止策構築過程の開発と報告者・リスクマネージャー支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H18-医療-一般-046
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 すが(東京医療保健大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、リスクマネジャー(以下:RM)を支援する活動(フォーラムの開催、メーリングリスト(以下:ML)を通し、日常の医療安全活動の実態とRMの抱える問題、およびRMを支援する上での課題を明確にすることを目的に実施された。
研究方法
質的研究(グループディスカッションおよび、アンケート調査)
結果と考察
参加者(29名:専任・専従RM9名、兼任RM15名、部署内RM5名)の事前調査、グループ討議から、RMの抱える問題は、①RMとしての経験、役割不足への不安、②インシデント報告の分析、フィードバック、情報の共有化、対策への評価が十分でない、③与薬事故、転倒転落に効果的な対策が立てられない、④同じ問題が発生しても改善策が検討されない、⑤職員の意識変革、風土作りへの悩みがある、の5項目に集約された。一方、15の成功事例も提出され、院内で自由に発言できる、発言を期待されるなど、専任RMの役割が院内に浸透されつつあることも明かになった。自己評価アンケートでは、8割以上が医療安全の重要性を認識し、安全管理の実態把握、体制整備、職員教育、インシデント対応の活動を行なっているが、3割は対策に結びつく効果的な分析は行なえていないと評価していた。4ヶ月後のフォーラムでは、①RMの役割として、行政などのガイドラインでは決められない運用課題の判断を求められる、②他のRMがどうしているか、自分の対策が適切かどうかに対し、第三者の評価や助言がほしい、③問題解決には他施設の実態や実施策などの情報提供が効果を発揮する、④フォーラムで効果的と感じた対策は自施設でも取り組み効果を実感している、など、他のRMの活動や経験に基づいた活きた情報を求めていることが明らかになった。一方、MLの活用からは、アクセスは多いが書き込みが少ないなど、情報の提供は求めているが、問いを発し、自らが情報提供者になるという能動的な活動には至っていない実態が明らかになった。背景には、自施設の情報発信へのセキュリティや倫理的不安、RMのおかれた情報環境の不十分な実態が示唆された。
結論
1.RMは日常的な問題解決のために、身近に情報交換できるネットワークの構築を求めている。 
2.ネットワークつくりには情報発信が必要であるが、そのためには、RMに対し、対面的な情報交換の場と情報環境の整備およびセキュリティに対する体系的な情報教育が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-06-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634125C

成果

専門的・学術的観点からの成果
リスクマネージャ(RM)29名の日常活動の実態調査から、①RMは行政などのガイドラインでは決められない運用課題の判断を求められる、②活動に対し第三者の情報や評価、助言が欲しい、③問題解決には他施設の情報提供が効果的、④効果的と感じた対策は自施設でも取り組むなど、RMは身近に情報交換できるネットワークの構築を求めていた。一方、メーリングリストの活用からは、RMは情報の提供は求めているが、自らが情報提供者になるという能動的な活動には至っていない実態が明らかになった。
臨床的観点からの成果
RMの日常課題は、①経験、役割不足への不安、②事故報告の分析、情報共有、対策評価が不十分、③与薬、転倒事故対策、④同じ問題の発生、⑤職員の意識変革、風土作りの5項目に集約された。一方、院内での発言期待、ガイドラインにはない運用課題の判断を求められる立場を実感しており、他施設のRMの情報や第三者評価が欲しいなど、経験に基づいた活きた情報を求めていた。しかし、情報に対し受身であり、問いを発し、自らが情報提供者になるという能動的な活動には至っていない実態が明らかになった。
ガイドライン等の開発
本研究は、RMの実態と支援体制を構築する上での課題を明らかにすることであった。その中では、RMの院内の役割や機能に対する期待は増しているが、RMの活動内容に対し、客観的な評価がないことから、常に不安を感じている状況が明らかになった。その解決方法として、RM自身は他施設のRMの経験に基づいた活きた情報ネットワークを求めていたが、RMの活動は個人情報を含んだ情報処理が主体であることから、情報セキリティ、倫理教育、環境整備の必要性が示唆された。
その他行政的観点からの成果
平成19年3月「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」が提唱されたが、役割や裁量権が医療施設ごとに異なっている中では、業務遂行に不安を抱え、他のRMの経験に基づいた活きた情報ネットワークを求めていた。しかし、中小病院では、兼任RMが多く、IT環境の不備や時間的制約が課題であり、情報セキュリティや倫理的な不安を抱えていることから、今後、RMを教育的・体制的・環境的に支援することは、行政的な使命でもあり、本研究の提言は、医療安全施策の構築に貢献できると考える。
その他のインパクト
本研究で構築したメーリングリストは、今後も継続し、医療機関のRMに対して、情報提供および情報の交流の場として、対象を拡大して活用される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
1) ICTとフォーラムを組み合わせた医療安全管理者の学習支援ネットワーク構築 (予定:医療マネジメント学会)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
メーリングリストは、継続し、拡大する予定である。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-18
更新日
-