死体検案業務の質の確保・向上に関する研究

文献情報

文献番号
200634113A
報告書区分
総括
研究課題名
死体検案業務の質の確保・向上に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-034
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 謙一(東京大学大学院医学系研究科法医学)
  • 稲葉 一人(科学技術文明研究所)
  • 木内 貴弘(東京大学医学部附属病院医療情報ネットワーク研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療事故の再発予防や医療の質の向上のための社会的基盤の改善を目指して、異状死の取り扱いに関わる体制整備や検案・解剖の質の向上に寄与するための政策提言を行うことを目的とした。
研究方法
1.英国治療成績・死亡匿名調査(NCEPOD)と検視法廷での法医解剖の実態に関する研究(現地調査)、2.医療に関連した死亡の届け出に関する研究(大学に対する意識調査)、3.患者・死者の個人情報の取り扱いに関する研究(文献調査)、4.異状死の検案・解剖の現状と改革案に関する研究(文献調査)、5.医療現場における医療者のコミュニケーション能力の向上に関する研究(介入研究)、6.医療事故・インシデント情報収集におけるIT活用についての調査研究(現地調査)、を実施した。
結果と考察
1.英国においても法医解剖上、死亡状況・医療概要・所見の正確な記載、各々の間の関連・因果関係を明らかにすることの重要性が指摘された。コロナー解剖の約1%が医療行為に起因した医療関連死であるとされたが、高齢者では、医療関連死であるのに、虚血性心疾患などと診断されている事例が多かった。
2.内科医・外科医を問わず、事後の死因に関する説明と、それに対する遺族の納得があれば、届け出ないほうに傾くことが明らかになった。
3.異状死、医療関連死の死因調査情報は、再発を予防し、遺族や関係者の真相究明の願いに応える重大な価値と役割がある。しかし、これらを刑事手段に委ねる日本の死因究明制度には、多くの問題がある。
4.検案には、診療経過中の死亡について「法医学的異状の有無を判断する」ことが重要で、届出をし、解剖によって死因を公正に決定することを導く重要な役割を有する。これを行うには、臨床医の認識、あるいは法の整備が極めて重要である。
5.医療現場における医療者間でのコミュニケーション能力を高めるための研修会を1年間行った結果、医療者間コミュニケーション能力やそのレベルが高まった。
6.医療関連死症例をデータベース化することは、クリニカルリエゾンサービスの質を高めるために重要である。日本においても、同様の制度を導入する際には、データベース化が必要であることが明らかとなった。
結論
異状死・医療関連死への対処システムは、医療の質の向上や国民の信頼構築のための重要なインフラであり、わが国でも海外の制度を参考に早急に整備すべきである。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-