循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発

文献情報

文献番号
200634102A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患に対する根拠に基づく鍼治療の開発
課題番号
H18-医療-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川田 徹(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 宍戸 稔聡(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東洋医学において循環器疾患に対する鍼治療の歴史は長いが、西洋医学のように根拠に基づく医療が実践されるには至っていない。その原因として、循環パラメータを実測しながら治療効果を評価できる動物実験を用いた基礎研究の不足が挙げられる。本研究では、動物実験によって鍼治療の作用機序を科学的・系統的に解明し、治療効果を定量的に評価する。そして、鍼治療の観点から循環器疾患に対する総合医療を推進するための基盤を確立する。
研究方法
本年度は麻酔下のネコを用いて、電気鍼刺激に対する循環応答を静特性及び動特性の面から定量評価した。大腿動脈よりカテーテルを挿入して体血圧を測定するとともに、左側腹部より腎臓交感神経に到達して神経電極を装着し、腎臓交感神経活動を記録した。両足の膝関節下外側部(足三里)に鍼電極を刺入し、アキレス腱後部の皮膚との間で通電して、電気鍼刺激を行った。刺激周波数(0-100 Hz)、刺激パルス幅(0-1000 ms)、刺激電流(0-5 mA)を段階的に変化させて、血圧の定常応答を調べた。次に、工学の分野で広く用いられている白色雑音法を用いて、ランダムに電気鍼の通電を行い、交感神経活動や血圧の動的な応答を調べた。
結果と考察
刺激パルス幅-刺激電流平面における血圧応答は、刺激電流が大きくなるほど大きな降圧効果を示したが、刺激パルス幅が降圧効果に及ぼす影響は小さかった。刺激パルス幅-刺激周波数平面における血圧応答は、刺激周波数が10 Hz付近のときに最大の降圧効果を示し、それよりも高い周波数では降圧効果は減少した。電気鍼刺激から交感神経活動までの伝達関数は緩やかな微分特性を示し、その位相は0.0024-0.2 Hzの範囲で逆相を示し、電気鍼で交感神経活動の抑制が可能であることを示唆した。電気鍼刺激から血圧応答までの伝達関数は、低域通過フィルターの性質を示し、2次遅れ系の数学モデルで近似可能であった。いずれの生体応答も電気鍼刺激に対して0.7以上の高いコヒーレンスを示した。
結論
刺激パルス幅が降圧効果に及ぼす影響は小さく、電気鍼の操作量として刺激電流が適していることが明らかとなった。電気鍼刺激に対して交感神経活動や血圧の動的な応答が高いコヒーレンスを示したことから、適切な制御系の設計によって、これらの生体応答を自在に制御する電気鍼治療システムの開発が可能であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-09-19
更新日
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