地域保健部門における食事調査のデータマネージメントに関する研究

文献情報

文献番号
199700256A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健部門における食事調査のデータマネージメントに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山口 百子(国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 石田裕美(女子栄養大学)
  • 吉池信男(国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新しい地域保健体系の下、市町村等における疫学的診断手法の一つとして活用され得る効率的かつ標準化された食事調査システムを開発することを本研究の目的とする。現行の国民栄養調査について、特に、データマネージメントにおける問題点を明らかにし、その解決策を提示するとともに、保健情報ネットワーク等を活用し、各地区の調査データが有機的に連結し、県あるいは国レベルの疫学診断、さらには健康施策に反映されるようなシステムのあり方を検討するものである。各種の食事調査においては、様々な要因により過誤が発生する。特に、(秤量)記録法や24時間思い出し法等open-ended questionnaireによる調査では、回答された食品に対して適切な食品番号を付し、摂取目安量等から重量に換算する作業(コード化)は、多大な労力を要する。分担研究者の吉池らは、1995年実施の国民栄養調査に関して、保健所や都道府県でのコード化の過程で発生する過誤の頻度やその要因を分析した。そして、過誤を効率よく防止するためには、調査現場において、従来の手作業ではなく、コンピュータプログラムを用いて、食品番号付けや目安量の重量換算等を行う(automated coding)必要があることを示した。それらの結果をもとに、コンピュータプログラムの開発を行った。
研究方法
エンドユーザー(栄養士等)にとって使いやすいインターフェースとすることを最優先の課題とした。すなわち、数カ所の保健所から行政栄養士の参加を依頼し、開発途上のコンピュータプログラムに対して意見、要望などを求め、適宜、ユーザーインターフェースの改良等を行った。また、国民栄養調査方式に準拠した県民栄養調査を実際に行った立場から、現行の食事調査方法に関して、データ処理上の問題点等を整理した。
コンピュータプログラムの内部に持たせるデータベースとしては、国民栄養調査で使用されている食品番号表およびその成分値、目安量・廃棄量換算表を基本とした。また、各食品についての1回1人当たりの摂取上限値(レンジチェック用)、目的とする食品や料理を素早く検索するためのシソーラス辞書、現行の食品番号表でカバーされていない食品の読み替えないしは食品へ分解するための情報、代表的な料理のレシピ等を、内部のデータベースに追加した。
結果と考察
オペレーションシステム(OS)として、Windows95を用いることにより、ユーザーインターフェースとしては良好なプログラムを開発することができた。このプログラムを保健所等の地域保健現場で用いることにより、データ処理(コード付け等)に由来する過誤のかなりの部分が回避される得ることが期待される。また、栄養素等の計算も現場で即時に行うことが可能となるために、被調査者への結果レポートの作成も短期間のうちに可能となる。さらに、調査を実際に行った者が事後のデータ処理および結果の整理を行うことにより、データ収集技法(面接、確認など)が適切であったかどうかに関しても、面接者にフィードバックがかかり、その結果面接者の技術的な向上が期待される。
一方、データの集計・解析および利用という点についても、本プログラムは大いに有用であると考えられる。現在、県民栄養調査等のために県独自で栄養計算プログラムを作成している場合も少なくないようであるが、本プログラムが、都道府県あるいは政令市の担当部局に配備されれば、従来と比べて、経費や作業量の節減につながると共に、集計・解析に至るまでの時間が短縮され、地域データの相互比較性が向上することが期待される。また、国レベルすなわち国民栄養調査において、調査実施から結果発表までに要する時間は、大幅に短縮すると考えられる。
しかし、現行の『食品番号表』ではカバーしきれない食品等(特に、外食、加工食品)を付け加えていくためには、現行の“手作業"による食品番号づけを前提としていては限界があり、コンピュータシステムを導入した上で、食事調査方法そのものを見直していくことも必要となろう。現在、必要なデータベースの整備をさらに進めているところであるが、目安量や料理のレシピ等に関するデータベースは、特に不十分であり、これらを充実させることが今後の課題である。
結論
本研究で開発したコンピュータプログラムを用いて、平成10年度より、保健所あるいは県レベルで、国民栄養調査方式の食事調査のデータ処理を行うことが可能となった。しかし、内部のデータベースは十分でなく、これらを充実させることが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)