診療ガイドラインの適用と評価に関する研究

文献情報

文献番号
200634072A
報告書区分
総括
研究課題名
診療ガイドラインの適用と評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-041
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(日本医科大学 医療管理学講座)
  • 小泉 俊三(佐賀大学医学部 総合診療部)
  • 葛西 龍樹(福島県立医科大学 総合診療・地域医療部)
  • 武澤 純(名古屋大学 救急医学講座)
  • 平尾 智広(香川大学医学部 医療管理学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
EBM手法の確立にともない診療ガイドラインは科学的な根拠を得るにいたり普及が促進された。医療の質に対する関心の増大とともに、診療ガイドラインは、医療の質の確保、患者参加の促進、地域の医療水準の測定、質に基づく支払いの実現など、その範囲を広げつつある。本研究では、診療ガイドラインの現況、近未来の医療における位置づけを明らかにした。
研究方法
①先行研究で開発したAGREE日本語版を用いた既存診療ガイドラインの評価、②患者団体を対象とした必要な医療情報と入手の状況、その中における診療ガイドラインの位置づけ、③患者用図書館での診療ガイドラインの利用状況、④海外における診療ガイドラインの活用状況について調査を実施した。
結果と考察
①AGREE調査票を用いた102診療ガイドラインの評価では、AGREE調査票日本語版を発表した2000年以降、診療ガイドラインの質の向上が認められること、が明らかになった。②3患者団体(関節リウマチ、悪性リンパ腫、炎症性腸疾患)の約4000人を対象にアンケート調査では、原疾患により必要とする情報が異なること、日常生活上の注意、妊娠・出産・育児、就学などでは患者側ニーズが高いにも関わらず医療側からの情報提供が不十分なことが示唆された。患者が医療情報へ容易にアクセスできるような環境整備、および患者側ニーズに対応した診療ガイドラインのあり方については今後の検討課題である。③患者図書館で診療ガイドラインを閲覧した患者は7割程度が「内容を理解でき」、「役に立った」と回答したが、用語や薬品名など分かりやすい表現で作成して欲しいという希望が目立った。④米国においては質の基づく支払い(P4P)が2009年度よりメディケアに導入されることが決定され、現在、最適な支払い方法を明らかにするために10プロジェクトが進行中である。質の評価指標の大部分はプロセス指標であり、診療ガイドラインに基づいていることが明らかにされた。同様の試みは英国のFPにおいても実施されている。
結論
医療の質に対する関心の増大とともに、診療ガイドラインは、その役割を多くの分野に拡大しつつある。診療ガイドラインの役割に応じた利用環境の整備、作成者の支援、患者ニーズの明確化と反映、が今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200634072B
報告書区分
総合
研究課題名
診療ガイドラインの適用と評価に関する研究
課題番号
H17-医療-一般-041
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(日本医科大学)
  • 小泉 俊三(佐賀大学 医学部)
  • 葛西 龍樹(福島県立医科大学 医学部附属病院)
  • 武澤 純(名古屋大学 医学部 )
  • 平尾 智広(香川大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、医療における診療ガイドライン(GL)の位置づけを明らかにする。
研究方法
①AGREE日本語版を用いた診療GLの評価、②患者団体を対象とした必要な医療情報の明確化と入手状況、診療GLの位置づけに関する調査、③診療GL作成者対象の作成状況調査、④喘息を対象にした事例検討、⑤患者の診療GL利用状況調査、⑥海外における診療GLの活用事例、を実施した。
結果と考察
①AGREE調査票による診療GLの評価では、AGREE調査票が日本でも利用可能なこと、先行研究で当該調査票日本語版を開発した2000年以降、診療GLの質に向上傾向が認められることが明らかになった。②3患者団体約4000人を対象の質問票調査では、原疾患により必要な情報が異なること、十分な医療情報を入手できる仕組みが整っていないこと、診療GLは患者の主要な情報入手源となっていないこと、日常生活に関する情報は患者ニーズは高いが医療側からの提供が不十分なことが示唆された。診療GLにこの種の情報を盛り込むための方策、患者が医療情報へ容易にアクセスできる環境整備は今後の課題である。③診療GL作成者対象の質問票調査では、EBM手法は方法論的には確立しているものの、なお作成グループ間で大きな差異が認められること、特に組織体制、作成者の教育、外部から専門家の支援に改善の余地が大きいことが示唆された。④喘息では、診療GLの作成に伴い、死亡率や入院率の低下、医療費の減少、救急搬送の低下等が認められた。関連する広範な情報を得られる疾患は限定されるが、診療GL導入の結果を実証的に示す知見は世界的にもきわめて貴重である。⑤患者図書館で診療GLを閲覧した患者は7割程度が「内容を理解でき」、「役に立った」と回答したが、分かりやすい表現で作成して欲しいという希望が目立った。⑥米国では質に基づく支払い(P4P)を2009年度よりメディケアに導入することを決定し、現在、最適な支払い方法についての10プロジェクトが進行中である。質の評価指標の大部分はプロセス指標であり、診療GLに基づいている。同様の試みは英国の家庭医で実施され、現在は専門医で同様の評価手法の開発が進められている。
結論
医療の質に対する関心の増大とともに、診療GLは、医療のプロセスレベルでの質を確保するためのツール、患者参加を促進するためのツール、地域の医療計画の策定および実施状況をモニターするツールへと、その役割を多くの分野に拡大しつつある。診療GLの役割に応じた利用環境の整備、患者参加の仕組み作り、作成者の支援が今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634072C