大都市における保健・健康理由による移転者の実態と保健サービスの在り方に関する研究

文献情報

文献番号
199700253A
報告書区分
総括
研究課題名
大都市における保健・健康理由による移転者の実態と保健サービスの在り方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
府川 哲夫(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中原俊隆(京都大学)
  • 藤崎清道(国立公衆衛生院)
  • 武村真治(国立公衆衛生院)
  • 曽根智史(国立公衆衛生院)
  • 里村一成(京都大学)
  • 野網祥代(京都大学)
  • 松田朗(国立医療・病院管理研究所)
  • 嵯峨座晴夫(早稲田大学)
  • 吉田成良(エイジング総合研究センター)
  • 薩摩林康彦(エイジング総合研究センター)
  • 東川薫(エイジング総合研究センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全体に鎮静化しつつある国内での居住移動の中で、高齢者の居住移動は急激に活発化しており、その移動行動が高齢移動者の健康・身体機能変化に関連していると推測されている。
本調査研究は、高齢者移動が顕在化している大都市部において、高齢者移動の要因に、その健康、身体機能変化が関わるものと推測される実態を究明するため、居住移動した高齢者の健康状態、通院・介添え状況、家族・生活形態、そして、移動理由等を調査し、移動行動と健康・身体機能変化との関係を究明する。また、移動高齢者と地域の保健医療福祉環境やサービス状況との関係を調査し、大都市部のとくに地域間・地域内で不明な高齢者保健医療福祉サービスの状況とそのあり方について調査研究するものである。   
研究方法
今年度は、高齢人口の流入で医療費、福祉サービス経費の増加をみている札幌市において、市の協力を得て、1997年1月より同年5月の間に居住移動(転入、転出、市内転居)をした65歳以上の高齢者のうちから、 2,826名(転入者: 1,316名、転出者: 750名、市内転居者: 760名)を抽出し、その調査票郵送調査による実態調査を行った。回収率は72.2%であり、その集計結果をもとに研究分析を行った。実態調査は、高齢移動者の基本的属性、高齢移動者の身体状態(ADL、IADL)、疾病の有無、通・入院の状況、介護・被介護の状況、保健医療福祉サービスの利用状況等について、移動前・後の変化を含めた調査項目で行い、これを健康・身体機能の関連からクロス集計を行い、研究分析した。
また、移動高齢者の地域保健医療福祉サービス・ニーズについても調査結果をまとめ、研究を行った。
結果と考察
今年度の調査研究においては、高齢移動者の実態調査により、移動者の活動能力は転出者で最も高く、転入者は転出者より活動能力が低く、市内転居者は転入者よりもさらに活動能力が低い。逆に介助の必要度でみると、やはり市内転居者が最も高く、次いで転入者、転出者の順であり、有病率では転入者、市内転居者、転出者の順で高かった。介護を受けている者の割合では、転入者、転出者では移動後に介護を受けている者の割合が増加している。但し、市内転居者ではほとんど変化はみられない。在宅福祉サービスを利用している者の割合は、移動後に転入者と転出者で若干増加しているが。但し、市内転居者ではほとんど変化はない。   
医療サービスを利用している(必要とする)者の割合は、市内転居者が最も高く、次いで転入者であり、転出者の順であった。
移動理由としては、転入者と市内転居者は保健・医療・福祉環境を移動理由とする者の割合が高い。転出者では市外の施設入居が多い状況等が明らかにみられた。加齢に伴う高齢者の健康・身体機能の変化が居住移動の要因として影響していることが究明された。
転入者より転出者の方が概して健康状態が良く、転出者の中には市内で施設に入所することができず、市外で入所している人が含まれていることを考えると、札幌市は医療サービスは豊富であるが、福祉サービスが不足しているという状況である。
結論
札幌市においては、病院等医療環境や生活の利便性が良いために、高齢者の転入率は高い。しかし、老人福祉施設等福祉関連サービスが需要に応じられない状況にあることが本調査研究から伺われた。
また、札幌市において極めて高い市内転居率については、市内における地域の生活環境、保健医療福祉環境に違いがあり、それが影響していることも伺われる。この関連については、地域環境特に健康・保健面からのサービス環境を移動高齢者と併せて調査し、究明することが必要である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)