保健サ-ビスの評価方法に関する研究 ー評価指標の開発に関する研究ー

文献情報

文献番号
199700252A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サ-ビスの評価方法に関する研究 ー評価指標の開発に関する研究ー
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
星 旦二
研究分担者(所属機関)
  • 徳留修身(結核研究所)
  • 藤原佳典(京都大学医学部・大学院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は、保健所などの実践活動で、科学的な政策提言やシステム改善に生かすことを前提とした評価計画が可能になることである。そのための具体的な研究目的は、1)保健活動の評価指標を世代別ないし疾病別に開発していくことと、具体的には評価指標を健康意識、健康意欲、健康習慣の定着度、健康志向行動、社会的ネットワーク、死亡率、環境的にみた健康度について明確にすることと、2)評価指標を具体的に明確にした評価と評価計画の策定と実践とを連動させ、実践評価計画演習マニュアルを出版する2点であった。
研究方法
研究方法は、社会科学的な方法と、介入疫学と、文献資料を総説する方法とを用いた。研究の実施経過として、4月研究者と分担研究者、研究協力者で、年間計画を策定した。これまでに、企画会議を2回、研究デザイン設定会議を1回、研究経過報告会を7回、合計10回の共同会議を開催した。
結果と考察
主な研究結果の概要は、1)評価指標の開発については、内外の文献を収集し、最終効果に分類される評価指標として、死亡や平均寿命に関する指標と手段的指標として保健サービスを、基盤的指標としてマンパワーと施設整備指標に類型化した。同時に今年度は、最終効果としての具体的な健康指標として、主観的健康感を、手段的評価指標として社会的なネットワークと日常生活習慣について、全体で約1,300件の文献を考察した。これらの研究報告の中で、MEDLINEより入手した健康水準(HEALTH INDEX)の文献を要約し結果の一部は、「日常生活習慣と健康」とのタイトルで、1998年7月に日本公衆衛生学会雑誌に総説として投稿する予定する原稿を未定稿として報告書に示した。一方、東京都23特別区の健康水準を平均寿命で検討し、社会経済要因との関連を調査して、論文としてまとめつつあり、この内容は未定稿であるが報告書に示した。
研究テーマの2)では、評価の概念を整理し、同時に望ましい研究調査デザインとして、アメリカ合衆国の体系的な評価計画(HEALTHY PEOPLE)をまとめた。望ましい評価の調査デザインとしては、対象群(ケ-ス)、対照群(コントロ-ル)を設定して、事前事後の調査を実施するのが最も望ましいものの、バリエイションの一つとして、介入を受けるものの、その介入内容を変える方法であり、グル-プワ-クや相互学習を取り入れた群と、講義形式とりいれる群に分ける例が実行可能性が高いことが示された。
今回の研究では、最も望ましい評価調査デザインを採用し、無作為に対象と対照を分けて、母子保健活動の効果を、育児不安とその育児不安対処行動を評価指標とした調査を実施する評価計画を策定した。これらの研究方法に基づいて1997年3月までに基礎調査を実施し、6月に追跡調査を実施した。我が国では初めての試みである、対照群を設定した介入研究を実施して追跡し、新しい教育方法を採用した群では、参加満足度が高く、同時に育児不安対処行動が優れていた。
このほかに、研究協力者とともに、具体的な評価事業として、公共施設のバリアフリー度、食品衛生活動での活動効果について、調査デザインや調査アンケートを作成し追跡調査をフィールドで実施した。
その結果、新しい食品衛生の手法を取り入れた杉並区の食品衛生水準が他区ないし東京都平均よりも優れていることが明らかになった。
評価指標を用いた地域での追跡調査では、蘇陽町での健康づくり介入効果として、医療費や社会ネットワ-ク、マンパワ-基盤整備を調査し解析し、活動効果として、支援社会ネットワ-クの増大、マンパワ-整備効果を明確にした。これらの内容は、総合都市研究学会誌に「健康な地域づくり(ヘルス・プロモーション)活動効果と方法論」をテーマにして原著論文として投稿し掲載されたので、別冊資料として報告する。また、今年度は、健康な地域づくり(ヘルス・プロモーション)活動の推進要因をまとめた。また、東京都都市部23特別区の平均寿命の実態と関連要因に関する原著論文を完成させつつある。未定稿であるが、都市部の平均寿命に大きな格差があることと、社会経済的な要因との関連が大きいことが明確になった。内容は、論文として未定稿であるが報告書に示した。
結論
次の4点が主な結論である。
1)日常健康習慣について文献考察し、「日常生活習慣と健康」とのタイトルで、1998年7月に日本公衆衛生学会雑誌に総 説として投稿掲載されれば、健康を支える評価指標の一つとして日常生活習慣の意義が体系的にまとめられたので、今後の健康づくりに活用されやすくなること。
2)望ましい調査研究のデザインが明確になり、これらのデザインを活用した、無作為に対象と対照を分けて、母子保健活動の効果を、育児不安とその育児不安対処行動を評価指標とした基礎調査と追跡調査を計画し、対照群を設定した介入研究を実施して追跡して、新しい教育方法を採用した群では、参加満足度が高くて同時に、育児不安対処行動が優れていたこと。
3)評価指標を用いた地域での追跡調査では、蘇陽町での健康づくり介入効果として、医療費や社会ネットワ-ク、マンパワ-基盤整備を調査し解析し、活動効果として、支援社会ネットワ-クの増大、マンパワ-整備効果を明確にしたこと。これらの内容は、総合都市研究に「健康な地域づくり(ヘルス・プロモーション)活動効果と方法論」をテーマにして原著論文として掲載された。ここでは、別冊原著論文資料として報告した。また、今年度は、健康な地域づくり(ヘルス・プロモーション)活動の推進要因をまとめた。
4)研究成果の活用をねらって、研究内容を総括し、医学書院発行の地域看護学講座の一つである「保健福祉行政論」と「統計・情報・疫学」の編集に関わり、研究成果の一部を「評価を重視した保健計画の策定」「情報システムを活用した評価システムの概念整理」のテーマで分担執筆して、出版された。原著論文資料として報告した。
このほかに、研究協力者とともに、具体的な評価事業として、公共施設のバリアフリー度、食品衛生活動での活動効果について、調査デザインや調査アンケートを作成し、追跡調査を各フィールドで続け、グル-プワ-クや相互学習を取り入れた群の方が、講義形式とりいれる群よりも育児不安対処行動が優れていることが明らかになった。
今後、保健所の機能が強化されることが予想される中、このような望ましい評価デザインに基づいて国内外の評価研究論文を文献学的にレビュ-しつづけたい。また、各分野の研究協力者とともに各フィールドで実際に評価を実践し、評価計画から実践経過、そしてまとめにいたる各プロセスを省略しないで、各種システムの改善や健康政策提言に応用できること、最終年度の次年度でまとめ、その後出版する予定である。以上が、当該研究によって得られたないし得られつつある成果とその活用と、学会報告や原著論文それに書籍による研究成果の概要である。
研究成果の利用上の効果としては、健康を支える評価指標として日常生活習慣や社会ネットワーク、主観的健康感の意義が体系的にまとめられたので、今後の健康づくりに活用されやすくなるものと考えている。また、上記1)、2)の内容を総括し、医学書院発行の地域看護学講座の一つである「保健福祉行政学」の編集に関わり、研究成果の一部を「評価を重視した保健計画の策定」「情報システムを活用した評価システムの概念整理」のテーマで「保健福祉行政論」と「統計・情報・疫学」の各本に分担執筆し別冊資料とした。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)