政府の役割と質・安全・公平から見た地域医療システム運営の評価手法と改善誘因の研究

文献情報

文献番号
200634032A
報告書区分
総括
研究課題名
政府の役割と質・安全・公平から見た地域医療システム運営の評価手法と改善誘因の研究
課題番号
H16-医療-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学医療管理学講教室)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部)
  • 平尾 智広(香川大学医学部)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院医療管理学分野)
  • 松田 晋哉(産業医科大学医学部)
  • 木嶋 恭一(東京工業大学社会理工学研究科)
  • 工藤 裕子(中央大学法学部)
  • 吉田 忠彦(近畿大学経営学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は医療費適正化計画の創設を踏まえつつ近将来における政策への有用な知見を得るべく、医療システムを経営という観点から見直し、諸外国の新たな動向、連携の概念再検討を試みた。また、前年度までに蓄積した策定のノウハウをマニュアルとしてまとめることを目指した。また、改めて効率と公平性の関係について現状を評価する必要があると考え医師のアクセスについて評価を試みた。
研究方法
まず、医療システム諸概念研究では、政府の役割研究で分権の一般的な流れを整理、リスクマネジャーとしての役割を検討し、質・安全・公平の評価研究では、産婦人科、小児科医師へのアクセスの公平性、医療システム経営研究で保健指導については米国の疾病管理の調査、連携については概念の再整理を行い、さらに医療サービスの安全性向上のための方策、IT化の影響の検討を行った。さらに保険者機能強化と与えられるインセンティブを検討し生活習慣病対策への有効性について検討した。また、ここまで得られた知見を基にして医療費適正化計画への応用として策定マニュアル作成を試みた。

結果と考察
政府はリスクマネジャー・ステュワードとしての役割が期待されており、リスク管理に日常的な支援、ネットワークの形成が必要とされる。質・安全性については、小児科医、産婦人科医のアクセスに地域差が見られた。医療システム経営研究では、連携について予防から介護までも含む幅広い段階での連携が提案された。ミクロレベルの医療の質への取り組みについては、現在政府による規制など6つの選択肢が存在している。また、IT化により情報共有、コスト削減等経営効率を向上させると考えられた。インセンティブについては、うまく機能するか否かを議論するためには、そのメカニズムのみを検討するだけでは不十分であり、行動主体である保険者の行動目標を吟味してみることが必要不可欠である。策定ニュアルについては実際に担当者での研修に用い有用な意見を頂いた。      
結論
政府はシステムの調整者としての政府が求められている。計画策定者として提供主体の調整を行うことが重要であり各医療関係主体を動かすことが計画の実現のカギとなる。特に、特定健診が導入され保険者の役割が見直される中、生活習慣病対策では保険者へのインセンティブをどう設定するかは慎重に検討される必要がある。具体的な計画、システムの構成要素については、米国の事例に見られるような保険者、疾病管理会社による保健指導、新しい連携概念に基づく地域医療提供体制の構築、ITの利用等の諸知見が有効であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-07-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200634032B
報告書区分
総合
研究課題名
政府の役割と質・安全・公平から見た地域医療システム運営の評価手法と改善誘因の研究
課題番号
H16-医療-017
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学医療管理学講教室)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部)
  • 平尾 智広(香川大学医学部)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学院医療管理学分野)
  • 松田 晋哉(産業医科大学医学部)
  • 木嶋 恭一(東京工業大学院社会理工学研究科)
  • 工藤 裕子(中央大学法学部)
  • 吉田 忠彦(近畿大学経営学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は地域医療体制をシステムとして捉える視点を導入し、投入(資源)ではなくの産出(結果)を重視して経営や統制(management & control)のあり方を模索するものである。構造をモデル化し、システムの活動を評価し、その評価を保険制度や情報など誘因(incentive)に結びつけることで改善を目指した。
研究方法
病床分析では急性期・長期病床ごとに算定を行いこれまでの必要病床数並びに既存病床数と比較した。計画手法研究では戦後の住民参加動向を調査し、新しい手法の開発、実行可能性を検討した。インセンティブ研究では医療計画実現のための誘因に関する問題点を検討した。連携研究ではクラスター概念、疾病別連携等について研究した。システム経営研究では質・安全向上方策、IT化の意義を検討した。他では医療システムの公平性・質・効率の関係、生産性の評価を試みた。
結果と考察
病床分析では全国の必要急性期病床の推計結果は54万床-59万床。長期は「引き算方式」で39万-45万床「掛け算方式」で79万-94万床「横断方式」では28万-44万床となった。参加手法研究では誰もが対等に参加できるシナリオアプローチによる新手法を提案しワークショップ等で試行し有用性を確認した。この成果を援用し適正化計画の演習ではマニュアルを作成することができた。インセンティブ研究では行政の権限が乏しいことが問題であるとされた。連携研究では13の疾病クラスターが析出され疾病別連携の視点の重要性、予防から介護までの連携の必要性が強調された。システム経営研究ではIT化による情報共有、コスト削減効果として挙げられ、質・安全向上では政府の規制等6つの選択肢が現在あることが分かった。公平性の評価では産婦人科、小児科医へのアクセスに地域差が見出された。
結論
システムの各主体間の調整者としての政府が求められているがインセンティブ設定の権限は改善の必要性が指摘された。システムの構成要素については、海外の事例に見られるような保険者、疾病管理会社による保健指導の紹介、新しい連携概念に基づく地域医療提供体制の構築、疾病別の連携の構築等様々な提案を行っている。これらは医療政策の内容として取り組まれるべき課題に対応するための有効なアイデアであろう。研究期間中、適正化計画が創設されたが「器」(計画)の色・形はともかく政策として盛り込まれるべき「中身」は変わらないはずである。本研究で得られた知見が今後の医療政策生かされるのであれば幸甚である。

公開日・更新日

公開日
2009-07-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634032C