脆弱高齢者・終末期患者への診療に関する判断、および診療行為の質の評価と改善に関する研究

文献情報

文献番号
200634030A
報告書区分
総括
研究課題名
脆弱高齢者・終末期患者への診療に関する判断、および診療行為の質の評価と改善に関する研究
課題番号
H16-医療-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
尾藤 誠司(独立行政法人国立病院機構東京医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松村 真司(独立行政法人国立病院機構東京医療センター )
  • 浅井 篤(熊本大学大学院医学薬学生命倫理学分野)
  • 若月 芳雄(京都大学医学部附属病院老年内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16・17年度の研究事業の成果から、我々は、我が国の終末期患者、脆弱高齢患者に対するケアの重要な診療方針決定に関して最も整備されるべきことは、医師の独善的な価値観に基づく意思決定に陥らないような支援システムを構築することであるという結論に達した。その上で、今年度は、現状の終末期患者に対する診療プロセスについて、我々が作成した評価指標を用いて実態調査をおこなうとともに、「臨床倫理支援・教育プロジェクト」と銘打ったアクション事業を展開した。
研究方法
<事業1 病院で死亡した患者に対する診療プロセスと遺族へのアンケート調査を中心とした多施設調査研究(分担 松村・若月)>においては、合計10施設における過去一年間に病院で死亡した患者の診療記録調査、及び遺族へのアンケート調査を行うことで、終末期診療に関する意思決定のプロセス及びアウトカムを測定した。<事業2 臨床倫理支援・教育プロジェクト(分担 浅井)>においては、「適切な手続きのための臨床倫理チェックリスト」という33ページ、ポケット版のブックレットを作成し、医療者にワークショップ等の際に配布するとともに、現場で生じる倫理的な悩みや疑問について質問を提示していただき、それらに対してアドバイスを行う倫理コンサルテーション支援事業をモデル事業として開始した。
結果と考察
事業1の調査においては、診療録調査上、“患者の最善の利益”査定の部分に関する医療者と患者家族との間にコミュニケーションの不十分性を示唆させる結果を認めたが、患者の状態に関する把握や家族とのコミュニケーションは良好に行われていた。事業2については、「チェックリスト」は400部を初版し、ほぼすべてが医療者を中心に配布されたた。また、倫理コンサルテーションも10件の相談を行なった。現時点で、エンドユーザーである医療者からのチェックリストおよびコンサルテーション事業に対する評価は高いものである。
結論
我が国において、現場の医療者が、倫理性の高い臨床判断を医療受給者とともに行なうことを可能にするため、意思決定プロセスの支援の必要性が高いことが明らかになったとともに、その支援が十分に現場で機能することが示唆された。これらの調査結果や成果物、モデル事業が、終末期患者、脆弱高齢患者に対する実際のケアの質向上、および妥当な診療判断に十分に還元されることを期待するものである。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200634030B
報告書区分
総合
研究課題名
脆弱高齢者・終末期患者への診療に関する判断、および診療行為の質の評価と改善に関する研究
課題番号
H16-医療-一般-033
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
尾藤 誠司(独立行政法人国立病院機構東京医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松村 真司(独立行政法人国立病院機構東京医療センター )
  • 浅井 篤(熊本大学大学院医学薬学生命倫理学分野)
  • 若月 芳雄(京都大学医学部附属病院老年内科学)
  • 木澤 義之(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 竹村 洋典(三重大学医学部附属病院総合診療部)
  • 平 憲治(京都大学医学部附属病院総合診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、わが国において社会的にも大きな問題となっている、脆弱高齢者・終末期患者に対する医療行為の判断、特に、“延命治療”として語られることの多い、人工呼吸器や人工栄養の開始もしくは中止に関する判断、心肺停止の際に蘇生術を行うかどうかに関しての判断に焦点を当て、わが国の現状を調査するとともに、質の向上への方略を探索、実践することである。
研究方法
平成16年度においては、文献的な情報整理とともに、患者遺族及び医師を中心とした医療者への意識調査を、質的調査・量的調査両面から行った。その結果を受け、平成17年度には、終末期医療における意思決定プロセス、特に、患者の利益査定・診療方針決定のプロセスおよびアウトカムに関する質を評価し、測定するための臨床評価指標を開発し、その妥当性検証を行うとともに、終末期患者に対する倫理判断やケアの技術を支援するための教育ツールの開発を行った。最終年度においては、さらに倫理的な臨床問題に対処するための意思決定ツールを「適切な手続きのための臨床倫理チェックリスト」として開発するとともに、11施設における死亡患者およびその遺族を対象とした大規模な質問紙調査+診療録レビューによる質評価のための調査を行った。また、“臨床倫理支援プロジェクト”を立ち上げ、診療現場における倫理判断を支援するためのコンサルテーション事業等を行った。
結果と考察
平成16年度事業では、我が国における本テーマに関する既存の情報を系統的に整理し得た。平成17年度では、“患者にとっての最善の利益”を査定し、最善の意思決定を行なうためのプロセスに着眼し、指標の開発、チェックリスト等判断支援ツールの開発、多施設での現状調査、そして、医療者を対象とした倫理判断の支援事業を計画通り完遂することが出来た。
結論
我々の3年間の事業は、探索的な調査から検証的な調査、そして、評価指標や支援ツールの開発とそれらを用いた実践、という一連の流れの中で、今後の終末期医療のあるべき姿に対する政策等に資する情報を提供し得たと考える。今後、医療現場における終末期患者の脆弱高齢者・健康利益に直接寄与するためのケアの質、臨床判断の質向上に向けた支援事業をより大きく展開させ、わが国において適切なプロセスで臨床判断が標準的になされるための推進事業を続けたい。

公開日・更新日

公開日
2007-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634030C