正常加齢と老人性痴呆の初期の鑑別に関する研究

文献情報

文献番号
199700247A
報告書区分
総括
研究課題名
正常加齢と老人性痴呆の初期の鑑別に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
目黒 謙一(東北大学医学部高次機能障害学助手)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
痴呆初期と正常老化の鑑別は、経過予測やケア対策からも重要な課題である。1991年東北大学と宮城県田尻町が共同で在宅高齢者を対象に大規模悉皆調査を施行した。MMSの記憶項目の得点が非連続分布を示し、痴呆初期が含まれていることが示唆されたが、痴呆スクリ-ニング検査でカットオフ値以下を示し痴呆が疑われたのは6.9%であった。今回MRI受診済みの150人を診察し正常老人と初期痴呆の鑑別について検討する。
研究方法
痴呆スクリ-ニング検査としてMMS、DST、CASIの他、ADASの単語再生・再認課題、Rey複雑図形の模写・再生課題、構成能力として透視立方体の模写課題を施行した。高齢者の日常生活の情報を総合的に検討し、CDR 0(正常)、0.5(痴呆疑い)、1(初期痴呆)の3群に分類した。MRIによる評価として脳萎縮を視認法により4段階に評価した。
結果と考察
CDR 0は87人、0.5は46人、 1は10人であり7.0%に痴呆を認めた。原因はアルツハイマ-病と血管性痴呆が約半数ずつであった。CDR 0.5群は短期記憶・注意力・抽象的思考と判断力、1群は長期記憶・知的操作と集中力・見当識・言語課題の低下を認めた。ADASの単語再生・再認課題は、CDR 0、0.5群で両課題に学習効果を認め、三回目は両群は一致しCDR 1群との間に差を認めた。Rey複雑図形は、模写でCDR 0と0.5群の間に認められた有意差は再生でも同様であった。透視立方体模写はCDR 0群においてもパタ-ン崩壊を伴う不完全形を示す例を認めた。MRIの評価の結果、痴呆初期に大脳皮質の萎縮を認めた。CDR 0群は5年間MMS・DSTの低下を示さないものの 0.5群は有意に低下した。
痴呆の有病率は、以前の大規模悉皆調査並びに今回の検討から7%と考えられる。CDR 0.5群で既に記憶を中心とする認知機能障害が認められ、また正常老人と異なり経時変化を認めることからこの群の早期発見が必要である。また透視立方体の模写課題は痴呆の早期発見に有用である可能性が示唆された。MRIは痴呆初期の発見に有用である。
結論
認知機能検査及びMRIにより正常老人、痴呆疑い、初期痴呆の鑑別が可能であること、正常老人は5年間認知機能低下を来さないことが示めされた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)